
| ステランティスはようやく復活への道のりを見出すことに |
自動車業界に激震が走り、というのもマセラティやアルファロメオ、ジープやフィアットなどを傘下に持つステランティス(Stellantis)が、これまで進めてきた急進的なEVシフトを「200億ドル規模の誤算」だったと認めて経営戦略を根本からリセットすると発表したから。
これはEVへの過度な期待が裏目に出た形でもあり、大きな方向転換を意味します。
この記事の要約(衝撃の経営リセット)
- 巨額赤字の衝撃:2025年後半の純損失は約3.5兆〜3.9兆円(224億〜248億ドル)に達する見込み
- 配当見送り:この大損失を受け、2026年の年間配当を中止
- 北米での決断:全PHEV(プラグインハイブリッド)モデルを廃止し、フル電動ピックアップ「ラム 1500 REV」も開発中止へ
- 内燃機関の逆襲:一度は引退させた5.7L Hemi V8や6.2LスーパーチャージドV8をラムTRXなどで復活させる
CEOが認めた「エネルギー転換への過信」
カルロス・タバレス前CEOの解任後、新チームを率いるアントニオ・フィローサCEOは、今回の事態を「エネルギー転換のペースを過大評価したことによる失策コスト」であると明確に認め、以下のように語りつつも今後は「自由な選択(Freedom of Choice)」をテーマに掲げ、EV、ハイブリッド、そして内燃機関(ICE)を顧客が選べる体制へ戻す方針を示しています。
「顧客の需要ではなく、命令(規制)によってペースを決めようとしたことが失敗だった」
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ここ数年、多くの(とくに欧州を中心とした)自動車メーカーは「EVへの積極移行」を進めており、それによって消費者から「内燃機関」という選択肢を奪ってしまったのもまた事実。
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そのためメルセデス・ベンツ、そしてポルシェは相次ぎ「もう顧客に対してパワートレーン(この場合はEV)の押し付けはしません」とアナウンスを行っていますが、ステランティスもそれに倣うということになりそうですね。
なお、欧州の自動車メーカー、特に(ルノー、フィアット、シトロエン、プジョーなど)小型車メーカーは「EVに全振り」してきたために内燃機関車やハイブリッドを持たない例が多く、そのため「EVがあまり売れない」日本では大きくその販売を落とすことに。
ただし今後はいずれのメーカーも相次ぎ「方針を変更する」ことになるものと思われ、ここからの巻き返しに期待したいと思います。
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具体的に何が「中止」され、何が「復活」するのか?
そして今回のアナウンスによれば、主に北米市場を中心としてラインナップが劇的に変化するようで、「これまでの戦略は何だったんだ」という感じ。
なお、廃止されたEVは中古市場にて大きく価値を下げるものと思われ、これがブランド価値を短期的に毀損する可能性があるのかもしれません。
ステランティス 2026年戦略転換のポイント
| カテゴリ | これまでの計画 | 2026年からの新方針 |
| PHEV (4xe等) | 北米での販売主力へ | 全面的に廃止(製造コストと価格の乖離が原因) |
| フル電動ピックアップ | ラム 1500 REVを投入 | 生産中止。レンジエクステンダー型やV8に注力 |
| V8エンジン | 2024年で完全終了 | 復活。5.7L HemiやTRX用V8が再登場 |
| 次世代EV | 欧州・北米でBEV専売へ | 需要に合わせ、ガソリン車も並行販売するマルチエナジー戦略 |
なぜ「PHEV」まで辞めてしまうのか?
注目すべきは、比較的「現実的」と思われていたPHEV(プラグインハイブリッド)までをも切り捨てた点で、理由は極めてシビアな「ビジネスケース」にあるもよう。
- 製造コストの壁:ガソリンエンジンと大容量バッテリーの両方を積むPHEVは製造コストが跳ね上がる
- 顧客の心理:高い価格を払うなら「完全なEV」か「手軽なハイブリッド」を求める層に二分され、中途半端なPHEVは市場で選ばれなくなっている
加えて、現在欧州では「中国製のPHEV」の人気が急上昇しているといい、これらに太刀打ちすることは難しく、であれば思い切って撤退し、中国勢が手薄な「ガソリン」「マイルドハイブリッド」に集中したほうがいいのかもしれませんね。
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今後の展望:復活する「アメリカン・マッスル」
今回のリセットによってファンには嬉しい「おまけ」がついてきたのもまた事実で、直列6気筒「ハリケーン」エンジンへの移行が進んでいたダッジやラムにおいて「V8搭載モデルが復活する」という現実に狂喜乱舞するアメリカンマッスルのファンも少なくはないのかも。
とにもかくにも、2026年、ステランティスは「エコ」の理想から一度離れ、現実的な「稼げる車」で立て直しを図ることになりますが、5月21日の投資家向け説明会(Investor Day)にてその全容が語られる予定である、ともアナウンスされています。

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参照:Stellantis
















