環境先進国ドイツではEV販売が22％、テスラの販売が55％も急落。EV購入補助金廃止が原因だとされるが、補助金に依存した「エコ」とは何だったのか

｜　誰もが環境に配慮したいとは考えているが、自分の身銭を切ってまでそれに貢献できる人は非常に少ない　｜

このままだと政府の掲げる目標は「絵に描いた餅」になるだろう

さて、現在（中国を除く）世界中のEVマーケットがその勢いを失っているという状態ですが、環境先進国ドイツでもそのトレンドは変わらず、2024年11月のEV販売は前年比で22％減を記録した、とのこと。

なお、全てのパワートレーンを含む新車販売は0.5％減の244,544台となっており、つまり「全体はさほど悪くないが、EVの販売状況がよろしくない」という事実もわかります。

やはりEVの購入には「補助金（助成金）」が必要？

ドイツの連邦運輸局（KBA）が発表したデータによると、2024年11月には35,167台のEVが登録され、これは前年同月比で22％減、そして新車登録の14.4％というシェアです。

なお、この「落ち込み」は2023年末にドイツ政府がEV補助金を廃止した決定に起因していると報じられ、これを決定したヴォルカー・ヴィッシング運輸大臣の意見は「EV市場は公的支援なしでも成り立つべきで、恒久的な補助金は持続可能ではない」というもので、たしかに「公的資金に依存して成長を続ける産業」は不健全であり、よく批判される中国政府の「EV製造奨励金」と大差はないのかもしれません。

しかしながら、今でもEVは高い買い物であり、今回「補助金なしでは販売を伸ばせない」ことが改めて明確になっていて、今後助成金の廃止を予定しているフランスやスペインも同じ道をたどることになるのかもしれません。

やはりハイブリッド車の人気は根強い

ただ、EVが売れないといえどもハイブリッド車の販売は好調で、2023年11月には94,554台のハイブリッド車が新たに登録され、これは前年同月比で20.3％の増加です。

そのうち20,604台がプラグインハイブリッド車であり、こちらは13.7％の増加となっていますが、これらハイブリッド車は現在、全新車登録の38.7％を占めていて、消費者は環境に配慮したクルマを選ぶ傾向にあるものの、「（助成金のないEVに）大金を払ってまでは環境に貢献できない」という実情があるのだと思われます。

参考までに、ガソリン車は5.4％減少し、ディーゼル車は7.5％減少したと報じられているため、依然として「電動化」の流れが継続してはいるものの、まだまだ政府の目論むレベルに達することは難しいのかもしれません。

テスラの販売は55％も減少

そしてEV販売減少のあおりを大きく食らってしまったのがテスラで、なんと11月には55.1％も販売が減っており、通年での販売は43.6％減。

同じくEVブランドであるポールスターの現状も苦しく、こちらは11月の販売が26％減、通年だと52.6％という大幅減を記録しています。

一方、ハイブリッド車を揃えるブランドは好調に推移しており、トヨタは11月に104.5％増、プジョーは78.5％、シトロエンは16.9％の増という数字。

総じて言えることは、ドイツの自動車市場は安定した販売を維持しつつも、純粋なEV（BEV）からハイブリッドへのシフトが明確になっているということで、政府が補助金を撤廃し、EVメーカーが苦戦している中において、ドイツにおける電動モビリティの未来はこれまで以上に不確かになっています。

一方、ハイブリッド車は好調を維持しており、内燃エンジンが依然として市場において一定の需要があることを示しており、この傾向を見る限り、今後、政策の転換だけでは船を立て直せないことは明白で、EUが2035年に予定しているICE（内燃機関）車の販売禁止が果たして実現可能かどうかという疑問が残るのが直近の自動車業界でもありますね。

あわせて読みたい、関連投稿