Image:Astonmartin
| いまのアストンマーティンは「持てる資産」を最大限に活かし、的確に「やるべきこと」をやっている |
そこに「無理な背伸び」「他社の模倣」は存在しない
さて、アストンマーティンは新CEO、エイドリアン・ホールマーク氏のもと、直近でいくつかの戦略を発表し、「既存車種にバリエーションを追加することでラインアップを拡大し利益を最大化」「V12とマニュアル・トランスミッションを最大限に活用」「PHEVに注力」「最初のEV発売は”2030年まで”に後ろ倒し」という方向性を示しています。
しかし数世代前のCEO、アンディ・パーマー氏は「フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンなどのスーパーカーメーカーに対抗する」という方針のもと「ヴァルキリー」「ヴァルハラ」というミドシップカーの開発を開始し、レギュラーモデルにおけるフラッグシップ「ヴァンキッシュ」もミドシップ化するという計画を持っていたわけですね。
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アストンマーティンはその後大きく方針を転換
しかしながらその後コロナ禍に突入するとともに業績が一気に悪化してしまい、トミーヒルフィガー等のアパレルブランドへの投資によって財を成した投資家であるローレンス・ストロール氏がアストンマーティンの経営権を取得し、その指揮のもと(同氏は会長に就任)数名のCEOが交代し、現在のCEOはベントレーからやってきたエイドリアン・ホールマーク氏。
そして同氏はベントレーという高級ブランドから移ったということもあり、アストンマーティンを「フェラーリやランボルギーニ、マクラーレンと競合するスーパーカーブランドではなく」ラグジュアリーブランドとして再生するという方針を定め(そしてこれはローレンス・ストロール氏の意向であるとも思われる)現在に至ります。
Image:Astonmartin
そして今回、ミドシップスーパーカーとしてではなく、アストンマーティンらしいフロントエンジン車として登場した新型ヴァンキッシュのレビューが到着していますが、レビュワーはポルシェファナティック、そしてスーパースポーツに造詣が深いクリス・ハリス氏。
そして同氏はこのヴァンキッシュについて「DBSとは別モノ」「単なるハイパワーGTではない」と述べ、以下のようにもコメントしています。
「車全体の剛性が向上し、ステアリングがよりダイレクトでシャープになった。DBSよりもはるかにアスリート的な走りだ」
「これは本物のフェラーリのライバルだ。アストンマーティンはついにフェラーリと本気で戦うつもりだ」
なお、新型ヴァンキッシュは「完全なる新設計」ではなく、DBSからキャリーオーバーされたボンデッド・アルミニウムシャシーを採用し、しかしDBS 770 Ultimateよりもホイールベースが長く、剛性も向上しています。
Image:Astonmartin
搭載されるエンジンは835馬力(アストンマーティンの量産車では過去最高)を発生する5.2リッターV12、トランスミッションは8速AT、駆動輪は後輪のみとなり、最高速は345km/h。
現在のアストンマーティンの財政を反映し、新規開発ではなく「シャシー含め既存コンポーネントの転用」によって開発されたクルマではありますが、それでも単なる焼き直しではなく「細部に至るまでのファインチューン」によってそのドライバビリティを大きく向上させたのがこの新型ヴァンキッシュだと考えてよく、ここはF1はじめモータースポーツへの参戦によって得られた知見が反映されているのかもしれません。
加えて、そのエクステリアは圧倒的な美しさを誇り、インテリアも最新のテクノロジーを反映したデザインに刷新されつつも比類なき美しさを誇り、全体的に見て「モータースポーツ、歴史、アストンマーティンならではの強み」が最大限に組みわせられ、かつ「アストンマーティンにしかない」「現在の自社の状況を鑑み、できる限りのことを盛り込んだ」クルマなんじゃないかと捉えています。
要は「他社になろうとはせず、あくまでも自社の持つ強さにこだわり」それを高いレベルにて集約させたスポーツカーということになりそうですが、そのレベルがクリス・ハリス氏をもって「フェラーリを引き合いに出すほど」にまでに引き上げられていることにも驚かされますね(フェラーリに”なろう”としたクルマではなく、フェラーリを打ち負かすためのクルマがこのヴァンキッシュである)。
新型アストンマーティン・ヴァンキッシュのレビュー動画はこちら
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