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やはりトヨタは「水素」か・・・。米国で「水素エンジン」の重要特許を申請、水素を燃やして走る「内燃」エンジンの実用化に一歩前進、市販車への転用に期待がかかる

トヨタとヤマハが共同開発した「水素」エンジン(正面)

Imagr:Toyota / Yamaha

| それでも課題は「水素のチャージ」、これはトヨタの力ではどうしようもないのかも |

トヨタが描く内燃機関の未来とは

「電気自動車(EV)だけが未来ではない」――。トヨタが長年掲げてきたマルチパスウェイ戦略がまた一歩、現実味を帯びることに。

今回、トヨタが(日本ではなく)米国特許商標庁(USPTO)に提出した最新の特許から「開発中の水素燃焼エンジン」の具体的な構造が明らかになり、そこにはガソリンの代わりに水素を直接燃やすことで既存のエンジンが持つ官能的な音や振動を維持しつつもCO2排出をほぼゼロにするという夢のテクノロジーの詳細が記されています。

加えて水素特有の「燃えやすさ」という課題を解決するための手法も提示されており、ここでトヨタが特許で示した驚きの解決策、そして実用化へのカウントダウンに迫ってみましょう。

トヨタ「水素こそディーゼルに代わる未来の燃料」人々の懐疑論に反論、なぜトヨタは水素を信じ続けるのか
トヨタ「水素こそディーゼルに代わる未来の燃料」人々の懐疑論に反論、なぜトヨタは水素を信じ続けるのか

| 現時点で「水素」は成功した燃料とは言えないが | それでもトヨタはじめいくつかの自動車メーカーがそこに可能性を見出している 電気自動車(EV)への投資が進む一方、水素燃料電池車(FCV)への取り組 ...

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この記事のポイント(要約)

  • 最新特許の中身: 水素を直接シリンダーに噴射する「インジェクター」の配置と密封技術
  • 異常燃焼との戦い: 潤滑剤が原因で起こるエンジン破壊(早期着火)を、身近な“ある素材”で解決
  • カーボンゼロの仕組み: 水素を燃やしても出るのは水。ただし、NOx(窒素酸化物)抑制が鍵
  • モータースポーツが実験場: 2028年のル・マン24時間レース参戦を見据えた、極限状態でのテスト
トヨタ GR LH2 レーシングコンセプトのサイド

Image:TOYOTA

BMW
BMWとトヨタが正式に「水素社会実現に向けた」提携を正式発表。車両の開発にとどまらず水素関連技術の研究やインフラの普及など幅広い分野での取り組みを共同にて推進

| BMWは現在進行中のプロジェクトをキャンセル、新型水素自動車の発売を2028年に延期 | 一方、トヨタからの「水素自動車」発売については具体的な言及がなされていない さて、先日「トヨタとBMWが水 ...

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ガソリン車とは何が違う?特許に見る構造の秘密

一見すると、トヨタの水素エンジンは従来のガソリンエンジンとよく似ており、ピストン、4バルブ、点火プラグ、直噴インジェクター。

しかし、決定的な違いはその「インジェクター」にあるもよう。

水素インジェクターの特殊構造

ガソリンエンジンとは異なり、水素インジェクターは燃焼室の中に直接突き出しておらず、シリンダーヘッドに設けられた小さな穴から気体状の水素を噴射する仕組みを持っていて、というのも水素は非常に(空気と)混ざりやすいため、ガソリンのような微細なスプレーチップを必要としないのだそう。

なお、これ以外の部分は既存のガソリンエンジンと多くを共有しており、これは以下のようなメリットを創出します。

  • 水素エンジン搭載のため「車体の設計を大きく変更しなくても」いい
  • 既存のサプライヤー経由でパーツを仕入れることができ、既存サプライヤーも「現在のビジネスの延長線上」として水素エンジンのパーツを作ることができ、サプライヤーを倒産から守ることができる(ガソリンエンジン→エレクトリックモーターだと業態転換が不可能である)
【プリウス顔で登場】トヨタの新型レーシングカー、GR LH2 レーシングコンセプトがル・マンへ。水素×ハイブリッドの未来を切り拓く

Image:TOYOTA

BMW CEO「EV専売は行き止まり」─ ガソリン、ハイブリッド、水素車を含むマルチ戦略を継続へ。「白黒思考ではなく多角的な判断が必要」
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スペック比較:水素 vs ガソリンエンジン

項目ガソリンエンジントヨタの水素エンジン
燃料の状態液体(霧状にして噴射)気体(高圧で噴射)
排出ガスCO2, NOx, 粒子状物質などほぼ水のみ(少量のNOx)
密封性標準レベル極めて高い(水素漏れ厳禁)
潤滑の課題オイルによる潤滑非燃焼性の特殊潤滑剤が必要

水素エンジンの天敵を封じる「意外な潤滑剤」の正体

水素エンジン開発における最大の障壁の一つが、「インジェクターの取り付け時に使用する潤滑剤」。

一般的な潤滑剤は可燃性のため、熱いエンジン内で勝手に火が点いてしまう「早期着火(プリイグニッション)」を招くこととなり、最悪の場合はエンジンを破壊してしまうことに。

そこでトヨタが特許で提案したのが「ポリジメチルシロキサン」というシリコンポリマーで・・・。

豆知識:ポリジメチルシロキサンとは?

実は、コンタクトレンズや食品、さらには医療用製品など、ぼくらの身近なものに広く使われている素材です。

  • 非毒性・非燃焼性: 高温でも燃えにくい
  • 温度特性: 低温では固形、高温では蜂蜜のように流動し、密封性を維持
  • 信頼性: 工業用潤滑剤としても実績があり、水素エンジンの過酷な環境に最適
トヨタとヤマハが「CO2を全く出さない、上方排気の」水素V8エンジンを公開!ガソリンエンジンとほぼ同等のパワーを発生させ、もちろん排気音も
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2028年、ル・マンで水素が咆哮を上げる

トヨタの挑戦は特許図面の中だけにとどまらず、すでに富士24時間耐久レースなどの実戦で水素エンジン車を走らせており、2028年のル・マン24時間レースへの参戦も正式に表明済み。

もちろん、NOxの抑制や水素インフラの整備など、課題はまだ山積みではありますが、トヨタが米国で特許を固め始めた事実は、この技術が単なる研究段階を終え、世界市場を視野に入れた「製品化」へのフェーズに移ったことを意味しています。

「エンジン音を楽しめる、カーボンニュートラルな未来」。

トヨタが切り拓くその道は、世界中のクルマ好きにとって、最も希望に満ちた選択肢になるのかもしれません。

トヨタ GR LH2 レーシングコンセプトのフロントサイド

Image:TOYOTA

トヨタが「持ち運びできる水素カートリッジ」を開発し実用化するもよう。さすがに水素を携帯することは許可がおりないように思えるが
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参考:同じ水素でも「燃料電池車」とは違う?

水素エンジンは燃料電池車(FCEV)とは全く異なる存在で、FCEVは水素を電気に変えてエレクトリックモーターを駆動しますが、水素エンジンは「(ガソリンエンジン同様に)火」を燃やして走ります。

これによって、上述の通り既存のエンジン工場の設備や部品サプライヤーの技術を活かすことができ、自動車産業全体の雇用を守るという側面においても非常に重要な技術だと目されているわけですね。

トヨタ「水素こそディーゼルに代わる未来の燃料」人々の懐疑論に反論、なぜトヨタは水素を信じ続けるのか
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参照:Carbuzz

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