| ついにブレーキもエレクトリック |
ブレーキメーカー、ブレンボの重役であるジョバンニ・カナヴォット氏がメディアに語ったところによると「市販車向けのエレクトリックブレーキを現在開発中で、もうじき実用化されるだろう」とのこと。
なお自動車のブレーキは「油圧」を使用しており、この油圧を発生させるためのポンプの動力は「エンジンから取る」ことが一般的。
中には電動ポンプを使用する場合もありますね。
油圧ブレーキはEV化にとって「時代遅れ」
なお、電気自動車つまりEVはエンジンがないので「エンジンから油圧を調達」することは不可能であり、自動的に電動ポンプを使用することになりますが、この「電動ポンプで油圧を発生」というのもガソリンエンジン時代の技術でもあり、EV時代には「そぐわない」のもまた事実。
そこで次世代ブレーキ技術として考えられるのが「電動ブレーキ」ということになりますが、これはすでにF1でも採用されている技術。
これは「ブレーキバイワイヤ」にて動作するもので、現在のほとんどの車が持つ「ブレーキペダル〜マスターシリンダ〜ブレーキキャリパー」という物理的に接続されたシステムではなく、「電気的に」ブレーキを作動させるもの。
つまりブレーキペダルは「スイッチ」にしかすぎず、ブレーキペダルを踏むとそのスイッチ(センサー)が踏みしろを検知してブレーキャリパーのピストンを(電動にて)押す、という構造になりそう。
これによって可能となるのは、スイッチおよびセンサーの設定が自由にできるようになるということで、ペダルの踏力を軽くしたり重くしたり、踏みしろを大きくしたり小さくしたりというったことが自由自在に。
これはちょうど「スロットルバイワイヤ」と同じで、現代の車のほとんどの「アクセルペダル」がスイッチになってしまったという現象が「ブレーキペダルにおいても起こりうる」ということを意味します。
「ドライブモード変更」でブレーキフィールを変化させることも
もうひとつ、これで可能となるのは「ドライブモードによってブレーキペダルのフィーリングをコントロールできる」ということで、電動パワステ、アクセルバイワイヤと同じく、「操作に対する車の反応」や、ステアリングホイールの重さを調整できるように、ブレーキペダルの反発力をもコントロールできるようになるわけですね。
現在、ドライブモードで変更されるのはスロットル開度と加速性能、シフトプログラムがメインだと思われますが、車によってはこれに「サスペンションの硬さ」「ステアリングホイールの重さ」「ステアリングホイールの操作角度に対するタイヤの切れ角」「エキゾーストサウンド」といったところ。
しかし今後これが「ブレーキペダルの踏み具合によるブレーキの効き方」が加わることになり、たとえば「ノーマル」ではよりソフトに(ピストンの動く速度が遅い)、「スポーツ」ではよりガツンと(ピストンの動く速度が速い)ブレーキが効く、といった感じになるのだろうと推測できます。
これによってエクストリームな性能を持つスポーツカーがさらに乗りやすくなると思われ(ドライブモードの普及は、スポーツカーの限界性能やスポーツ性を向上させたのと同時に、日常性も大きく向上させることに)、まさに電動ブレーキは「革命」とも考えて良さそう。
こういった観点から見るに「ブレーキのエレクトリック化」は理にかなっていて、EV時代のコスト低減(当面エレクトリックブレーキは高価になると思われるものの、ほかのパーツを省略でき、車全体をシンプルにできる)、よりクルマのパフォーマンスを高めるという意味でも非常に有用なのかもしれません。
ブレンボによると「今後主流になるのは間違いない」としながらも、「普及するのは極めてゆっくり」だとしており、今後10年でようやく普及の段階まで進む、と考えているようですね。