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【朗報】フェラーリがアマルフィにて「タッチ式ステアリング」を廃止し物理ボタン復活へ。その理由と今後の展開とは?

【朗報】フェラーリが「タッチ式ステアリング」を廃止し物理ボタン復活へ。その理由と今後の展開とは?

Image:Ferrari

| フェラーリのコメント:「ドライバーの視線は路上に、手をステアリングに」 |

フェラーリの最新モデルでは「物理ボタンへと回帰」

フェラーリは先日発表した新型「アマルフィ」において、物理ボタン付きの新設計ステアリングホイールを採用したことを明らかにしましたが、これは単なる装備の変更にとどまらず、「タッチ式スイッチは使いづらい」とする多数の顧客のフィードバックに応える形で行われた大きな方針転換です。

参考までに、この「ステアリングホイール上の物理ボタン」につき、正確に言うならば(ステアリングホイールの形状は異なりますが)F80にて導入され、アマルフィの前に発表された296スペチアーレ / 296スペチアーレAにおいても取り入れられています。

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なぜタッチ式が導入され、なぜ失敗したのか?

フェラーリのコマーシャル部門責任者、エンリコ・ガリエッラ氏は今回オートカーの取材に対して以下のようにコメントし、製品開発責任者ジャンマリア・フルジェンツィ氏によれば「既存モデルへの物理ボタンステアリングの後付けアップグレードも可能」。※アップグレードなのかダウングレードなのかは謎である

「今後発売されるすべてのフェラーリには物理ボタンが搭載されます」

ちなみにこの「物理ボタンへの変更」はステアリングホイール中央部のみの交換にて完了するため、「本国送り」ではなく「世界各地のフェラーリ正規ディーラーにて」対応できるのだそう。

フェラーリが「タッチ式スイッチ」を取り入れた背景

そこでなぜフェラーリがこのタッチ式スイッチを取り入れたのかについてですが、その理由は「タッチ式ステアリングの導入はSF90に始まり、「スマートフォンのような操作感」を目指したため」で、この際にはステアリングホイールだけではなく、ルーフ内張りに設置された室内照明やダッシュボード上のエアコン操作スイッチまでもが「タッチ式」へと変更され、大きくインターフェースが変わっています。

この「タッチ式スイッチ」はスポーク左右、そしてその下に設けられ、「車両の電源が落ちていると真っ黒に」、しかし起動後には「操作できる部分が白く光る」という仕組みです(走行時や停車時など、状況によって操作できるスイッチが異なり、操作できない機能にはアクセスできない)。※使用していないときに真っ黒になるというデザインはポルシェも採用

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そしてこのステアリングホイールやタッチパネルにつき、当時としては「最先端技術」として好評ではあったものの、ステアリングホイールについては「誤作動」が多く、下のローマの試乗動画でも何度となく誤作動(というか、ついつい指が触れてしまい、不要な機能が起動する)していることがわかります。

これは「タッチセンサーが感知する範囲が広すぎたから」だと思われ、よってフェラーリはほんの1−2年程度でステアリングホイールの「タッチ式スイッチ内蔵部分」を変更し、下の画像のように「タッチセンサーが感知する範囲を狭くし、段差を設けて”物理スイッチへと近づける”ことに。

加えて、スポーク下部にある「エンジンスターター」の発光色がホワイトからレッドへと変更されていることもわかりますね。

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「段差」を拡大して見るとこんな感じ。

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つまり市場投入後すぐにフェラーリは「間違い」に気づき対処を行ったということになりますが、このあたりは「頻繁なアップデートが求められるモータースポーツ」をバックボーンに持つフェラーリならでは。

これについて、エンリコ・ガリエッラ氏は以下のようにコメントしています。

「運転中に使用するには100%適切とは言えなかった。『視線は路上に、手はステアリングに』という目標に逆行してしまった」

つまり、タッチ式は理論上は革新的であっても、実際の運転状況では誤操作や使いにくさが目立ったということになりそうですね。

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参考までに、ライトなどの操作部(タッチ式)はこんな感じ。※これも操作可能な部分のみが光る仕組み

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アマルフィから始まる「物理ボタン回帰」時代

そして今回のアマルフィは「ローマの後継として」内外装ともに刷新され、ステアリングホイールも使い勝手を重視した設計に進化しています。

物理ボタンの復活は、単なる装備だけの話ではなく、以下のようなフェラーリの方向性転換を象徴するもので、同じように悲観されたタッチ式スイッチを物理式に戻すのにフォルクスワーゲンが「7年も」かかってしまったのに対し、フェラーリはわずか1−2年で最初の対応を行い、そして5年目で「完全に刷新した」ということに。※ただしこのステアリングホイール自体が「タッチ式」前提で設計されたため、物理ボタンを組み込むにはデザイン的にちょっと無理があるようだ

  • ブランドとして「ユーザー体験」を再重視する姿勢
  • オーナーへのアフターサポートの強化
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Image:Ferrari

なお、スポーク上の物理ボタン復活とともになされたのが「物理エンジンスターターの復活」。

そしてこの位置もセンターパッド真下ではなく、「左下」という伝統の位置に移動していますが、下の画像は一つ前の世代(ポルトフィーノや488、F8など)のステアリングホイール。

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そしてもうひとつ前の世代(F12など)だとこう。

つまり「左下の赤いエンジンスターターはフェラーリの伝統」でもあり、フェラーリは今回アマルフィでこれを復活させたわけですね。

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参考までに、296スペチアーレ、そしてアマルフィからステアリングコラムの上に台形状のパーツが取り付けられており、これがいったい何なのかはちょっとナゾ。

トヨタ車だとこれに似たパーツは「よそ見を検知するデバイス」として機能しますが、フェラーリがそういった親切機能を導入するとは思えず、今後明かされるであろう詳細情報を待ちたいところですね。

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Image:Ferrari

更にフェラーリはもうひとつの「不評」を改善?

そしてぼくが注目したいのは「シフトスイッチ」の変更。

フェラーリはSF90ストラダーレ、そしてローマにて「航空機のスロットルレバー、かつてのHパターンを持つマニュアル・トランスミッションのシフトゲート」を模したシフトスイッチを採用していますが、正直これは「ちょっと質感に欠ける」というのがぼくの認識。

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ただしそう考えたのはぼくだけではないようで、フェラーリはやはりわずか数年でこれを「マットフィニッシュ」へと変更するなどして高級感を演出しています。

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しかしそれでもユーザーの不満は解消できなかったのか、12チリンドリでは質感の高いデザインへ。

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さらにアマルフィではこれをいっそう高級にしたような構造とデザインへと変更されていますが、レビューを見るとこのシフトスイッチのあるパネルは「アルミ削り出し」なのだそう(だとすれば、相当に優れた質感を持つものと思われる)。

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Image:Ferrari

参考までに、この「一直線な」センターコンソールもまた296スペチアーレ(下の画像)との共通性を連想させ、いったんフェラーリは「GT系とスポーツ系」とで内装のデザインを分けたものの、両者が再び近づきつつあるということなのかもしれません(ただ、GT系ではデュアルコクピットが採用され、スポーツ系はドライバーオリエンテッドという差はある)。

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Image:Ferrari

もう一つ参考までに、ローマでは「ダッシュボードとセンターコンソールとが連結したデザイン」を持っており、これが大きな特徴でもあったものの、スポーツモデル同様に「ダッシュボードとセンターコンソールが分かれる」デザインとなったのは特筆すべきところです(ある意味ではポルトフィーノに近い構造である)。

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フェラーリ アマルフィのレビュー動画はこちら

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参照:Autocar

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  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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