
| これまでの「値下がり定番」は高級セダンであったが、この数年でEVが首位に躍り出る |
この記事の要約
- 最大の下落率: 経営破綻したフィスカーは数ヶ月で「約69%」もの価値を喪失
- 高級EVの苦境: メルセデスEQSは1年で約6.5万ドル(約900万円以上)も値下がり
- 「旧世代」の代償: 設計の古いインフィニティやラムのモデルも、中古市場では厳しい評価
- EV市場の地殻変動: 技術革新の速さと税制優遇の終了が中古EV価格を押し下げている
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なぜ特定のクルマは納車直後に「ただの鉄くず」同然の評価を受けるのか?
「新車はディーラーの敷地を出た瞬間に価値が20%下がる」――。昔から言われるこの格言は、2025年の現在、さらに残酷な形で現実となっていることが明らかに。
今回、北米の大手中古車ポータル、iSeeCarsが公開した「購入から1年でもっとも値下がりするクルマのランキングが衝撃的だとして話題となっていますが、ここでその内容を見てみましょう。
2025年版「値落ちが激しい車」ランキング
特にインフレと技術革新が激しい昨今、全ての車が平等に価値を失うわけではなく、あるクルマは資産としての価値が残り、あるクルマはたった1年で貯金額を食いつぶす「負債」へと変わります。
iSeeCarsが160万台以上の市場データを分析して導き出した調査で浮き彫りになったのは、「高級車」と「EV(電気自動車)」の二重苦という構図であり、そのランキングを見てゆくとともに、最新技術が詰まったはずのクルマが「なぜこれほどまでに中古市場で嫌われるのか」についても考えてみたいと思います。
1年後の値落ち率ワースト10(データ:iSeeCars調査ベース)
| 順位 | 車種 | 1年後の値落ち率 | 推定損失額(ドル) |
| 1位 | フィスカー・オーシャン | 約 -69.0% | $48,000 |
| 2位 | メルセデス・ベンツ EQS | -47.8% | $65,143 |
| 3位 | ニッサン リーフ | -45.7% | $15,786 |
| 4位 | キア EV6 | -33.3% | $18,081 |
| 5位 | ヒョンデ アイオニック 5 | -32.9% | $16,805 |
| 6位 | メルセデス・ベンツ Sクラス | -31.5% | $45,000以上 |
| 7位 | ダッジ デュランゴ | -30.8% | $19,403 |
| 8位 | BMW 7シリーズ (i7含む) | -29.8% | $36,000以上 |
| 9位 | ラム 1500 クラシック | -29.2% | $13,121 |
| 10位 | インフィニティ QX80 | -28.8% | $24,000 |
車種概要と市場での位置付け:なぜこれほど下がるのか?
1. 破綻と技術の陳腐化:フィスカーとリーフ
最も悲劇的なのはフィスカー・オーシャン。
ただしこれは「メーカーの破綻」という特殊要因が絡んでおり、特別な例だと言えそうですが、「実情」として購入後わずか数ヶ月で価値が7割近くが消滅し、これは「動く資産」が「文鎮化するリスクのあるガジェット」へと変わった瞬間です(とくにフィスカーはトラブルが多く、購入後の心配が値下がりとなって現れたのだと思われる)。
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Multiple Fisker Oceans getting off the line at the Manufacturing Plant ahead of the November 17 SOP!! Super cool to see ! #Fisker #Love #EVs #ESGO2022 #ElectricVehicles #ESG pic.twitter.com/i9fUErdaKT
— Henrik Fisker (@HenrikFiskerr) October 25, 2022
また、ニッサン リーフのような先駆的EVであっても、(EV市場全般の)急速な航続距離の向上や充電規格変更のアオリを受けており、消費者からすると「高いお金を出して購入しても、すぐに陳腐化してしまう」と捉えられているのかもしれません。
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2. 高級セダンの宿命:メルセデス・ベンツ & BMW
EQSやSクラス、BMW 7シリーズといったフラッグシップモデルは、新車価格が高すぎるがゆえ、中古市場での需要が限られます。
特に「最新のステータス」を求める層は常に新車へ流れるため、1年落ちの個体は数百万円単位の値下げをしなければ売れないのが実情で、さらにEQSの場合はここに「EV」というさらなるネガティブファクターがプラスされており、文字通りの「二重苦」を背負う形で「推定損失額」はトップ、「値下がり率」においては2位に位置しています。
3. 「古き良き」の限界:インフィニティ & ラム
9/10位にランクされるインフィニティ QX80やラム 1500 クラシック(どちらも日本では販売されていない)は設計が古いプラットフォームを使い続けていることが「中古市場での評価」に結びついているものと思われ、新車時には「熟成された信頼性」として売れるものの、中古市場では「燃費が悪く、古臭い技術を採用しているクルマ」と見なされ、その輝きを失ってしまうのかもしれません。※ラム1500は「実用車」としての下支えがあるように思われるが、意外と値下がりするようだ。中古市場でもフォードF-150に押されているのかもしれない
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結論:賢い車選びのための「防衛策」
このリストを見て、「EVや高級車は買ってはいけない」と断じるのは早計で、重要なのは「どう買うか」。
- 中古車として狙う: このリストに載っているクルマは”中古で購入する側にとって”「最高のコスパ車両」に化ける可能性も。1年落ちで数百万円安くなったEQSやアイオニック5を狙うのは、非常に賢い選択である
- リースを活用する: 値落ちリスクが激しいEVやハイエンドセダンは、買取価格保証付き残価設定ローンやリースを利用し、将来の価格下落リスクをメーカーやディーラー側に背負わせるのがセオリーでもある
クルマは人生を豊かにする素晴らしい道具ではあるものの、同時に家についで大きな買い物です。
よって、この「残酷な算数」を理解した上で、納得のゆく1台を選ぶ必要がありそうですね。
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