Image:Porsche
| ポルシェはなんとか明るい面を見せようと務めているが、実際のところは「まだまだ暗闇の中」だと思われる |
これまでの成長を牽引してきた中国市場の失速、そしてポルシェの未来となるはずだったEVの不振による影響は非常に大きい
さて、2024年はポルシェにとって「新製品発表の年」であり、すでに6つのモデルラインのうち4つ(パナメーラ、タイカン、マカン、911)がアップデートを受けています。
そこで今回ポルシェは2024年第2四半期の状況について発表を行っていますが、その概要としては以下の通り。
- 第2四半期は、売上高、営業利益、グループ営業利益率が前四半期を上回る
- 第2四半期のグループ営業利益率は17.0%で、予想の上限であった
- サプライチェーン問題の影響を避けることはできない
- 業績に関する指標を下方修正
- 2024年上半期におけるグループ営業利益は31億ユーロ、グループ営業利益率は15.7%
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ポルシェの2024年上半期は全世界で-7%。「主要モデルのフェイスリフトが響いた」とされるもタイカンの販売は-51%、中国市場全体では-33%となり戦略の見直しが必要か
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新型ポルシェ911カレラGTSの受注が好調
今回ポルシェは多数の情報を公開しており、まずは今後の成功を保証するかのように「911カレラGTS(Tハイブリッド)の受注が好調である」とコメント。
「新しい911カレラGTSは、超軽量パフォーマンスハイブリッドシステムを搭載した最初の公道走行可能な911であり、その技術はモータースポーツで開発およびテストされました。 この爽快なスポーツカーの需要は、私たちの予想を上回っています。ポルシェ史上最大の製品攻勢により、私たちはこの変革の耐久レースで優位に立つことができます。ポルシェの革新力は、世界中のお客様に喜んでいただき、刺激を与えると確信している数多くの技術的ハイライトによって強調されています。」
ポルシェCEO CEOのオリバー・ブルーメ
加えて、今年のスタートこそは軟調であったものの、そこから販売を盛り返して第2四半期の営業利益率が「予想していた範囲の上限」である17%に達したことについも言及しています(2024年上半期のグループ営業利益率は15.7%)。
そして刷新を行ったパナメーラ、タイカン、911モデルは予定通りに発売を行い、完全電動マカンについても(予定通り)9月に発売を開始することに触れ、つまりは「遅滞なく新製品の発売ができており」将来の利益にこれらが貢献することが想定されるものの、一方で「一気にラインアップを更新したことで」研究開発費と販売活動が不定期かつ大幅に増加した、とも。
こういった事情により(フェイスリフトやモデルチェンジによって車両を販売できない期間があったので)”予想通り”売上高と利益が減少し、2024年上半期のグループ売上高は194億6,000万ユーロ(前年:204億3,000万ユーロ)、グループの営業利益率は15.7%(前年:18.9%)、自動車部門の純キャッシュフローは11億2,000万ユーロ(前年:22億2,000万ユーロ)へとそれぞれ減少。
ただしニューモデルの投入など明るい材料も少なくはなく、ポルシェにて取締役会副会長兼財務・IT担当取締役を務めるルッツ・メシュケ氏は今回の結果について次のように述べています。
「困難な時期にあっても、当社は財務的に堅調で、高い収益性を維持しています。これは、価値重視の販売戦略とバランスの取れた販売構造のおかげです。これにより、個々の市場の変動を大幅に吸収することができます。今年上半期の顧客への納車台数は6.8%減少し、15万5,945台となりましたが、ポルシェは、各販売地域においてさらにバランスのとれた販売構造を記録しました。」
ポルシェは販売地域・パワートレーンを「バランスよく」分散
そこで「各販売地域」について触れてみると、既報の通り中国市場での販売は減少したものの、ヨーロッパとドイツの市場は逆に増加し、その他の地域および新興市場は、前年に記録した高いレベルを維持しています。
これによってポルシェは「中国市場の落ち込みをカバー」することが可能となっていますが、現在のような「先行き不透明な状況」においては販売地域をある程度均等に分散しておくことがいかに重要性かがわかろうというものですね。
加えて前出のルッツ・メシュケ氏は以下のように付け加えており、これを見ると「販売地域の分散」に加え、「パワートレーンの分散」を行うことで最大限のリスク回避を行ってゆこうという戦略を採用するであろうことも見て取れます。
このように安定した立場にあることで、私たちは量より価値を重視する戦略を推し進めることができます。電気自動車への変革は世界中で非常に異なる形で進んでいるため、内燃機関技術に関するプロジェクトと製品の再調整と優先順位の変更をすでに開始しています。戦略の一部は、さまざまなタイプのパワートレインの製造において可能な限り最大限の柔軟性を維持することです。ポルシェは、完全電気自動車、効率的なプラグインハイブリッド、そして爽快な内燃機関の3つのパワートレインタイプに引き続き注力しています。お客様は今後も、強力で効率的な内燃機関およびハイブリッドモデル、さらには電気モデルから幅広い選択肢から選択できるようになります。
ポルシェはサプライチェーン問題から逃れることができない
なお、ポルシェは「現在、大幅な供給不足の影響を受けている」とも述べ、以下のようにもコメント。
特殊アルミニウム合金に特に注意が必要です。供給不足は、不可抗力事象の発生を顧客に書面で通知したとおり、欧州の主要アルミニウムサプライヤーの生産施設の浸水によるものです。影響を受けるのは、ポルシェが製造するすべての車両シリーズに使用されているアルミニウム製の軽量ボディ部品です。
すぐに対策を講じたにもかかわらず、差し迫った供給不足により、年間を通じて完全に補償されない生産の障害が発生することが明らかになっています。
これによってポルシェの生産及び販売が影響を受けることは必至であり、よってポルシェは以下のように見通しを「下方修正」することについても言及することに。
- 売上高利益率 14% ~ 15% (前回予測: 15% ~ 17%)
- 売上高 390億~ 400億ユーロ (前回予測: 400億~ 420億ユーロ)
- 自動車部門の純キャッシュフローマージン 7% ~ 8.5% (前回予測: 8.5% ~ 10.5%)
- 自動車部門のBEV シェア 12% ~ 13% (前回予測: 13% ~ 15%)。
なお、この下方修正を見ると、BEVシェアが(新型タイカンとマカンの投入にもかかわらず)引き下げられていて、これは上述のサプライヤー問題とは別の問題、つまり「EVの需要減退」も影響しているものと思われ、そしてそれは主に中国で発生している現象ではないかと考えられます。
よってポルシェは(別の報道だと)中国での「EV推し」姿勢を緩め、中国内で販売を拡大できる「中国専売の内燃機関搭載モデルの投入」を検討しているとも報じられていますが、過去には718ボクスターの「中国専用モデル」を発売した実績があり、これが現実のものとなる可能性が高そうです。
ただ、今回投入される「中国専売モデル」については、”利益率の高い”高級車、そしてガソリンエンジンあるいはハイブリッドパワートーレン搭載モデルになるであろうとも報じられており、タイカンの代わりに「お求めやすいパナメーラ」が設定されるのかもしれません。
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参照:Porsche, Reuters