| 国際的には一定の高周波(高い音)を含む必要があり、これは一般に不快な音でもある |
しかし「接近通報」という性質上、まずは気づいてもらうことが最大の目的である
さて、自動車の魅力にとって「サウンド」は一つの揺るぎないカテゴリであり、(スポーツカーなど)セグメントによってはさらにその重要性がさらに大きくなると認識しています。
そして”サウンド”はそのクルマの性質を見る人に決定づけるもので、サウンドの重要性については、たとえば企業のスローガンが「音といっしょに(TVCMなどで)放送されると」消費者がその企業(あるいはブランド)を記憶する確率が3倍になるという統計からも理解が可能です。※ビールのプルタブを開けるプシュっという音を聞くとビールを飲みたくなるという例も同様かもしれない
自動車業界だとフェラーリの自然吸気V12エンジンのサウンド、アメリカンマッスルのV8サウンド、はたまたハーレーのVツインサウンド(これは商標として米国では認められている)はある種の象徴であり、これらは「サウンドデザイン」のたまものだとも考えることができるかもしれません。
電気自動車の場合だと事情が異なる
なお、ガソリンエンジンを搭載するクルマであれば、「サウンド」のもととなる爆発を伴う内燃機関が存在するものの、電気自動車であればそもそも(ガソリンエンジンのように大きな、そして特徴的な)音を発するコンポーネントが存在せず、よってEVの場合、別途あたらしく「音を生成」する必要があるわけですね。
そして現在、安全上の理由から多くの国や地域では「低速走行時、歩行者に車両の接近を知らせる」べく、なんらかの音を発する”車両接近通報装置”の設置が義務付けられているのですが、今回音響ブランディング会社であるリッスンと市場調査会社クラウドアーミーとが共同にて調査を行い、「人々はどのような近接音を好むか」を集計し公開しています(ドライバーが好む運転時の疑似サウンドではなく、あくまでも他の車両が低速時に発する接近警報について)。
人々は「より自然」なサウンドを好む
この調査は400人以上のアメリカ人(成人)を対象とし、実際に10種類の音響サンプルを聞いてもらって回答を得たとされ、集計された結果を見てみると、多くの人々は高周波について「耳障りで耳の疲労につながる」としてこれを嫌い、かわりに風や水、ホワイトノイズ(シャーというような音)を好むことが明らかになっていて、つまりは日常の環境にはない不自然な、そしてSF的なサウンドを敬遠することが明らかに。※たしかに一部トヨタ車が採用する「キーン」という音は心地が良いとは言えない
さらには「それまでのガソリン車が発していた、自動車らしい音」を好む傾向も見られたといい、人々はより耳慣れたサウンドを好むと考えて良いのかもしれません(ただ、今後ガソリン車が減ってくると、”自動車らしい音”の定義が変わってくるため、あと10年後の調査ではまったく異なる結果となっているのかも)。
ちなみに調査対象のうち、約半数がEVを所有しているというので、EVオーナーですら「現在のEVの多くが発するSF的なサウンド」を心地よく思っていない可能性があり、この結果は自動車メーカーにとって「サウンドデザインを再考するひとつのきっかけ」となりそうですね。
参考までに、この接近警告については、一定の基準が定められているといい、高齢者にも聞こえるように高周波を含むことが要求されているそうで、となると実際に内蔵される接近警告音は今回の調査で明らかになった「好まれるサウンド」とは裏腹に「耳が疲れる」サウンドとなってしまい、ここは自動車メーカー各社のサウンドデザイナーにとって頭が痛いところなのだと思われます。※高周波を含めよとする理由については、指向性の問題もあるのかも
そして今後EVが普及して「街なかを走るクルマの大半がEV」になってしまうと、接近警告音が発生する速度域(~35km/hくらい)でクルマが行き交うような場所では「けっこう耳障りな音」が飛び交うことになるのかもしれません。
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