| SUVの販売を抑制したいのであれば、販売時の課税を強化すればいいようにも思えるが |
ここまで来ると何が公平で何が不公平なのかはわからなくなる
さて、欧州は何にでも税金を課すことがあり、古くは「窓税(家の窓が多いと税金が高くなる)」「脂肪税」「独身税」、現代でも「渋滞税」「デジタルサービス税」「ポテトチップス税」があるほか、同じ衣類でも子供服と大人用の衣類では税金が違ったりするそうですが、これらは「社会的な不公平感の解消」を是正するといった考えが根本にあるのかもしれません。
そして今回報じられているのが「パリにて、SUVに高額な駐車料金を課す」という規制です(すでに決議されたらしい)。
いったいなぜSUVの駐車料金を割増に?
そこで気になるのが「なぜパリにてSUVの駐車料金が高くなるのか」。
これは大きなクルマの増殖を抑制を目的とする規制だそうで、パリ当局はSUVを無駄で非効率的な乗り物だと考えており、過去4年間にSUVの台数が60%増加して「7台に1台がSUV」という状況に辟易しているからなのだそう。
当局によると「未舗装の道も山道もないパリでは、SUVはまったく役に立たない。さらに悪いことに、SUVは危険で、扱いにくく、製造に多くの資源を使いすぎるのです」。
今回の規制は2024年1月1日に施行される予定だそうですが、現時点ではこの制度の詳細は明らかにされておらず、しかし報道によればクルマのサイズ、重量、パワートレインに基づいて料金が設定されるといい、つまりはSUVであっても「EVであれば」割増料金を回避できるのかもしれません(駐車場側も正確にそのクルマのグレードを判別せねばならず、けっこう混乱を生みそうな規制でもある。グレード詐称も発生しそうだ)。
加えて、「大家族構成で、大型車に乗る必要性を正当化できる人々」も割増料金を免れることができるといい、かなり複雑怪奇な料金システムとなる可能性もありそうですね。
もちろんこれに反対する人々も
そしてこういった一方的なパリの規制に反対する人々も少なくはなく、ドライバー擁護団体「40 millions d'Automobilistes」のピエール・シャセレー氏は「SUVの台数が増えたのは、ミニバンの代わりに大家族がSUVを購入するようになったからだ」とコメント。
これも一理あるものと思われ、公平性を期すのであれば、ミニバンの登録台数の増減についても調査する必要があり、今しばらくは混乱が続くのかもしれません。
ちなみにですが、現在アメリカで問題となっているのがEVに対する不公平性で、EVは環境には優しいかもしれないもののインフラには優しくはなく、重量が重いので道路などに負担をかける可能性が(ガソリン車に比較して)高く、しかしEVオーナーは税制上の優遇を受ける場合がほとんどであり、「EVが破壊するインフラの補修費用を、ガソリン車オーナーがその税金によって負担している」という議論もあるもよう(アメリカでは金銭の負担による公平性、欧州では環境に対する負担の公平性という観点なのかも)。
加えて、古い駐車設備であればEVに対応できず、よって(EVを収めるために)駐車場を建て替える必要性も出てくるケースがあるといい、そうなると大量のCO2が発生する可能性もあって、どこかの時点でコロっと情勢が変わり、「EVが悪者扱いされる」ときがやってくる可能性も否定できない、と考えたりします。
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参照:The Guardian