
| EV市場の「絶対王者」が崩れる兆し |
ただしテスラはそれを許容、あるいは予見していたようだ
過去10年にわたり、テスラは米国EV市場を圧倒的に支配し、シェア80%という数字を誇っていたことも。
しかし2025年8月、ついにその牙城が崩れてシェアが38%へと低下したことが明らかになり、40%を切るのは2017年10月以来初めてのことだと報じられています。
この事実は業界全体が成長する中で、かつて「独走」だったテスラの優位性が確実に薄れていることを示しており、「ひとつの時代の終焉」、そして新しい時代の始まりを示唆する事実であると言えそうですね。
新製品の不安要素 ― サイバーキャブに懸ける未来
現在テスラのラインアップは老朽化したモデルSにモデルX、改良を受けたモデル3とモデルY、そしてサイバートラックという構成ですが、テスラにとっての次なる注目モデルは完全自動運転を前提とした2座の「サイバーキャブ(Cybercab)」。
ただし、このモデルは従来の(ステアリングホイールなどの)操作系を持たず、自律走行に全面依存しているため、大衆受けは難しいと予測されています。
-
-
テスラが待望の「ロボタクシー(サイバーキャブ)を発表。デザインはサイバートラック風、サプライズにて近未来的な「ロボバン」も登場
Image:Tesla | ただし現時点ではテスラ・サイバーキャブ、ロボバンの技術的詳細、明確な発売時期や価格は示されていない | サイバーキャブはざっくりと「2026年発売、価格は3万ドル」と語られ ...
続きを見る
さらに米国では州ごとに自動運転に関する規制が異なり、法整備が進んでいない地域では展開が制限される可能性が高い可能性も指摘されていて、おそらくは販売ができる国も「著しく」制限され、現在のテスラの(シェアが低下し続ける)状況を覆すには十分ではないと見られているのもまた事実。

Image:Tesla
ライバルが続々と追い上げ
一方、フォードやGM、ヒョンデをはじめとする既存自動車メーカーは着実に技術を磨き、価格・性能ともに魅力的なEVモデルを市場投入。
結果として、テスラが築いたアドバンテージは急速に侵食されつつあるという現状があるわけですね。
実際のところ、2025年8月における米国EV市場全体は前年同月比で14%成長し、しかしテスラの販売増加率はわずか3.1%にとどまったとされるので、テスラが「EV市場の成長」に乗ることができず、その一方でほかのメーカーが販売を増やしているという現状がわかるかと思います。
-
-
テスラの自動運転システムに「致命的な弱点」?「壁面に描かれた風景」を本物の風景と認識し、停止することなく壁に突っ込んでしまう【動画】
| テスラはその自動運転システムを「カメラ」のみに依存しており、超音波やレーダーを使用していない | ほとんどの自動車メーカーがLiDARを使用し周囲の状況をマッピングするのとは対照的である さて、テ ...
続きを見る
テスラの本当の狙いは「クルマ」ではない?
ただ、興味深いのは一部のアナリストが「テスラがシェア低下をさほど気にしていない可能性がある」と指摘していること。
その理由は、同社がここ数年で自らを「AI・ロボティクス企業」へと再定義しているからで、かつてEVが「富裕層の乗り物から大衆化する」と予測してモデル3やモデルYを投入したように、多くのEVプレイヤーの参入を予見してシェア低下を「織り込み済みの現象」だと捉えているフシがあるもよう。
-
-
テスラボット(オプティマス)を見てきた。身長176センチ、体重65kg。全体のバランスや手足の大きさも「ほぼ人間と一緒」、市販に期待がかかる【動画】
| 実際に市販できるのか、そして期待通りの動作を行えるのかはまったく未知数ではあるが | それでもこれがテスラの示す未来の一つであることには変わりはない さて、テスラボット(オプティマス)を見てきたの ...
続きを見る
たしかにテスラはこれまでも「レッドオーシャンを避け」「既存の技術や手法にとらわれず」新しい市場や技術を開拓してきたという歴史がありますが、コックス・オートモーティブの業界分析ディレクター、ステファニー・バルデス・ストリーティ氏はこう語ります。
「テスラはAI・ロボティクス企業だと自らを位置づけています。今後、自動車メーカーとしてのシェアは確実に低下していくでしょう」
今後の展望
短期的には、米国のEV税制優遇(連邦税控除)の終了を前に需要が高まる可能性がありますが、コックス・オートモーティブはテスラのシェアはさらに縮小すると予測し、 「既存メーカーは今、積極的にEVを投入しており、その成果が確実に現れている」とも。
テスラは自動車ビジネスでのシェア維持を重視するのか、それともAIやロボティクスを中心に据えた新たな道を歩むのか、今後の展開に注目が集まるところではありますが、どこかでまた(EV業界でそうしてきたように)ソフトウエア、あるいはロボティクス業界において「あっと驚く」革新、そして他社が追随するような基準の確立を実現してほしいものですね。
-
-
テスラはEVの製造・販売に見切りをつけ、「AI、自動運転、ロボット」を中心としたテック企業へと進化するのか?ボクがそう考える理由とは
| テスラにとって電気自動車の製造販売はひとつの「手段」でしかない | そしてテスラはより大きな目的を果たすため、新たなる一歩を踏み出すであろう さて、ここ最近大きな変化が見られるのがテスラそしてイー ...
続きを見る
あわせて読みたい、テスラ関連投稿
-
-
なんだかんだいいながらテスラは依然として「米国EV市場の王者」。2025年上半期、モデルYとモデル3が販売トップを独占
| テスラの牙城はそう簡単には崩れない | テスラ、批判続くも米国EV市場でトップを死守 近年、サイバートラックの失望やイーロン・マスクの政治的言動などで批判を浴びているテスラ。 しかし、2025年上 ...
続きを見る
-
-
【テスラ苦戦】欧州での販売が急減、7月はオランダで62%減、スウェーデンでは86%減という惨状に
| イーロン・マスクCEOが「トランプ政権から距離を置いた」後にも状況は改善せず | もう「どうしたらテスラの評判が回復するのか」わからない状態に 数ヶ月前より「欧州におけるテスラの販売不振が深刻なレ ...
続きを見る
-
-
【異例の人事】なぜ?テスラ、””畑違い”のIT部門幹部を営業責任者に任命。販売不振から回復に向けての“賭け”か
| なぜ?販売不振のテスラ、新営業責任者に“技術畑”の幹部を抜擢 | 果たしてこの「賭け」に勝算はあるのか さて、テスラは創業当初から他の自動車メーカーとは異なるアプローチを貫いており、その理由として ...
続きを見る
参照:CARSCOOPS