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ロールス・ロイスが「ボタン離れ」を拒否する理由とは?タッチスクリーン全盛時代にアナログを貫く哲学

ロールス・ロイスが「ボタン離れ」を拒否する理由とは?タッチスクリーン全盛時代にアナログを貫く哲学

| やはり「超」高級車には「物理的なタッチ」が必要である |

「一般的な」高級車は「タッチスクリーン時代」に突入…しかしロールス・ロイスは逆を行く

最近の高級車は、物理ボタンやスイッチを廃止し、大型のタッチスクリーンを中心にしたインテリアデザインが主流となっています。

メルセデス・ベンツはその代表格で、MBUXコックピットによりダッシュボード全面をスクリーンで覆うデザインをいち早く導入し、2025年型キャデラック・エスカレードでもダッシュボードを横断する巨大スクリーンとエアコンやライト操作用の「補助」タッチパネルを搭載しており、トータルで「50インチ以上の」スクリーン面積を持つ例も珍しくはない存在に。

メルセデス・ベンツ
メルセデス・ベンツはさらにダッシュボードの液晶パネルを巨大化させるようだ。「大きなディスプレイは私たちにとって非常に重要です。次は幅1.4メートルです」

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しかし、この「完全デジタル化」の流れに逆行するメーカーも存在します。その一つがロールス・ロイスです。

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ロールス・ロイスが物理ボタンを残し続ける理由

ロールス・ロイスでは最新EV「スペクター(Spectre)」にも注目が集まっていますが、驚くべきことにこのモデルでも物理ボタンやアナログスイッチは健在で、ロールス・ロイス・ノースアメリカ社長のジョン・コルベス氏は、ABCニュースのインタビューにて次のように語っています。

「私たちの顧客は、実際にノブを回したりスイッチに触れることを愛しています。エアコンから出る冷気で金属製の通気口が結露する、その五感体験も彼らにとって重要なのです。」

ロールス・ロイスは単なる機能性ではなく、感覚的な贅沢さを提供することがブランド哲学の中心にあるため、「全てをスクリーンで操作する未来」には慎重な立場をとっており、精巧に作られたスイッチのクリック感や、機械式クロノグラフのプッシャー操作に求められるような「精密なタッチ」を何よりも重視しているのかもしれませんね。

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ブガッティも「脱タッチスクリーン」を宣言

興味深いことに、ロールス・ロイスだけでなく、ブガッティも同じ方向性を示しています。

2024年にデビューした最新モデル「トゥールビヨン」の場合、インテリアにほとんどスクリーンを使わないデザインを採用し、実際にはスクリーンも存在するものの、使用しない時には格納されるというこだわりよう。

スイス時計をモチーフにしたアナログメーターをステアリングに配置していますが、ブガッティはタッチスクリーン化を「いずれ時代遅れになるトレンド」とも明言し、物理操作の価値を再評価しています。

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一般車でもボタン人気は復活傾向に

興味深いことに、この「ボタン回帰」は超高級車だけの話ではありません。

  • ヒョンデ(Hyundai)は積極的に物理ボタンの継続を発表
  • フォルクスワーゲン(Volkswagen)は、使いにくいと不評だったハプティックボタンを廃止し、従来の物理スイッチに回帰

さらにフェラーリもSF90ストラダーレやローマにて「タッチ式スイッチ内蔵」ステアリングホイールを導入しゅたものの、その後は「タッチ操作を受け付ける範囲を段差で示した」デザインへと切り替わり、最新モデルであるF80、そして296スペチアーレ / 296スペチアーレAでは左右スポークのスイッチが「完全なる物理式」へ。

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つまりは普及価格帯のクルマからスーパーカーに至るまでも「物理スイッチへの回帰」傾向が見られているわけですね。※、ただ、これらはロールス・ロイスとは異なり、「五感を刺激する感覚」を重視したものではなく、単に操作性を考慮したものである

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さらにJ.D.パワーの顧客満足度調査では、ボタンレス化が顧客満足度の低下に直結することが判明しており、安全面における懸念から、2026年以降のユーロNCAP(欧州新車アセスメントプログラム)において、重要な操作をタッチスクリーンに依存しているクルマの評価を下げる方針を示してています。

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まとめ:タッチスクリーン万能時代に「人が触れる贅沢」を守るロールス・ロイス

現代の車はどんどんデジタル化が進み、インテリアはスマートフォンのように「フラットで、タッチ操作前提」が当たり前になりつつあります。

しかし、ロールス・ロイスはあえてそこに逆行し、「触れることの喜び」を大切にするという強い哲学を貫いています。

  • ロールス・ロイスの顧客は「五感体験」を求めている
  • ブガッティも「スクリーン否定派」に
  • 一般車メーカー、スーパーカーメーカーでもボタン回帰が進行中
  • 2026年以降、タッチスクリーン過多の車は安全評価が低下する可能性

ラグジュアリーとは、単なる最新技術ではなく、人が心地よく感じるインターフェースを提供すること。

ロールス・ロイスはその本質を、時代が変わっても忘れていないようですね。

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参照:ABC News, CARBUZZ

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  • この記事を書いた人

JUN

2013年より当ブログを運営中。 国産スポーツカー、ポルシェ、ランボルギーニ、フェラーリ等を乗り継ぎ現在に至ります。 単なる情報の記載にとどまらず、なにかしら自分の意見を添え、加えてクルマにまつわる関連情報(保険やメンテナンスなど)を提供するなど「カーライフを豊かにする」情報発信を心がけています。 いくつかのカーメディアにも寄稿中。

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