| 普及価格帯における競争のみならず、プレミアムセグメントでの競争もいっそう厳しくなるであろう |
そして「ブランド力」「排他性」がモノを言うのも間違いない
さて、中国のソーシャルメディアが「2024年の中国における自動車ブランドごとの売上ランキング(15位まで)」「1台あたりの販売額」を公開。
「販売台数」をまとめたランキングは少なくはありませんが、「売上高」「販売単価」を集計したものはちょっと珍しく、ここで紹介してみたいと思います。
予想どおり「売上高」はBYDが首位
そしてこのランキングを見てみると、予想通り(そのうち世界の車のうち5台に1台がBYDになると言われているとおり)BYDが首位となっていますが、以外なことに2位は販売不振が囁かれるメルセデス・ベンツ。
さらにこのランキングは非常に興味深い事実を示しており、BYDの平均販売金額は16,700ドル(約263万円)だとされ、これはフォルクスワーゲンよりも低く、しかしほかの中国ブランドのいくつか(ジーリーやチェリーなど)よりも高く、つまりは低価格にて車両販売を行うライバルからの追い上げが予想されます(追う立場でもあり、追われる立場でもある)。
一方、中国ブランドであってもAito、Li Auto、Nioは比較的高い平均販売額を誇っていて、AitoとNioはなんとBMWよりも高額となっているため、中国の顧客は「BMWよりも高い金額を支払ってでも中国車を購入している」という姿勢が鮮明に(これは外国の自動車ブランドが価値を喪失しつつあることを意味している)。
順位 | ブランド | 平均車両販売価格(USD) | 売上高(USD) |
1 | BYD | 16,700 | 58.1億ドル |
2 | メルセデス・ベンツ | 59,500 | 42.5億ドル |
3 | フォルクスワーゲン | 19,700 | 41.9億ドル |
4 | トヨタ | 23,300 | 36.7億ドル |
5 | BMW | 46,900 | 32.7億ドル |
6 | テスラ | 33,800 | 22.3億ドル |
7 | Aito | 55,500 | 21.4億ドル |
8 | 理想汽車(Li Auto) | 42,000 | 21.1億ドル |
9 | ホンダ | 20,800 | 17.8億ドル |
10 | 吉利汽車(Geely) | 12,700 | 13.2億ドル |
11 | チェリー(Chery) | 14,600 | 10.4億ドル |
12 | ランドローバー | 140,500 | 10億ドル |
13 | ビュイック(Buick) | 25,400 | 9.9億ドル |
14 | 蔚来汽車(Nio) | 47,200 | 9.7億ドル |
15 | 長安汽車(Changan) | 11,200 | 9億ドル |
やはり排他性は重要である
そしてある意味で驚異的なのはランドローバーの「平均販売額140,500ドル(約2186万円)であり、これはランドローバー車が(現地で生産されておらず)輸入車扱いになるために関税等が加算され高額になっていることが原因かと思われますが、それでもランキングとしては12位に入っているので「とんでもなく高価なのに売れている」ということになりそうですね(売上高だとポルシェよりも大きいということになる)。
そしてランドローバーが「この価格でも売れる」のは、現時点ではランドローバーに代わるクルマ及びブランドが存在しないからだと思われ(メルセデス・ベンツ、アウディ、BMW、フォルクスワーゲン、トヨタやホンダの代替は存在する)、そして多くの中国の自動車メーカーがオフローダーを相次ぎ投入するのは、ランドローバーの地位を狙っているからなのかもしれません。
今回のランキングからはいろいろな事実を読み取ることができ、しかし普及価格帯、プレミアムセグメントともに一層の競争が激しくなるであろうことが予想されます。
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