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| ポルシェ「GT」部門出身の新CEOが放つ”いまだかつてない”ハードコアなベントレー誕生 |
まさかここまでエクストリームなクルマになろうとは
さて、ベントレーが予告通り「最もドライバーにフォーカスしたベントレー」、”スーパースポーツ”を発表。
この新型スーパースポーツはベントレー史上最も極端な軽量化(2トン未満)、純粋な(ハイブリッドではない)V8エンジン、そして後輪駆動を採用し、わずか500台のみが限定にて生産されます。
そしてこれはポルシェのGT部門のトップを務めていたフランク=シュテファン・ヴァリザー氏がベントレーのCEOに就任した後「はじめて手掛ける」ニューモデルでもあり、これまで培った経験が存分に反映された「文字通りのスーパースポーツ」というわけですね。
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集中と選択が生んだ「純粋主義者」のベントレー
ベントレーが発表した新型「スーパースポーツ(Supersports)」は、まさに「走る」という行為に極限まで集中するために”あらゆる要素をそぎ落とし、再構築した”一台。
「最もドライバーに集中したベントレー」と称されるこのモデルは、(VWグループに入った後)ベントレーの歴史上初めて後輪駆動(RWD)を採用し、車両総重量も「2トン未満」へ。
これは従来のコンチネンタルGTから約500kg近く軽量化されたことを意味しますが、それと同時に、ラグジュアリーの象徴であるベントレーが大きく、そして新しい方向性へと舵を切ったことをも意味します。
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1:100年の歴史に名を刻む「集中と選択」のエンジニアリング
新型スーパースポーツは、「極限のドライバーエンゲージメント」という目標を達成するため、非常に大胆な「選択と集中」を行っています。
1-1. パワートレインの純化とRWDへの転換
- エンジン: ノンハイブリッド(非電動化)の純粋な4.0リッターV8ツインターボエンジンを搭載。最高出力は666 PS、最大トルクは800 Nm
- 駆動方式: コンチネンタルGTとして史上初の後輪駆動(RWD)。これまでの全輪駆動システムやハイブリッド機構を廃止することで大幅な軽量化と、よりダイレクトなドライビングフィールを実現
- パフォーマンス: 0-100 km/h加速は3.7秒、最高速度は約310 km/h。しかしベントレーが真に重要視するのは、コーナリングの俊敏性であり、最大1.3 Gという驚異的な横Gを発生させる(オプションのPirelli Trofeo RSタイヤ装着時)
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1-2. 徹底的な軽量化とエアロダイナミクス
車両総重量を2トン未満に抑えるため、ベントレー史上最も過激な軽量化策が講じられ、主な内容は以下の通り。
- カーボンファイバー製ルーフ: 通常アルミニウムのルーフをカーボンファイバー製に置き換え、軽量化と低重心化を実現
- 2シーター化: 後部座席を廃止し、カーボンファイバーとレザーのシェルに置き換えたうえ、防音材も削減
- エアロパーツ: ロードカーのベントレー史上最大のフロントスプリッター、カーボンファイバー製のディフューザー、固定式リアウィングなどを装備。これにより、GTスピードよりも300 kg以上多いダウンフォースを発生させる
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なお、フロントバンパーはじめエアロパーツはもちろん専用デザイン、そしてカナード(エアロフリック)は「ダブル」。
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2:伝説の女性ドライバーに捧げられた「プロジェクト・ミルドレッド」
新型スーパースポーツの開発はベントレー史上異例のスピードをもって進められ、その開発プロジェクトには「ミルドレッド(Mildred)」というコードネームが与えられています。
2-1. 開発初期の驚異的なスピード
2024年9月に「後輪駆動で2トン未満のコンチネンタルGTの挙動」というアイデアが提案され、そこからわずか6週間後には試作車がサーキットに投入されることとなり、これはベントレーならではの小規模で集中的なエンジニアリングチームだからこそ成しえた「スピード」の成功事例。
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2-2. 限界を恐れぬ精神:ミルドレッド・メアリー・ペトレ
このコードネームは、ベントレーの歴史に名を残す女性レーシングドライバー、ミルドレッド・メアリー・ペトレにちなんだもので、彼女は1929年、ベントレー 4½ リッターを駆ってフランスのサーキットを24時間ソロで走行し、平均時速約145 kmという驚異的な耐久記録を樹立しています。
「限界を押し広げ、恐れを知らない精神」を持った彼女にちなんで名付けられたことは、新型スーパースポーツの目指す「妥協のないドライバーエンゲージメント」を象徴するかのようですね。
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3:ドライバーを主役にする「集中空間」と限定性
この新型スーパースポーツは、あらゆるディテールが「ドライバーに焦点を当てる」という単一のミッションステートメントのために設計されています。
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- インテリア: 新しい軽量スポーツシートは、横方向のサポートが強化され、低い位置に配置。レザーとテクニカル素材であるDinamica、そしてカーボンファイバーが多用され、レースカーのような機能的な高級空間を演出
- 走行モード: 「Touring」「Bentley」「Sport」の3つのモードがあり、特にSportモードでは、ESCを完全にオフにすることが可能。ドライバーはリアアクスルを完全に制御し、非常にコントロールしやすいオーバーステアを引き出すことができる
- 限定性: 世界限定500台のみがハンドクラフトで生産され、全てにシリアルナンバーが刻印。注文は2026年3月に開始され、納車は2027年初頭を予定
これらを総合するに、新型スーパースポーツは、単なる速い車ではなく、ドライバーが「運転」という行為に没頭し集中するための究極のツールであり、エンジニアリングの情熱が結実した「走る芸術作品」だと言ってよいかと思います。
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なお、ベントレーは今でこそ「高級車」という印象があるものの、実はル・マン24時間レースの初回から参戦しており、「モータースポーツ」をsonoDNAの一つに組み込む自動車メーカー。
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ロールス・ロイスに買収された後はモータースポーツ濃度を「薄められてしまった」という過去を持ちますが、このスーパースポーツの登場によって「本来の姿」へと立ち返るのかもしれませんね。
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