
| マクラーレン、再三のCEO交代によって新しい路線へ |
しかしマクラーレンは大きな課題にも直面
マクラーレンは現在、「需要の鈍化」「スーパーカー市場での競争激化」「複雑化する地政学的環境」といった課題に直面し、その成長がスポイルされている状況です。
これまでのモデルは高い評価を受けてきたものの、さらにデザインや方向性が「似通ってきた」との意見もあり、外部的要因のみならず「自社内でのカニバリズム」も指摘されていて、ここ最近ではCEOの(複数回の)交代、資本の変化といった大きな変動を迎えることとなっています。
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マクラーレン新CEO、ニック・コリンズのビジョン
そこで2025年4月、アブダビの投資会社CYVNからの出資を受け、新CEOにニック・コリンズ氏が就任したことは既報のとおりではありますが、今回同氏がカリフォルニアにて開催されたモントレー・カー・ウィークにて次のように語ったことが報じられています。
「2030年代半ばまでに世界最高のラグジュアリーカーブランドになる。それが我々の“北極星”だ」
加えてコリンズ氏は、マクラーレンが本来持つポテンシャルを最大限に引き出すことが最重要だと強調しており、おそらくはマクラーレンのCEOから「ラグジュアリーブランド」という言葉が出てきたのは今回が「初」かもしれません(これまではハードコアなピュアスポーツ路線を崩さなかった)。
生産台数をあえて削減
同氏による最初の戦略的決断は「生産台数の抑制」。
- 2024年:約3,000台
- 2025年:約2,000台へ削減
これは、残存価値の維持とブランド価値の向上を狙ったもので、同時にMSO(McLaren Special Operations)のパーソナライズ需要を高め、品質改善にもつなげる方針です。
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デザイン刷新と新パートナーシップ
さらにマクラーレンは、コリンズ氏がCEOを務めていたForseven(フォーセブン)や、新たに「グループ内企業」となったゴードン・マレー擁する技術開発会社とも合流。
700人規模の人材と技術を取り込み、今後はより(モデル間で)差別化されたデザインを展開していくとも述べています。
SUV投入の可能性?
そして今後の車種展開につき、コリンズ氏は直接「SUV」とは言わなかったものの、次のように発言。
「マクラーレンを愛する顧客も、2シーター以外が欲しいときはポルシェやレンジローバーを選んでいる」
このコメントから、将来的にはフェラーリ・プロサングエに対抗する新型4シーターモデルが登場する可能性もありそうですね。
エンジン戦略:「まだまだガソリン」
そしてパワートレーンについても明確な方針は示されなかったものの、マクラーレンは今後もガソリンエンジン+プラグインハイブリッドを中心に据え、EVは需要の高い一部市場向けに限定されるものと見られており、実際のところ最新モデル「W1」には、916馬力を発生させる新型4.0リッターV8ツインターボを搭載。
このエンジンは今後も複数モデルに展開される予定で、軽量化技術とともにブランドの核を担うことが推測されます。
参考までに、フェラーリやランボルギーニといった他のスーパーカーメーカーと比較して、「もっとも技術が優れている」とぼくが考えるのがマクラーレン。
つまり製品そのものは非常に高く評価していて、しかし足りないのは「ブランディング」ではないかと考えているため、今回の方針変更については非常に好意的に受け取っています。
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まとめ
- マクラーレンは生産削減でブランド価値を回復へ
- デザイン刷新と新パートナーで未来を模索
- SUV/4シーター投入の可能性を示唆
- V8ハイブリッド重視、EVは限定的
新CEOの下で進むマクラーレンの改革は、今後の高級スポーツカー市場に大きな影響を与える可能性があり、おそらくは今後投資家向けになんらかの新しいビジョンが共有されるとも考えられ、その動向に注目したいと思います。
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参照:Carbuzz