600LTはいろいろな意味でマクラーレンの集大成だ
マクラーレンが最もハードコアなオープンモデル「600LTスパイダー」のカラフルな画像を公開。
撮影されたのはアリゾナで、ボディカラーはマイアンオレンジ、ランタナパープル、ライムグリーンの3色が登場しています。
600LTスパイダーは「600LTクーペ」同様に570S/570Sスパイダーをベースにしたスパルタンなモデルで、軽量化に加えて出力向上、エアロダイナミクスの向上が図られたクルマ。
ベースモデル比で100キロも軽量化
その重量は570Sスパイダーに比較して100キロ軽量な1,297キロ、エンジンは3.8リッターV8ツインターボ(600馬力)、7速デュアルクラッチを介して後輪を駆動して0-100キロ加速を2.8秒で駆け抜けます。
なお、「LT」とはロングテールの略で、もともとはマクラーレンF1のレーシングカー”F1 GTRロングテール”に由来(空力を向上させるためにテールを延長している)。
そしてマクラーレンは、現代の「ロングテール」につき、「パワーアップ」「軽量化」「エアロダイナミクス最適化(必ずしもテールの延長とは限らない)」「サーキット重視」「究極のドライバビリティ」をその定義として採用しています。
その定義に従いリリースされた600LTスパイダーはとにかく内外装ともにスパルタンなクルマであり、その国内価格は32,268,000円。
29,999,000円の「600LTクーペ」とともに期間受注限定として発売されていますが、実際はその期間であれば「誰でも注文できる」わけではなく、一定の購入制限が各ディーラーによって設けられているようです。
マクラーレン600LTのマフラーエンドはなぜここにあるのか
そしてマクラーレン600LTの一つの特徴が「テールパイプ(”テール”とは呼べない位置ではありますが)。
マクラーレンはこれによって軽量化と効率化を果たしたと述べていますが、今回おなじみ技術系ユーチューバー、Engeneering Explained氏がその解説を行っています。
同氏による解説もマクラーレン同様ではあるものの、ここでかいつまんで内容を説明してみましょう。
まずマクラーレン各モデルは「ミドシップレイアウト」を採用しており、エンジンは座席後方にありますが、通常モデルでは下の画像のようにエンジンの両バンクからいったん排気管を上に出し、そこから車体後部まで引っ張ることに。
この画像は「MP4-12C」ですが、600LTのベースとなる570Sではこれがまたバンパー下まで延長され、つまり「下→上→下」という取り回しに。
しかしながら600LTの場合は「下→上」で完結していて、そのために排気管の長さが半分くらいになり、その分軽量化を達成できるというわけですね。
一見するに上に排気管を持ってくると「重心が高くなりそう」ですが、MP4-12Cの画像を見るに、「どのみち、いったん上にエキゾーストパイプを持ち上げているので」その心配はなさそう。
さらに、排気管を狭いエンジンルーム内にピチピチに通す必要がなくなるために「熱」がこもりにくく、クーリングという観点からも優れるのがこのレイアウト。
加えてマフラーエンドをバンパーの左右にまで引っ張る必要がなく、これは上述のように軽量化はもちろんですが、「リアオーバーハング左右に重量物を配置しなくていい」というロールセンター的観点からも大きなメリットがあります(エキゾーストパイプ、マフラーエンドは信じられないほど重い)。
そしてマフラーエンドがバンパーにないということは「バンパーのデザイン自由度が向上する」ことになり、これは見た目というよりは「ディフューザーを大きくできる」という空力面での効果が絶大。
この効果はおそらく想像以上に大きく、ポルシェもそのレーシングカー「911RSR」のエンジンレイアウトをリアからミッドマウントへと変更した際、車体後部下面に「大きなディフューザーを設置できた」ことで空力性能が飛躍的に向上して戦闘力が増した、と述べています。
さらにランボルギーニは「ウラカン・ペルフォルマンテ」「アヴェンタドールSVJ」「ウラカンEVO」にてテールパイプを上方へと移動させており、やはりリアディフューザーを巨大化させていますが、ウラカンEVOの場合は「ウラカンに比較し、リアセクションのダウンフォースが5倍になった(これだけの効果ではありませんが)」とのこと。
そんなことより、この位置にマフラーエンドがあるのは気分的に重要だ
ただ、ぼくとしてはそういった技術的な、そして数値的なメリットよりも、「自分の頭の数十センチ後ろのところから600馬力ぶんの排気を出している」ということのほうが重要だと考えていて、ほかにもルームミラー越しに見える「そこから吐き出される炎」というような、「聴覚と視覚」効果のほうが嬉しい、とは考えています。
反面、ちょっとした懸念もあって、こういったクルマはエンジン始動時に排気の他に色々なものを吐き出してしまうのですが、それでボディが汚れてしまうんじゃないか、ということ(600LTの場合は、マフラーエンドのすぐ後ろにあるウイング中央部にはプロテクションのようなものがあり、熱と汚れからウイングを保護しているように見える)、そして信号待ちのときなどはユラユラと立ち上る熱気で後部の視界が蜃気楼のように歪んで見えるんじゃないか、ということ。
ただ、いずれも「引き換えに得られる興奮」に比べると些細なことですし、とくに後方は(570Sでも)ほとんど見えないクルマなので「まあいっか」と考えています。
そのほか、試乗レビューも「解禁」となり、いくつかのメディアが動画によるレポートを公開しています。