| 実際の状況はテスラにしか把握できないものと思われるが |
報じられる内容はいずれも暗い未来を予感させるものばかりである
さて、先日は「納入台数が8.5%減少した」と発表したテスラ。
ただし実際には納入台数が減少した以上に深刻な事情を抱えているようで、余剰生産を46,561台抱えていると報じられています。
そして実際にテスラはこの在庫を処分するために値下げを行い、(ベストセラーモデルである)モデルYの価格を大幅に引き下げ、ベーシックな後輪駆動モデル(RWD)の価格を4,600ドル(現在の為替レートにて約70万円)、モデルYロングレンジとモデルYパフォーマンスの価格を5,000ドル(76万円)値下げすることとなるもよう。
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この46,561台は第2四半期の利益を圧迫することに
なお、値下げして販売するということは、そのぶん第2四半期の利益を先に食ってしまうということにもなり、つまりそれだけ「販売台数が同じでも」利益が減ってしまうことは確定的。
参考までに、アメリカ国内の消費者が対象となる7,500ドルの連邦EV税額控除を含めると、モデルY RWDの価格は33,890ドルから、モデルY ロングレンジは37,490ドル、最上位モデルYパフォーマンスの価格は40,690ドルにて購入できるということになり、多数の競合が存在する中においてもかなり魅力的な選択肢ということになりますね。
加えてテスラはFSD(フルセルフドライビング=自律運転)の無料トライアル提供、さらにははじめての有料広告をX、インスタグラム、Facebook上で展開しているので、「かなり苦しい状態である」ことも推測可能。
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テスラは現在、大きく評価を下げている
テスラはこういった需要の低迷について「金利高」を最大の原因として挙げ、納入台数が目標に届かなかったことについては「(放火による)ドイツ工場の閉鎖」「カリフォルニア州フリーモント工場を改良型モデル3の生産に切り替えるための工場内設備の入れ替え」にあると述べているものの、今回の「余剰在庫」に関する報道を見る限り、それらだけでは説明できないのかもしれません。
実際のところ、JPモルガン・チェースのアナリスト、ライアン・ブリンクマン氏によれば「第1四半期にテスラが製造した車両と販売した車両の台数の差は、第1四半期の納入が需要ではなく何らかの形で供給に制約されていたということを示すものである」。
たしかにその可能性は否定できず、同氏はテスラの目標株価を130ドルから115ドルに引き下げ、あわせて第1四半期の売上高と1株当たり利益の予想を下方修正しています。
加えて在庫車の記録的な増加が予想されるため、テスラは3億ドルを超えるフリーキャッシュの”流入”ではなく、13億ドルのフリーキャッシュ”流出”を計上する可能性があり、これからは「資金を失う段階に入る」懸念についても触れており、テスラの悪夢はここからはじまるのかもしれません(納入台数の減少ははじまりにしか過ぎない)。
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参照:Bloomberg