
| ホンダとトヨタはあらゆる面において「反対の考え方」を採用することが多い |
トヨタは「他社と手を組む」、しかしホンダは「純血」
さて、日本を代表する自動車メーカー、「トヨタ」と「ホンダ」。
この両者には大きな違いが2つあるとぼくは認識していて・・・
- 後継者:トヨタは一族を会社にい入れて要職に就かせる傾向にあるが、ホンダは一族を会社に入れない
- 協力体制:トヨタは提携や協業を積極的だが、ホンダは他社との共同作業を好まない
ここでこれらについて考察してみましょう。
トヨタとホンダはどう違う?
なぜホンダは一族を会社に入れないのか?
ホンダは創業者一族を入社させないことで知られていますが、その一方でトヨタは「豊田一族」を会社に入れ、要職に就かせることでも知られています。
実際のところ、トヨタ自動車では4人の「一族出身の社長」が存在しているのですが・・・。
- 豊田喜一郎(初代)
- 豊田章一郎(創業者の息子)
- 豊田達郎(創業家出身)
- 豊田章男(現会長・章一郎の息子)

ホンダ創業者である本田宗一郎は自身の息子を会社に入社させず、後継社長も血縁ではなく外部(社員)から選んでいます。
その理由は明白で、本田宗一郎自身が「会社は個人や一族のものではない」「実力ある人が公平に上に立つべき」という考え方を持っていたからだとされ、これを徹底するために「ホンダには本田家の血を入れない」と宣言したという話が伝わるほど。※ものの本によると、本田宗一郎だけではなく、当時の創業メンバー全員がこの方針に倣ったそうだ
なお、「制度として“創業者一族は入社禁止”という明文化されたルールがある」わけではなく、創業者の強い思想として「一族を会社に入れない」という方針があったのみだとされ、しかし世襲・縁故を極力排する文化が存在するのがホンダです。※実際、ホンダは日本企業の中でも珍しく創業家が経営に関与していない「サラリーマン経営」企業である

-
-
ホンダが「新エンブレム」発表、第二の創業期を意識し4輪参入当時のHマークを復活。なお直近までのエンブレムのモチーフは「三味線」
Image:Honda | ホンダの新エンブレムは1960年代に「先祖返り」 | よりシンプルに、より力強く ホンダが四輪事業の新たなシンボルとして、刷新された「Hマーク」のデザインを正式に採用すると ...
続きを見る
なぜトヨタは「身内」を重用する?
そしてこの反対の考え方を持つのがトヨタ。
トヨタが「そうする」のは身内で固めて権力を強化したり、身内のみで利益を独占することが目的ではなく、逆に「会社を守るため」。
一般的に、大企業になればなるほど、
- 部門対立
- 保守化
- 意思決定の遅れ
が起きやすくなりますが、しかし創業家(例:豊田章男)がトップに立つと、「会社の原点を体現する存在として社内の納得感が一気に高まる」という効果を期待しているからだとされ、つまり「常に支配する存在」としてではなく、“象徴的リーダー”として機能するという考え方があるもよう(たしかに豊田章男氏の社長時代の活動を見るに、その効果は非常に大きかったように思う)。

そしてもうひとつ、ぼくの考える「創業者一族がトップに立つ」メリットとしては「長期的視点に立って戦略を実行できること」。
トヨタと言う大企業を「個人」ではなく「一族」が責任を持って運営することで、雇われ社長にありがちな「任期期間中だけなんとかすればいい」的な短期的、かつ場当たり的な経営(ホンダがそうだというわけではない)がなくなり、より安定した、地に足がついた経営ができるようになるとも考えています。※スバルが長年エンジンやトランスミッションを新規開発できなかったのも、雇われ社長が投資を嫌ったからだとされる
-
-
スバルはかつて「新エンジンすら開発できない会社」だった!そんな中、名機EJ20を開発し、名車レガシィを世に送り出したのは一人の”熱血社長”
| 当時、スバルは興銀の支配下にあり、同じく興銀が融資していた日産への配慮から「なにもさせてもらえなかった」 | プレジデント・オンラインにて、「名車レガシィを生んだ銀行マン社長の大胆経営」という記事 ...
続きを見る
そして「一族が責任を持つ」からには痛みを伴う改革も躊躇なく実行でき(雇われ社長だと株価や損失を気にしてついつい問題を先送りにすることも)、実際に豊田章男氏体制では
- リーマンショック後の立て直し
- 品質問題(大量リコール)対応
- EV・モビリティ企業への転換
といった「痛みを伴う改革」を進めています(社内外で相当な反発があったと思うが、これをやりきれたのも”強力なバックボーンを持つ”創業者一族ならではである)。
-
-
トヨタが「退屈」を捨てて14年。なぜ豊田章男は世界を熱狂させるスポーツカーブランドへとトヨタを変貌させることに成功したのか
| 豊田章男氏の「NO MORE BORING CARS」がすべてを変えた | かつて、トヨタはなんら特徴がなく「2000GT以外はコレクションに値するクルマがないブランド」と言われたが かつて200 ...
続きを見る

つまるところ、創業者一族と雇われ社長とでは「覚悟が異なる」とも解釈でき、トヨタの場合は「世襲制」がいい方向に働いた例であると考えていいのかもしれません。
ここでちょっと補足しておくと、豊田一族はトヨタを操りたかったわけではなく、というのも車名を「(名字の読みの”とよだ”ではなく)トヨタ」としたことについて、トヨタ自動車は豊田一族のものではなく、より広い範囲の人々のためにあるという理由からであり、この「会社は創業者一族のためのものではない」という考え方は奇しくも本田宗一郎と同じというわけですね。
-
-
トヨタの知られざる事実5つ。「トヨタのエンブレムに込められた意味」「最も高額で取引されたトヨタ車は3億円以上」「WRCで歴史に残る不正を行った」etc.
| トヨタはその歴史上、多くの功績を残してきたが、その背景には様々な挑戦そして挫折があった | そしてこれほど多くの話題を振りまいてきた自動車メーカーも他にない その「マルチパワートレーン」戦略の正し ...
続きを見る
そして本田宗一郎は会社を守るために「一族は関与しない」、一方の豊田喜一郎は会社を守るために「一族も“経営資源の一つ”として使う」という真逆の考え方を採用したのがいっそう興味深いところです。

-
-
トヨタは「いかなる不況でもクビを切らない」。70年前にたった一度だけ行ったリストラがトヨタを変えた
| 豊田一族は素晴らしい教育を受けて育ってきたようだ | さて、トヨタ自動車について、たびたび話題となるのが「人を切らない」ということ。たとえばカルロス・ゴーン氏が日産自動車を立て直すために行った主な ...
続きを見る
ホンダはなぜ「提携」を嫌う?
そしてトヨタとホンダとの大きな違い、2つ目が「提携や協業に対する姿勢」。
ホンダは「社員に対して開かれた会社」を目指した割に「社外に対しては閉鎖的」で、合併や買収、提携や協業には極端に否定的な会社です。※日産との合併交渉においてもその姿勢が見え隠れしていた
過去にはGMとの提携やアフィーラの立ち上げといった例もあるものの、その歴史を通じてみると、基本的に「必要な技術は自身で開発する」「必要なリソースは自社で確保する」という性質が強く、しばしばこれは「ホンダの純血主義」と呼ばれます。
たしかにクルマが「工業製品」の範疇にとどまっていた際にはそれでうまく機能したものの、現代のように「電子製品としての性質」が強くなるとそうもゆかず、そしてこの純血主義が「開発の遅れ」「商品力の欠如」を生み出す要因となったことは想像に難くありません。

加えて、ホンダは「現地で売るものは現地で考えて作るほうがいい」というローカル戦略を採用していて、そのため同じ「CR-V」「オデッセイ」でも販売する国や地域によって全く別のクルマであったという事実が存在します(これがコスト高体質を招いたことはいうまでもない)。
さらには他の自動車メーカーが「合併や提携を繰り返す」中、ホンダは純血を守り続けた結果、相対的にその規模が「小さく」なり、そのプレゼンスを失っている、という状況も。
トヨタは提携に積極的である
一方のトヨタは提携や協業に対して積極的で、古くはテスラやGMとの協業(キャバリエを発売したりした)、最近だとスバルやスズキとの協業やダイハツの吸収、中国でもBYDなど現地メーカーとの協業を進めており、現地での競争力を高めているというのが現在の状況です(ホンダも現地企業との協業を行っているが、あくまでも合弁先との協業にとどまり、トヨタのように合弁先以外とは手を組んでいない)。
そして「現地向け」製品を投入するのもホンダとは同様ではありますが、あくまでも現地向け製品であっても「グローバル戦略」に基づいて開発され、つまりは現地の自治権ではなく「中央集権的」に企画されるもの(よってコスト管理が厳しくなされる)。
-
-
トヨタが「開発したEV関連技術をスバル、マツダ、スズキなどと共有する」とコメント。さらにEV向けのコストダウン技術をガソリン車にも転用して原価低減を図るもよう
| 本気になったトヨタがどれほどの競争力を発揮するかには期待したい | ただしその効果が現れるのは早くても2026年以降となりそうだ さて、トヨタは新CEOに佐藤恒治氏を迎えて以来、なんどかEV戦略に ...
続きを見る
こういった事実を見てみると、トヨタとホンダは「ある意味で真逆」の方針を持っているように見え、そしてここで考えるのが「もしホンダがトヨタのように一族での経営を行い、外部との提携を積極的に進めていたならば」。
それはうまく行ってトヨタよりも大きな会社へとホンダを成長させていたのかもしれませんし、あるいはホンダから「ホンダらしさ」を取り上げてしまい、面白くない会社にしてしまっていたのかもしれません。

-
-
トヨタが中国市場専用、bZ3Cの情報を公開。トヨタデザイン、中身はBYD、製造はFAW(第一汽車)との合弁工場。中国ではトヨタとして「3番目」のEV
Image-MIIT | トヨタはBYDとの共同開発にて中国市場で「挽回」を図る | 現時点では価格は非公開、しかし「競争力のある価格」に設定されるはずである さて、トヨタが中国市場向けに発売するbZ ...
続きを見る
あわせて読みたい、関連投稿
-
-
名車(迷車?)の多いホンダ!ホンダファンのボクが「これまでの革新的な車」を並べてホンダの起こしたパラダイムシフト、そして問題を探る
| ボクはホンダの考え方が大好きだ | さて、ぼくはホンダファンの一人ではありますが、「ホンダのスポーツカー」というよりは「ホンダの思想」のファン。そしてホンダのどういったところに魅力を感じているのか ...
続きを見る
-
-
豊田章男氏はかつてレース参戦時に「トヨタを名乗る」ことを拒否された。当時の「屈辱」が「Gazoo Racing」の立ち上げと独立へ
| 今では信じられないが、トヨタは当時「そういった」風潮があったようだ | この記事の要約: ブランド独立: TOYOTA Gazoo Racingが「TOYOTA」を外し、独立したパフォーマンスブラ ...
続きを見る
-
-
豊田章男「私は14年かけトヨタとレクサスを退屈なブランドから楽しい車を作るブランドへと変革したが、今それが一瞬にして元の姿に戻るのではという悪夢を恐れている」
| 現在のトヨタの強さが「本物」なのか、「砂上の楼閣」であったのかはこれからはっきりするだろう | 豊田章男氏はトヨタを変革するのに相当な苦労を積み、しかしその成果を自分以外でも維持できるのかどうかに ...
続きを見る











