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【不可解】テスラ Model Y スタンダードは「ガラスルーフ」を廃止したことで車両価格を引き下げたはずだったが・・・。しかし実際にはガラスルーフが残され、「内張で隠されている」だけだった?

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| 5,000ドル安い「モデルY スタンダード」のコスト削減策に見る「テスラの不可解 |

相変わらずテスラは「常識にとらわれない」解決策を模索する

クルマの価格(コスト)を下げるために装備を削るのは昔ながらの慣行ですが、テスラの新型モデルY スタンダード(Standard)で見られたコスト削減策は、自動車史上最も不可解な事例の一つかもしれません。

北米におけるEV優遇税制の終了、全世界的に脅威となっている中国製の安価なEVに対抗するために発表されたモデルY スタンダードですが、その価格は41,630ドルと、上位のプレミアム・トリムよりも5,000安く設定されています。

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そして「安い理由」は明確で、シートヒーター(後席)、ベンチレーション機能(前席)、電動調整式ステアリングホイール、8インチの後席ディスプレイなど、多くの機能が削除されているわけですね。

さらにはバッテリー性能のダウングレードやリアモーターの出力低下、ホイールサイズの縮小も行われ、これに加えて「パノラマガラスルーフ」も省略されている、とも公式にアナウンスがなされています。

パノラマ・ガラスルーフは存在するが…「見えない」

ただしこのモデルY スタンダード発表直後に話題になったのが「実際にはパノラマガラスルーフが(モデルY スタンダードに)装着されている」ということ。

ここからが”奇妙な話”であり、たしかにガラスルーフを持つものの、室内側ではヘッドライナー(天井内張り)によってガラスが覆い隠されていて、ガラス(そしてそれを通しての景色)が一切見えない仕様を持つもよう。

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これは非常に混乱を招く措置ですが、複数の自動車メディア(Edmunds、Car and Driverなど)が初期のスタンダードモデルを入手し、ガラスパネル自体がまだ残っていることを確認しており、ガラスは単に布製のヘッドライナーに隠されている、ということが明らかになっています。

なぜ「隠す」方が安いのか?

通常、車内コンポーネントを追加したり仕様を変更することは製造コストを増加させ、よってモデルY スタンダードにおいても、(わざわざ隠すより)上位モデル同様にガラスをそのまま露出させた方がコスト効率が高いように思えます(あるいは鉄板ルーフに置き換えたほうがずっと安いのではないか、と)。

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ただし数名の専門家がこれに対していくつかの見解を出しており、それらを総合すると「テスラは、ルーフ全体をスチール製ルーフに再設計して設計・製造し直すよりも、既存のガラスルーフ構造の上にシンプルなヘッドライナーを被せる方がコスト削減になると判断した」。

たしかにこれは納得性の高い話であり、テスラは実際のところ、クルマを「仕様違いで作り分ける」ことを非常に嫌います。

よって、テスラは基本的に「仕様を集約し」、最初から「オプション全部入り」で製造し、そのオプションを使用できるようにするために「課金させる」方法を採用しているわけですね。

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つまり、オプションを組み込まないクルマと、オプションを組み込んだクルマとを作り分けるよりは、「最初から全部オプションを組み入れた仕様のみを製造するほうが安い」と判断したということになり、これは「モデルY スタンダードで鉄板ルーフを導入しなかった(その作り分けのほうがコストがかかる)」理由としてもじゅうぶんに理解が可能(鉄板ルーフを導入すると、別途仕入れが発生し、保管場所や仕入れに係る管理・人的コストも増加し、生産ラインの変更も必要になる)。

ただ、「わからない」のはなぜガラスルーフを隠してしまったのかということで、というのの「隠すための内張りを用意することでコストが発生するから」。

実際のところ、モデル3の廉価版であるモデル3スタンダードでは「ガラスルーフがそのまま」採用されているため、今回のモデルYスタンダードの持つ仕様がいっそうの波紋を投げかけているというのが今の状況です。

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考えられる理由とテスラの意図

なぜこのようなコスト削減が行われたのか、いくつかの説が浮上しており、有力なものは(陰謀論的なものまで含めると)以下の通り。

  1. 複雑なルーフ設計の回避: スチール製ルーフへの切り替えに伴う、車体構造や安全基準の再設計、クラッシュテストのやり直しといった大規模なエンジニアリング作業を回避した(ただしこれはガラスを内張りで覆った理由の説明にはならない)
  2. 部品製造の簡素化: ガラス用の切り欠き(カットアウト)がない、単一のシンプルなヘッドライナーを大量生産する方が、(それを新規に製造したとしても)ガラスを見せる従来の内装よりも製造コストが安くなった可能性がある
  3. 上位モデルへの誘導: 顧客に「見えないルーフ」という不便さを感じさせ、より高価なプレミアム・トリムを選ばせようというテスラの販売戦略(陰謀っぽい)
  4. ガラス自体のコスト削減: モデルYスタンダードには、上位モデルのガラスに採用されるようなUVカット、熱反射機能を持たない安価なガラスが採用されており、これによって「トータルで見た場合」鉄板ルーフよりも安く製造できた
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いずれにせよ、この動きはテスラにとっても異例であるとともに奇妙に映り、モデルY スタンダードのオーナーの中には、この隠されたガラスルーフを見るために、ヘッドライナーを自ら剥がしたくなる誘惑に駆られる人が出てきそう(ぼくだったら絶対にそうする)。

この不可解な措置が、今後のテスラのモデルにどのような影響を与えるのか、その動向が注目されるところではありますが、今後納車が進むにつれ、ガラスや内張りの仕様についてはそのオーナーたちがレポートしてくれるものと思われます。

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参照:Motor1

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