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| EV専売は“行き止まり”──BMW CEOが語る冷静な戦略判断 |
この時代、最も重要なのは「多様性」「柔軟性」である
BMWグループは近年、電動化を進めながらも、競合他社のように「EV専売」に踏み切ることはなく、内燃機関(ICE)・ハイブリッド・EV・水素燃料電池による”マルチパワートレイン戦略”を維持しています。
この姿勢につき、BMWのCEO、オリバー・ツィプセ氏が年次総会の場で改めて強調し、「EV一辺倒は技術的な行き止まりだ」と断言したうえでその理由を以下のように述べることに。
「政治的な目標は真剣に受け止めている。しかし、供給を制限する一方的な技術規制には賛同できない。e-モビリティ(電動車)単体では、持続可能な経済全体への道を切り開けないことが明らかになってきている。」
欧州内でも需要差が鮮明──なぜEVだけでは足りないのか?
今回の会合にて、オリバー・ツィプセ氏は欧州市場内におけるEV普及の地域格差を指摘。
以下のような数値を挙げ、各国のインフラ・経済状況・政策が異なる中で”EVのみに依存するのは現実的ではない”としています。
- ベルギー:EV・ハイブリッドの市場シェアが60%以上
- イタリア:同カテゴリーがわずか4%
「最も重要なのは、いかにCO2を効果的に削減できるかであり、白黒思考ではなく多角的に考えるべきだ。」
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BMWの現在の電動化進捗と未来戦略
なお、BMWは多くの自動車メーカーが「EVはEV専用のデザインを持つべき」としてEVを独立したモデルとして扱ってきた中、「EVをそのシリーズの一部に組み込み、ガソリンやディーゼル(あるいはハイブリッド)と並ぶパワートレーン別選択しのひとつ」として提示した最初の自動車メーカーのひとつ。
これは「i」シリーズの偉大なる失敗から学んだ教訓であるとも考えられ、この新しいBMWの方針は市場に大きく歓迎され、いくつかの自動車メーカーもこの方針へと追随しているというのが現状です。
- 2025年Q1時点で、BMWの販売台数の25%以上が電動車(EV+ハイブリッド)
- そのうち約20%がBEV(完全EV)
- 2028年には、トヨタと共同開発した“初の水素燃料量産車”を市場投入予定
実際のところ、オリバー・ツィプセ氏は「我々の戦略は正しい方向に進んでいる。他メーカーが方針を修正している中、BMWは一貫してマルチパワートレイン戦略を推進している」と自信を見せています。
政策側も“柔軟化”にシフト
さらには以下のように、”政治的”にもBMWの立場に近い方向への動きが見られることもオリバー・ツィプセ氏の発言に説得力を与えており、この方向性がしばらく維持されることに間違いはなさそうですね。※つい数年前までは政府や株主含め「ピュアエレクトリック化一辺倒」であったのが嘘のようだ
- ドイツ新政権はマルチテクノロジー戦略を支持
- EU欧州委員会も、より競争力あるヨーロッパを目指し、単一技術依存からの脱却を模索中
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まとめ:BMWは「全部やる」戦略で勝負
トヨタと同様、BMWは「どれか一つではなく、すべてを追求する」姿勢を貫いていますが、これは。 地域やユーザーのニーズ・事情が多様である限り、EVだけに依存するのはリスクが高いとする見解に基づいたもの。
そしてこの戦略は「多様なニーズをカバーする」ことができるほか、「世の中がどう転んでも対応できる」という柔軟性とリクスヘッジ機能を持っており、EV+ハイブリッド+ICE+水素という多軸展開は、時代に逆行しているように見えつつも、実はもっとも柔軟な選択肢なのかもしれません。
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