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フェラーリ296GTBがやってきて1ヶ月。ハイブリッドシステムは現代のスポーツカーにおける「救世主」であり、これほど誤解されているシステムも他にない

フェラーリ

| ハイブリッドシステムは「スポーツカーにとって邪魔なもの」とは言われるが |

実際のところ、ハイブリッドは「後からとって付けられたもの」ではなく、ガソリンエンジンのパフォーマンスを最大化するために設計されたものである

さて、フェラーリ296GTBが手元に来てから約1ヶ月(納車は4月であったが、プロテクションフィルムやコーティング施工のため、自分のガレージに車両が収まったのは5月であった)。

なるべく時間を見つけてチョコチョコと乗るようにしていますが、ぼくがこれまでに所有したスーパーカーと呼ばれるクルマの中ではもっとも乗りやすく、もっとも快適だという印象です。

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フェラーリ296GTBの「どこが」乗りやすいのか

まずフェラーリ296GTBの「乗りやすい部分」について触れてみると、まずはその視界の良さ。

スーパーカーといえば「周囲の確認を行いにくい」という印象があるかもしれませんが、すでに何度か述べている通り、296GTBではダッシュボードが低く、かつラップアラウンドウインドウを採用していることからも前方の視界がかなり「広く」なっています。

これはフェラーリの掲げる「両手はステアリングホイールの上に、視線は路上に」という信念を(文字通り)視覚化したものだと考えていますが、これは「スポーツカーにとって、視界は性能のひとつである」とするホンダにも通じるところなのかもしれません。

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さらにはドアミラーが映す範囲も比較的広く、位置的に視線の異動が少なく(大きく左右に首を振らなくてもいい)、かつ斜め前方の視界を遮らないのもポイント高し。

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「ハイブリッド」はスーパーカーにとっても有用である

そして乗りやすさという点で外せないのが「ハイブリッドシステム」。

このフェラーリ296GTBは「プラグインハイブリッド」を採用していますが、エレクトリックモーターのみで十数キロほどの走行が可能です(カタログ値だと30kmくらい)。

しかも「バッテリーを使い切ったら終わり」ではなく、積極的にバッテリーへと電力を送るロジックを採用しているようで、アクセルオフ時の回生ブレーキの効き、そのほかメーター内で確認する限りでは「かなり積極的にチャージを行っている」もよう。

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よって、いったんバッテリー内の電力を使い切ってガソリンエンジンによる走行に移ったとしても、「また貯めた」電力を使用してピュアエレクトリックモードへと移ることができ、このハイブリッドシステムは「環境性能」という点において大きく貢献しているように思います。

そしてもちろん、このハイブリッドシステムはターボラグの解消、ピークパワーの向上などパフォーマンス面においても欠かせない存在となっていて(自分の車両では試していないが、サーキット試乗で実感済み)、けしてV6エンジンに「プラス」したものではなく、296GTBに積まれるパワートレーン自体が「ハイブリッドありき」で設計されたことがわかります。※競技用車両ではハイブリッドシステムが除去されているが、レースと公道では使用する環境・回転数帯が異なるのでそれはまた別の話である

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フェラーリ
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実際のところ、296GTBよりも先に発売されたプラグインハイブリッドカー、SF90ストラダーレでは、搭載されるV8ツインターボエンジン(F154FA)のピークトルク発生回転数が(F8トリブートに積まれるF154に比較して)2,750回転も高い6,000回転に設定されており、これはつまり「低回転時のトルクはエレクトリックモーターに一任し、ガソリンエンジンは高回転を担当する」という考え方によるものだと考えられます。

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そして296GTBではSF90ストラダーレほどではないものの(エレクトリックモーターの数も1/3である)、ピークトルクを発生させるのが6,250回転なので「ガソリンオンリー」の場合に比較してかなり高く、たとえばマセラティMC20(ノンハイブリッド、ガソリンのみ)の3リッターV6ツインターボエンジンだと最大トルクを発生するのは3,000回転から。

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この考え方をさらに進化させたのがランボルギーニ・テメラリオだと考えていますが、これに積まれるパワートレインもまた「ハイブリッドありき」で設計されていると考えてよく、ハイブリッドシステムの活用によって「市販車では異例の1万回転超え」を達成できたのはハイブリッド化による恩恵であるということになりそうです(フェラーリ296GTBに積まれる3リッターV6/F296、ランボルギーニ・テメラリオの4リッターV8は完全新設計であり、設計段階でハイブリットシステムの使用が考慮されていることは間違いない)。

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ちなみにマクラーレン・アルトゥーラの3リッターV6エンジンは2,250回転から最大トルクを発生させ、ここはほかのプラグインハイブリッドスポーツとは異なるところではありますが、アルトゥーラは軽量性を重視しており、エレクトリックモーターの出力も小さい(95馬力なのでたぶん小型)ということから「ガソリンエンジンメイン」という性格を持っていて、しかし後退(バック)をエレクトリックモーターに担当させることでバックギアを省いて軽量化を行うなど、やはりハイブリッドシステムをうまく活用していることがわかりますね。※ランボルギーニ・テメラリオではエレクトリックモーターの出力が150馬力、フェラーリ296GTBでは167馬力

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こういった感じで見てみると、各社各様ではありますが「ハイブリッドシステムを活用し、ガソリンエンジンのパフォーマンスを最適化しようとしている」、あるいは「これまで、ガソリンエンジン単体では引き出せなかったパフォーマンスを、ハイブリッド化の助けを得て実現している」ということがわかり、世間で言われるような「ハイブリッドスポーツはピュアではない」「バッテリーやモーターなど、余計なものを載せやがって」という解釈が完全に誤認であることもわかります。

実際のところ、昨今では様々な規制によってガソリンエンジンのパフォーマンスが抑え込まれており、この時点でガソリンエンジンやガソリン車が「ピュアでは」なくなってしまっていて、しかしそのピュアさを取り戻すための手法のひとつが「電動化」なのかもしれませんね。

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ガソリンエンジンはすでに規制によってその「ピュアさ」を失っている

ちなみにですが、「規制」はガソリンエンジンとくに近年の新型車においては非常に大きな影響を及ぼしていて、いずれのクルマも「少しでも排ガスを少なくすべく」より低い回転数でシフトアップを行うようになっています。

これは296GTBでも例外ではなく、街なかで普通に乗っていると「1,000回転ちょっと」で(自動にて)シフトアップを行っており、つまりこれはピークトルクを発生するよりも「かなり下」。

そしてこの回転数にて加速が必要な場面に遭遇しアクセルを踏み込んだとしても「ガソリンエンジンのトルクとパワーが足りず、タービンによる加給がかかっていない」状況であるため「あれれ」と思うことも。

しかしここで出番となるのがエレクトリックモーターで、このアシストによって「あれれ」の時間が最小限に抑えられているようにも思います(できればこの時間をゼロにしてほしいのだけれど)。

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なお、この「あれれ」を防ぐには、マネッティーノ(ドライブモード)を通常の「SPORT(スポーツ)」ではなくひとつ上の「RACE(レース)」に入れて走る、あるいは加速が必要な状況には即座にシフトダウンするといった習慣を身に着けておくと良いのかもしれません。

参考までにですが、この「ガソリンエンジンの回転数を低く保つ」傾向は(最近試乗した)アストンマーティン・ヴァンキッシュにおいても顕著であり、こちらも通常のGTモードで流しているときの「加速」は(V12ツインターボエンジンを積むにもかかわらず)ちょっと苦手であるという印象。

そしてこちらは「電動アシスト」がないため、「あれれ」の時間がちょっと長いのですが、やはりこちらもドライブモードを上げておく、あるいはシフトダウンを積極活用すると良さそうです。

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もう一つ参考までに、以前に乗っていたランボルギーニ・ガヤルドのEギア(ロボタイズドクラッチ)は3,000回転くらい回していないとシフト操作そのものを受け付けないというロジックを持ち、いま思うと「あれが規制に(それほど)左右されないガソリンエンジンの姿」であったのかもしれず、「回転数とともに高まるパワー感、常にエンジン回転数をトルクバンドに収めることによって得られる瞬時のガツンというトルク感」を感じることができた最後の世代なのかもしれません。

ただし現在は上述の通り、厳しい環境規制によってガソリンエンジンが本来のポテンシャルを発揮できない状況となっていて、しかしその救世主が「ハイブリッド」なのだとも考えているわけですね。※あの頃のキャラクターを再現できるのであればハイブリッドは不要だが、それは叶わぬ夢である

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  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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