| FSD装着は米では12,000ドル、日本では871,000円に設定され、「丸儲け」が期待できるオプションである |
ただしテスラのみではなく、業界全般において自動運転に関する興味は薄れつつあるという報道も
さて、テスラCEOであるイーロン・マスク氏がXにて「北米市場において、自動運転機能の無料1ヶ月トライアル」を行うとコメントし、さらにテスラが「テスラの従業員が車両を購入する場合、自動運転機能の装着を義務付ける」という方針を固めたとの報道。
まず前者から見てみると、これはテスラ自慢のFSD(フルセルフドライビング ケイパビリティ)に興味を持ってもらうことを目的としていて、まずは無料にて体験してもらい、そこで有用性を感じた後に「実際に購入してもらおう」という意図があるものと思われます。
おあぜテスラは自動運転をアピール?
なお、このFSDは米国では12,000ドル、日本だと871,000円のオプションとなっていますが、テスラの車両にはもともとこのFSD=自律運転機能を実行するだけのハードウエアが備わっていて、オプション費用を支払えば(それまでロックされていた)この機能を使用できるようになるという仕組み。
よって無料で自律運転を体感してもらう場合でも、いつものようにOTA(無線アップデート)にてFSDをアンロックするプログラムを送信するのみで解決するわけですが、こういった芸当が可能となるのは「テスラならでは」なのかもしれません。
All US cars that are capable of FSD will be enabled for a one month trial this week
— Elon Musk (@elonmusk) March 26, 2024
そしてもうひとつの「テスラ従業員に対するFSDの義務付け」についてだと、これは文字通りテスラの従業員がテスラ車を購入する場合にはFSDをオプションとして組み入れなければならず(まだこれは実施されていない)、そしてイーロン・マスクCEOが期待するのは「テスラの従業員が(従業員以外の)テスラ購入者に対してFSDのデモンストレーションを行い、FSDの購入を促すこと」。
もちろんこれもFSDの普及を目的としているわけですが、この「義務付け」はイーロン・マスク氏が関係者に送ったEメールが流出したことで発覚したものだといい、そしてそのメールには「FSDが実際にどれだけうまく機能しているのかを実際に理解している人はほとんどいない」と記されており、販売現場においてFSDのメリットを顧客に周知できていないためにFSDの装着率が低く、そしてFSDより従業員が知ることにより、顧客に対して的確な説明がなされるであろう(そして顧客がFSDの選択に傾くであろう)と考えているのだと思われます。
テスラのFSD(自律運転機能)装着率は年々下がっている
テスラがこういった対策に出るのは「年々FSD装着率が下がっているため」で、実際に2019年第3四半期ではFSD装着率が53%であったものの、2022年第3四半期には14%に低下したという統計も。
もちろんこの低下には「以前、テスラを購入していた人々はテクノロジー志向であったのでFSDに興味があったが、最近の購入者は”普通の人”なのでFSDに特段の価値を見出していない」という事情があるのかもしれません。
加えてロボタクシーの不具合、自動運転搭載車の事故などが広く報じられ、かつテスラの公開した自律運転に関する動画が「編集されたもの」であると告発されるに際し、全体的に自律運転に関する興味が薄れてきていることも考えられます(実際に、自動運転=怖いという認識が持たれつつあるという報道も見られる)。
ただ、現在テスラは厳しい競争を生き抜くために度重なる値下げを行って利益を削っており、この利益を補う手段としては「12,000ドルの」FSDは非常に有効なのだと思われます。
実際のところ、ガイドハウス・インサイツのアナリスト、サム・アブエルサミド氏は「車両の大幅な値下げとFSD装着率の大幅な低下が組み合わさり、テスラの利益率は著しく低下した」と語っており、テスラが手っ取り早く利益を回復させるには、すでに販売した車両に対する「FSD装着率装着率」を向上させることが最優先事項なのかもしれません。
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参照:Elon Musk(X), Electrek, Reuters