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ジャガー「新しいブランド戦略によって、我々は既存顧客の85%を失うでしょう」。なぜそこまでしてブランドを変えようとするのか、その危険な賭けの真意とは

ジャガー「新しいブランド戦略によって、我々は既存顧客の85%を失うでしょう」。なぜそこまでしてブランドを変えようとするのか、その危険な賭けの真意とは

Image:Jaguar

| ジャガーはガソリン時代の顧客の大半を失おうともブランドシフトを成し遂げる |

歴史上、ここまでの大胆な変革を試みた自動車メーカーは存在しないだろう

さて、様々な自動車ブランドが生き残りをかけてしのぎを削るのが現在の状況ですが、一部のブランドは競合上の理由、あるいは生産規模などの理由からその生息域を変更することがあります。

つまりは「自分たちが生き残れる場所」へと活路を見出し移行してゆくということになり、ここ最近でそれを行っているのがジャガーです。

御存知の通りジャガーは既存ラインアップを「ほとんど」販売終了としてしまい、ここから先は「超高級EVブランド」へと生まれ変わるという状況にあるわけですね。

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ジャガーは「85%の顧客を失うことを覚悟」

そこで今回報じられているのが、ジャガーのネージングディレクターであるロウドン・グローバー氏が語った「ブランドシフトを行った後、再びジャガーを購入する顧客はわずか15%程度であり、最大で85%の既存顧客を失う可能性があることを認識している」という覚悟。

上述の通り、ジャガーはあと数年で「ごっそり」ラインアップを入れ替えることとなりますが、新しいラインアップの車両価格はすべて「1500万円以上」となり、今後のジャガーは「富裕層の都市居住者」を主な顧客層になると見込んでいます。

よって、ジャガーの顧客が離れるのは「そのデザインのみ」ではなく「その価格帯」に要因があるということもわかりますが、これはあまりに危険な賭けであると言えるかもしれません。

ジャガーは新たなターゲット層の獲得を目指す

ロウドン・グローバー氏はこのブランドシフトにつき、「ジャガーが今後持続可能なビジネスを築くためには、まったく新しい顧客層を創造し、惹きつける必要がある」と説明していますが、これは「ジャガーはマスマーケットで競争するには生産規模や露出・認知度ともにジャーマンスリーに劣り、であればそれらとは競合しない、ベントレーに近い位置で戦う」という戦略を反映しているのだと思われます。

そして「今後は台数を追求せず、1台あたりの利益をいかに高めるかに注力する」とも述べているので、これもベントレー、あるいはロールス・ロイスのように「ビスポーク分野での拡大」を狙う可能性もがあるのかも。

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Image:Jaguar

そしてちょっと興味深いのは、ジャガーが「富裕層にとって最も重要なのは、パワートレイン(動力源)ではなく、車のデザインとインテリアのクオリティだと指摘していることで、実際のところ、2023年にジャガーは「富裕層の顧客にとって、動力源は購入決定要素の13番目程度に過ぎない」と述べています。

そのため、同社はFタイプの上位グレードを購入していた顧客層を新型電動GT(タイプ00の市販バージョン)の主要ターゲットに据える方針で、しかしガソリンエンジンを搭載する計画は一切なく、ロウドン・グローバー氏は「ジャガーは完全電動化ブランドへの道を進み続ける」と断言するなど、これは「やっぱりガソリンエンジンも重要」という方向へと動いている自動車業界のメインストリームとは全く逆の方向性。

さらに同氏は、「2030年までにはEVが支配的な動力源になる」と予測しつつ、「自動車業界はまだ本当に刺激的なEVを生み出していない」と指摘しており、つまり「EVが売れていないのは魅力的なEVが存在しないからで、魅力的なEVを作れば必ず売れる」とも考えているようですね。

「我々の新型EVはこれまでのジャガーとは全く異なる存在になる。それは極めて感情に訴える、非常にエモーショナルな一台になるだろう」

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Image:Jaguar

なお、今後1-3年といったタームでは「超高級EV」が乱立する可能性があり、メルセデスAMGとベントレーはすでに「超高級EV(ともにSUV)」のティーザー動画を投下済み。

そしてフェラーリも今年後半に「初の」EVを発表し、ポルシェも「コードネーム:J1」として知られるEV(SUVっぽいミニバン)を市場投入する可能性があり、これらによって(ベンテイガやウルス、カリナンの発売で一気に超高級SUV市場が盛り上がったように)超高級EV市場が活性化する可能性もあるのかも。

ただし実際にどうなるのかは誰にもわからず、既存のガソリン車ユーザーの大半を失うリスクを覚悟しながら、まったく新しい顧客層を取り込むという大胆な戦略を進めるジャガーにとって「吉と出るのか凶と出るのか」は全くの未知数です。

そしておそらく、2026年に発売予定の新型電動グランドツアラー「Type 00」によってその答えの一部が得られることとなり、よってこのクルマはジャガーの未来を大きく左右する重要なモデルとなりそうですね。

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参照:Auto Express

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