| なぜそんなに人気なのか、ボクなりに考えてみた |
Autocarによると、中国ではレクサス初のミニバン、「LM」が爆発的人気とのこと。
さらに記事中では、「新車価格が1856万円〜2340万円なのに対し、中古価格は3500万円」という現状にも触れており、どうやら中国ではトンデモナイことになっているようですね。
同じく記事によれば、レクサスLMは中国における「もっとも高価なレクサス」であり、LS、LC、そしてLXよりも高価だとしています(記事中の邦貨換算金額はややおかしいところがあるが、トップレンジの価格で比較するとLMがもっとも高価なのは間違いない)。
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レクサスLMは中古車すら無くなっていた
そこで実際に中国の中古車サイトをいくつか当たってみたところ、ぼくが見た時点ではレクサスLMの中古車在庫は「ゼロ」。※この様子だと、日本にも並行輸入のレクサスLMはとうぶん入ってこないかも
Autocarでは高値で販売されているレクサスLMのキャプチャ画像も掲載しているので、「その価格で売られていた」ことは間違いなく、しかしその価格でも売れてしまったということになりそうです。
とにかく恐ろしい状態ということになりますが、これにはいくつかの理由があると思われ、まずは「中国人の新しいもの好き」が関係している、ということ。
中国はとにかくメンツの国なので、人よりも優位に立つ必要があり、他人よりもいいモノを持っていないとならず、発売したてで入手困難な製品が大好きなわけですね(日本だとこれらを購入するのは転売ヤーだが、中国人は実需買い)。
そして、彼らにとってプレミアムを支払って手に入れたということは自慢のタネであり、「他の人が手に入れることができないものを、しかも他人が払えないようなプレミアを支払って手に入れた」ということが大いなるプライドとして機能します。
実際のところ、一人っ子製作を継続していた時代、「二人目」を持とうとすると年収以上の罰金を支払う必要があったのですが、それでも「自分は二人目をもつだけのお金を持っている」ということを示すために二人目の子どもを持つ例が多かったと言われるほど。
おそらくは愛人需要
そしてAutocarでは「価格が高くなっているのは4座」と報じており、これを見るにおそらくは「愛人需要」。
レクサスLMの4座モデルは運転席と後部座席との間に仕切りが設けられており、完全に隔絶された空間となっています。
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そして現地でのプロモーションも「愛人との時間」を過ごすことを匂わせるような動画が公開されていたり(現在は削除されている)、現地カーメディアも「これは金持ちが愛人用に買うな」というコメントを多数発していたわけですね。
ちなみに中国の高級品の70%くらいは「愛人のために買ったもの」だと言われ、これはバブル期の日本と同じような現象なのかも。
そしてスーパーカーの多くも愛人に買い与える例が多く、そのための中国では女性スーパーカーオーナー比率が高く(30%くらいと言われる)、そういった背景にてピンクのスーパーカーや高級車が多いという事情も。
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そんなわけで、レクサスLMは中国にて「愛人用」として人気が出ているんじゃないか、とぼくは推測しています。
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もともと中華圏ではアルファード/ヴェルファイアが大人気
そもそもレクサスが中国にてLMを発売した経緯については、「中華圏の富裕層がアルファード/ヴェルファイアを非常に好むこと」が挙げられると思います(ロールスロイスの人気が高い理由と同じで、あのグリルが魅力的に映るのだと思われる)。
こちらは香港での画像ですが、シャネルやルイ・ヴィトン、エルメス、カルティエといったブティックが並ぶブランド街にはアルファード/ヴェルファイアがずらりと入れ替わり立ち替わり、終日路上駐車している様子がもはや日常茶飯事に(ちょっと前まで、この役割はベントレーだった)。
香港のトヨタディーラーに聞いたところでは、正規輸入されるアルファード/ヴェルファイアでは「高級感が足りず(上位グレードが入っていない)」、よって日本でフルオプション化した超高級版アルファード/ヴェルファイアが並行にて入ってきていて大人気化していると話しており、それだけ「高級ミニバン」の需要が強いのでしょうね。
ちなみにこちらは香港の高級ホテル、「ペニンシュラ香港」が顧客の送迎用に導入しているヴェルファイア。
ボディカラーはペニンシュラ専用のグリーンにペイントされ、サイドにはゴールドのストライプが入り、内装もペニンシュラ専用。
ペニンシュラ香港は「ひとつの法人で、もっとも多い台数のロールスロイスを持つ(30台弱)」ことで知られますが、そのペニンシュラ香港がワンオフ仕様のヴェルファイアを導入するというところから見ても、その人気のほどがわかろうというものです。
こういった状況が続けば、もしかするとメルセデス・ベンツ、BMW、アウディも「そうか、高級ミニバンは高級SUVや高級サルーンよりも高く売れるのか・・・これは儲かるな・・・」と気づくことになり、相次いで巨大グリルを持つ高級ミニバンを中国市場へと投入してくるかもしれません。
中国ではすでに経済が活性化している
ちなみに現在は各国ともコロナ禍に苦しむ状況ですが、すでに中国は前年とほぼ同じレベルにまで自動車販売が回復し、おそらく通年では昨年を超える可能性が大。
この現象について、ルイ・ヴィトン筆頭とするLVMHグループ総帥、ベルナール・アルノー氏の見解が正しかったようで、というのも同氏は「中国におけるコロナの影響は一時的であり、通年で見ると昨年を超える。なぜなら彼らはブランド中毒、買い物中毒であり、抑えられていた期間のぶんだけ欲望を爆発させるからだ。彼らはモノを買わずにはいられないのだ」今年2月くらいの段階で述べていたわけですね。
実際にルイ・ヴィトンの中国における売り上げは前年比150%にまで伸びていますが、これは「反動」のほか、現在は日本や香港、シンガポールへと「爆買い」に出かけられず、よってやむなく(関税の影響で高額な価格設定となっている)中国国内で消費している、という事情もありそうです。