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マクラーレン、新型EVは中国専売?新しい経営元と新CEOが示す戦略、そしてマクラーレンの未来とは

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| マクラーレンが中国市場限定でEV展開? |

マクラーレンの戦略は「最新のオーナー」のもとでついに安定するか

マクラーレンの親会社は紆余曲折を経て、2025年4月に「アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の政府系投資機関であるCYVNホールディングス」へと変更されていますが、これに伴いCEOも(マイケル・ライターズ氏から)ニック・コリンズ氏へと交代済み。

そして今回、同氏へのインタビューを通じ、マクラーレンの新しい方向性についていくつかの情報が明らかになっています。

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マクラーレンの「買収」がついに完了、新しい体制となって”無限の資金”を手に入れる。さらには先端企業のテクノロジーへとアクセスが可能となり、大きく可能性が開けそう

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マクラーレンはEVに対して慎重姿勢

まず、マクラーレンはEVに対して慎重な姿勢を示しており、これはフェラーリが2025年から2026年にかけて初のフルEV「エレットリカ」を発表するのに比較すると「真逆の方向」。

新CEO、ニック・コリンズ氏は、カーメディアの取材に対し「将来的にEVを出す可能性はあるが、中国市場など特定地域に限定されるだろう」と述べていて、しかしこの発言は実はかなり深い意味を持っており、というのもマクラーレンを買収したCYVNホールディングスは中国のEVメーカー「NIO」の大株主であるため。

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マクラーレンが新しい株主のもとで「マクラーレン・グループ・ホールディングス」へと生まれ変わる。新株主は「ゴードン・マレー」を所有、中国NIOへの投資も

| ここまでは紆余曲折を経たマクラーレンではあるが、ここが「安住の地」であることを願ってやまない | 新株主のもとでは「大きなアドバンテージ」を得る可能性も さて、この数年においてその資本が安定しなか ...

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よって同氏の発言は「他の国ではEVが売れないから、EVを販売するとしても中国のみに限られる」という消極的なニュアンスよりも、「グループ内にNIOが存在し、中国ではEVの人気が高く、よって中国向けにハイパーEVを開発・販売し、中国でのプレゼンスを高める」という積極的な意味を持つと受け取ることが可能です。

実際のところ、中国では今「シャオミ SU7ウルトラ」はじめ、BYDのサブブランド「ヤンワン」が展開するU9、そしてこれらに対抗するGWM(長城汽車)による新型EVなど「ハイパーEV」市場がにわかに活性化しており、そしてフェラーリやランボルギーニは「当面」この市場へと参入する計画を持たないため(フェラーリ初のEVはライフスタイル系になると見られている)、マクラーレンが「中国市場にハイパーEVを投入する」ことには一定の価値がある(中国市場でのプレゼンスを強化でき、ライバルに先んじることができる)とも考えられます。

中国・長城汽車が初のスーパーカー「自信」を予告。自主開発のV8 PHEVでBYD「仰望U9」に真っ向勝負を挑む
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そしてNIOも「すでに」中国内のライバルに対抗すべくハイパーEVを開発している可能性が考えられ、ここにマクラーレンが加わることはCYVNホールディングスにとっても「悪い話」ではないのかもしれません。

中国NIOが下位ブランドとして「ファイヤーフライ」を立ち上げ、その第一弾となるコンパクトEVを320万円で発売。ユニークなルックスをもって現地ではミニやスマートに対抗
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マクラーレンは「V8エンジン存続」へ

「ワールドワイドでの」EV展開に慎重な一方、マクラーレンは内燃機関を「長期間にわたり重視する」と明言しており、 特に、ブランドを象徴する4.0リッターV型8気筒ツインターボは今後も継続採用される予定であると公言されています。

実際、マクラーレンは新型「W1」に搭載されるV8を改良し、1リッターあたり229.6馬力という驚異的な出力を実現していて(従来の750Sは185.3hp/L)、このエンジンは今後の新モデルにも搭載される予定であることもアナウンスされており、マクラーレンの「V8時代」はまだ終わらないことを示しています。

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Image:McLaren

マクラーレンがW1に採用されるハイブリッドシステムの詳細を公開。「P1に比較し40%の軽量化と90%の出力向上、これだけでホットハッチ並みのパワーを発揮」
マクラーレンがW1に採用されるハイブリッドシステムの詳細を公開。「P1に比較し40%の軽量化と90%の出力向上、これだけでホットハッチ並みのパワーを発揮」

Image:McLaren | マクラーレンW1に採用されるハイブリッドシステムは「10年分の歳月による技術の進化、積み重ねたノウハウ」が反映されている | 「エンジン」と「ハイブリッド」を同時に設計 ...

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この「内燃機関存続」という方針はポルシェ、そしてランボルギーニが最近明らかにした方針と同様であり、ひとつの業界の流れとも言えるものですが、アルトゥーラに積まれるV6エンジンはどうなるんだろうな、という疑問も生じますね(これに関しては今回触れられていない)。

新体制下での今後のマクラーレンの展望

上述の通りマクラーレンはCYVNホールディングスによる買収が完了した状態であり、地元(英国)スタートアップ起業であるフォーセブン(Forseven)との合併によって新たな組織へと生まれ変わり、新しい戦略に沿って運営がなされる段階へと進んでいます。

CYVNホールディングスはNIOのほか、ゴードン・マレー・テクノロジーズにも出資していることでも知られていて、ここからは軽量設計や電動化技術のノウハウがマクラーレンに供給される見込みでもあるといい、この成果については大いに期待できるところです。

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さらにコリンズCEOは「最初の新製品は思っているより早く登場する」とも述べており、既存プロジェクトへの追加投資によって開発スピードが加速していることを示唆しているため、近いうちに「新しい体制によって生み出された、新しいマクラーレン」を見ることができるのかもしれませんね。

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参照:Car and Driver

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