
Image:Ferrari
| 時代や製品、使う人に合わせてデザインを変更するのが「ジョナサン・アイブ流」 |
スマホからボタンを消した男が、フェラーリをボタンで満たしたパラドックス
かつてiPhoneやApple Watchのデザインを主導し、世界中のスマートフォンから物理ボタンを消し去った男、ジョナサン・アイブ。
その彼がいま全く逆の挑戦を行っており、フェラーリ初の電気自動車(EV)として注目を集める「Luce(ルーチェ)」のインテリアデザインにおいて、同氏は近年の自動車業界のトレンドである「巨大なタッチパネル」を「安易で怠慢な設計だ」と一刀両断することに。
彼がフェラーリのために作り上げたのは、宝石のようなスイッチと精密なメカニズムが融合した、かつてないほど「触覚」に訴えるコックピットです。
【この記事の要約】
- アイブの批判: 「車内の巨大タッチパネルは実用的ではなく、機能的ではない」と断言
- Luceのコンセプト: 物理的なスイッチとデジタルディスプレイを融合させた「レトロ・モダン」な内装
- 究極のこだわり: ステアリングホイール一つに19個のCNC削り出し部品を使用。腕時計やカメラのような精密感
- 直感的な操作: 「入力はステアリング、出力はメーター」と役割を明確化。すべてが運転のために

「タッチパネルの帝国」への反旗
テスラが普及させた大型タブレットのようなディスプレイは今や高級車のスタンダードとなっていますが、しかしアイブ氏はこの現状に異を唱えており・・・。
「実用的、機能的に見て、車内での大型タッチスクリーンは通用しません。それは明白です。私はそれを安易で怠慢(lazy)な手法だと感じています。これは、スタイルやファッションに溺れてしまっている空間なのです」
アイブ氏とデザイン会社「LoveFrom」を共同にて設立したマーク・ニューソン氏もまたルーチェの細部を「カメラや高級機械式腕時計」のように扱っており、「数百ものパーツを一つひとつ独立した製品として設計し、それらが組み合わさった時に一つのコックピットとして調和する」という気の遠くなるようなプロセスを経てデザインを行ったことが明かされています。
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フェラーリ・ルーチェ(Luce)の革新的インテリア
フェラーリ初のEVであるルーチェは「エンジン音が消える代わりに」操作する「音」や「感触」でドライバーの魂を揺さぶる設計を持っており・・・。
フェラーリ Luce(ルーチェ)インテリア・スペック
| 項目 | 詳細・特徴 |
| デザイン統括 | ジョナサン・アイブ & マーク・ニューソン(LoveFrom) |
| ステアリング | 19個のCNC加工パーツで構成された3スポーク・メタルデザイン |
| メーター類 | サムスン製円形OLEDパネル + 高透過率ガラス |
| 操作系 | 物理的なマネッティーノ、ワイパー、ターンシグナル・ダイヤル |
| 哲学 | 「入力」はステアリング、「出力」はメーターに集約 |

宝石のようなスイッチ類
Luceのスイッチやトグルは、まるでジュエリーのように仕上げられ、同時にクリック感一つひとつにまでこだわり、デジタルでは決して味わえない「機械的なフィードバック」を提供することに。
これは、エンジンという「鼓動」を失ったEVにおいて、新たな「生命感」を与えるためのアイブ氏なりの回答なのだと考えられます(ジョナサン・アイブ氏本人も、ブガッティ・ヴェイロンなどを所有する一人のカーガイである)。
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コスト削減の「スクリーン」か、芸術の「ボタン」か
現在、多くのメーカーがタッチパネルを採用するのは、UIの更新が容易であることに加え、「物理ボタンを作るよりも圧倒的にコストが安い」という本音があり、これはフェラーリCEO、ベネデット・ビーニャ氏が語った通り。
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しかしデジタル化が極まった現代において、ユーザーが求めているのは「便利さ」の先にある「身体的な満足感」だと考えられ・・・。
- 脱・安価なモダン: 画面に集約する「効率」ではなく、触れるたびに喜びを感じる「質感」が真のラグジュアリー
- 安全性への回帰: 走行中に画面を注視させるUIは安全評価団体も懸念を示すほど。ブラインド操作が可能な物理ボタンは、究極の安全技術でもある
フェラーリはアイブ氏を起用することで、他社のEVが陥っている「走るスマホ」という罠から抜け出し、「走る芸術品」としての地位を確立しようとしているわけですね。

Image:Ferrari
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シンプルさとは「何も無い」ことではない
ジョナサン・アイブ氏はこう付け加えます。
「シンプルで直感的なものを作るのは、本当に難しい」
iPhoneからボタンを消した時、彼は「操作の純粋さ」を求めており、そして今、フェラーリにボタンを戻したのもまた、「運転の純粋さ」を求めた結果です。
一見すると相反するように見えるものの、iPhoneは「それを直視しながら操作する」、しかしクルマの場合は「運転が本文であり、操作に気を取られるべきではない」という大きな違いが存在し、つまりジョナサン・アイブ氏は「その製品の本質や、使用される環境、使用される目的」を捉え、そのブランドや製品に応じたデザインを行っているのだとも考えられ、「一律的に」「自分の好みだけで」デザインを行っているわけではない、ということもわかります。
そしてルーチェのコックピットは”デジタルとアナログが対立する”のではなく、お互いが調和し高め合う新しい時代のスポーツカーの姿を示しているかのようで、巨大なスクリーンに飽き飽きしていたドライバーにとって、アイブ氏が贈る「カチッ」という確かな手応えは、何よりも贅沢な体験になるのかもしれません。
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参照:Ferrari











