| F1史上、「ブラバムBT46B」「ティレル6輪」はもっとも奇妙な、しかし成功したマシンである |
そして両者が登場したときの衝撃は当時そうとうなものであっただろう
さて、かのマクラーレンF1の設計者、ゴードン・マレーが主催するスーパーカーメーカー、GMA(ゴードン・マレー・オートモーティブ)。
すでにロードカーのT.50を発売し、それをベースとしたサーキット走行専用のハードコアマシン「T.50s ニキ・ラウダ」の開発を進める様子を何度か公式Youtubeにて公開していますが、今回ついにその完成形が第81回グッドウッド メンバーズ ミーティングで披露され実際に走行することに。
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GMA T.50s ニキ・ラウダのステアリングホイールを握るのはダリオ・フランキッティ
今回このT.50s ニキ・ラウダ「XP1 プロトタイプ」のステアリングホイールを握り、車両を走らせたのは(インディカーチャンピオンの)ダリオ・フランキッティ。
同氏はT.50の開発ドライバーも務めており、ウォームアップラップの後には、コスワースが開発した自然吸気V12エンジンをレブリミットまで回転させてのホットラップを刻んでいます。
この3.9リッターエンジンは11,500rpmで711HP、9,000rpmで最大トルクを発生させ、これに組み合わせられるのは6速パドルシフトギアボックス。
T.50s ニキ・ラウダの重量はわずか852kgにとどまり、つまりパワーウェイトレシオは 「1」をわずかに上回る1.2ということになりますね。
T.50s ニキ・ラウダは、フロントにスプリッター、側面にてカナード、リアにはシャークフィンを備える大きなウイングを備えたユニークな空力パッケージを特徴とし、ラムエアを利用する大型エアスクープ、巨大な通気口を備えた新しいサイドスカートも備えています。
これらのエアロパッケージにより、1,500kg のダウンフォースを生み出すことができますが、何と言っても最大の特徴は7,000rpで回転する直径400mmのファン。
このファンはゴードン・マレーが1979年に開発したF1マシン「BT46B」に採用されていたものですが、車体底面の空気をファンで吸い出して負圧を発生させ、車体を地面に貼り付けグラウンドエフェクトを発生させるという考え方を持つトンデモマシン。
吸い出した空気は車体後方のファンを通じて排出され、ファンを内蔵することからも「ファン・カー」と呼ばれていますが、このファン・カーそのものはシャパラル2J(1970年)が最初に採用しており、こちらは「可動する空力パーツ」と見なされて公式競技では使用できないという判定が下されています。
よってゴードン・マレーはこのシャパラル2Jの二の舞いとならないよう、名目としては「ラジエターの冷却目的で」車体底面から空気を吸い出すファンを設置し、吸い出された空気によって発生する負圧ならびにダウンフォースは「副次的効果(おまけ)」だと主張することでこれを回避することに。
当時のF1というのは、こういった「レギュレーションの隙を突いた」機構やマシンが頻繁に登場しており、ぼくとしてはこういった「とんち合戦」のようなやりとりが面白かったなあ、と今更ながらに思い出したりします。
そしてこのブラバムBT46Bを駆ってみごと優勝したのがニキ・ラウダ(それがこのハードコアマシンの命名の由来である)。
二位には34秒という大差をつけての勝利で、当然ながらこの圧勝については他のチームが猛烈に抗議を行うこととなり、当時ブラバムのチームオーナーであったバーニー・エクレストンは「ダウンフォースの発生は、驚くべきことに偶然であったのだ」とシラを切るも抗議に屈してしまい、この問題の責任を取る形、そしてF1の運営に注力するためなど様々な事情からブラバムのオーナーを退いています。※いかにこのブラバムBT46Bの与えた衝撃が大きかったかがわかる
ただ、ゴードン・マレーはこのマシンに特別な思い入れがあったと見え、実際にBT46B後継となるファン・カーの開発にも取り掛かっていたとされますが、このファン・カーは大きな問題を巻き起こしたために出走が(わずか1レースの勝利ののち)禁止されてしまい、よって心残りがあったのも事実かと思います。
そしてこのT.50そしてT.50sは(マクラーレンF1の後継的意味合いとともに)ブラバムBT46Bの思想的後継者であるとも考えられ、そのためかこのGMA T.50sのリアには「Funcar」というバッジが誇らしげに輝いているわけですね。
GMA T.50s ニキ・ラウダ「XP1 プロトタイプ」が走行する動画はこちら
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