
Image:Rimac
| ハイパーカーメーカーから技術供給企業へ進化するリマック |
もはや「ハイパーカーメーカー」として会社を存続させることは難しいであろう
クロアチアのハイパーカーメーカーリマック(Rimac)は、世界最速級EV「Nevera」で知られる存在ですが、同時にリマック・テクノロジーとして他メーカーへも積極的に先進技術を供給しています。
実際のところBMW、ポルシェ、ヒョンデなどとの協業実績もあり、今回のIAAモビリティ2025(ドイツ・ミュンヘン)では、次世代バッテリーと駆動技術を披露し、さらなる協業への可能性を切り開くという姿勢を見せることに。
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次世代「固体電池」を公開
まず、今回リマックは、プロロジウム(ProLogium)や三菱ケミカルグループと共同開発した固体電池を初公開。
- より軽量
- 安全性の向上
- 高エネルギー密度
といったメリットを持ち、従来のリチウムイオン電池を凌駕する性能を誇ります。さらに新素材の熱可塑性複合材バッテリーハウジングを採用し、柔軟なパッケージングを可能にしている、とのこと。
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新型eアクスル:大手OEMへの供給が確定
さらにリマックは新しく開発したデュアルEM EDU 550 eアクスルの市販化を2026年に予定しているといい、「グローバルな自動車メーカー」の新型車に搭載されることを明かしていますが、その供給先としてはおそらくBMWかポルシェであろうと見られています。※それにしても文字通り桁違いのトルクである
- トルク:11,000Nm※差動装置で増幅後
- 効率:95%以上
- クロアチア・ザグレブ郊外の工場で生産予定
加えて会場では「SINTEG 300 / 550」というシングルモーター式の小型eアクスルも展示していて、こちらは以下のスペックを持っていますが、やはりサイズに比較すると常識外れの数値を誇るようですね。
- 出力:201〜483ps
- コンパクト設計(キャリーオンバッグに収まるサイズ)
- パワー密度:10.7ps/kg
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電子制御も進化:ECUを集約
さらにリマックはパワートレインや電池だけでなくECU(電子制御ユニット)の開発も進めており、新世代のECUは複数の制御機能を集中型アーキテクチャにまとめ、以下の要件を集約することに成功した、と説明しています。
- 軽量化
- コスト削減
- OTAアップデート対応
- トルクベクタリング/バッテリーマネジメント統合
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ライバルとの戦い:記録更新ラッシュ
リマックというと「記録更新に積極的な自動車メーカー」という印象が強く、実際に2025年7月にはネヴェーラ Rにて24もの世界記録を樹立。
- 0-400-0km/hを25.79秒で達成(当時最速)
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しかし翌月にはケーニグセグ・ジェスコ・アブソリュートが25.21秒を記録し王座を奪還したうえ、さらに最近では・・・。
- シャオミ SU7 ウルトラ → ニュルEV最速ラップ(7分04秒957)
- ヤンワン U9 トラックエディション → 最高速度293.54mph(472.41km/h)
といった中国勢も記録を更新しており、熾烈なバトルが続いている状態です。
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まとめ:リマックの次の一手に注目
リマックは「1,000馬力超えのピュアエレクトリックハイパーカー」、コンセプト・ワンの発売で一躍その名を知られるようになっており、そのポジションを確固たるものとしたのが市販車第二弾の「ネヴェーラ」。
しかしその後には様々な市場環境の変化があって「富裕層がピュアエレクトリックハイパーカーへの興味を失ってしまった」のが現状でもあり、「ハイパーカーの製造販売」では会社を維持することが難しくなっています。
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上述の通りこれまでにも様々な自動車メーカーとの協業を行ってきたリマックではありますが、現在の市場環境を踏まえて今後「ハイパーカーメーカーから、技術を他の自動車メーカーへと販売するサプライヤー」へとその業態を変化させてゆく可能性が高く、そしてこのトランスフォームの段階で役に立つのが「数々の世界新記録を樹立した」という実績であり、長い目で見ると、リマックが行ってきた記録争いは「それ単体以上の意味を持ち」、将来的にリマックを救うこととなるのかもしれませんね。
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そして現在にリマックは、固体電池・高効率eアクスル・集約型ECUという次世代EVの基盤技術を揃えつつあり、記録争いでライバルに挑み続けるリマックが、今後どのように技術を商品化していくのか注目されます。
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参照:Rimac