欧州自動車メーカーが中国に媚びる傾向はまだまだ続きそうだ
4月17日より上海モーターショー(オートショー)が開催されますが、中国市場はフォルクスワーゲンにとっても「最大」かつ「最重要市場」ということで、グループ挙げてニューモデルが投入されるようです。
なお、多くの自動車メーカーは「アジアパシフィック」「アメリカ(南米と北米)」「欧州とアフリカ」といった3つの地域に分けて管理することが多いものの、フォルクスワーゲングループはこのうち「アジアパシフィック」から中国を独立させて単一市場として扱っており、その中国偏重度合いを伺うことができますね。
フォルクスワーゲンブランドからはI.D.のフラッグシップSUV
そしてフォルクスワーゲンが今回上海モーターショーで初公開するのは「ID Roomzz」。
車名の最後に「zz」をつけるのがIDのひとつの流儀ということになりそうですが(BuzzやCrozzのように)、その名の通り広い室内空間を持つ車となりそう。
そして今回公開されたティーザー画像を見るにボディ形状はSUVとなり、「大きなSUV」という中国市場の嗜好にマッチした仕様を持つのも特徴ですね。
このRoomzzも、ほかのIDファミリー同様にMEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリクス)プラットフォームを使用することになるかと思われますが、中国市場へ投入されるのは2021年だとされ、その後に世界中で販売される予定、とのこと。
なお、中国向けRoomzzの製造は中国国内に新設するエレクトリックカー専用工場にて行うことになりそうで、そのほかの国で販売される車両は(おそらく、これまでの報道からするに)欧州生産になる可能性が大。
なお、このI.D. Roomzzは「インテリアの多様性」をそのキャラクターとして挙げており、いまだかつて無いシートレイアウト、高級な素材、カスタム可能なライティングを持ち、かつ高いレベルの自動運転機能が与えられた、フルサイズSUVの未来における可能性を示唆するクルマだとしています。
シートレイアウトについては現段階でどのようなものか不明ではあるものの、EV専用プラットフォームを採用するだけにガソリン車用のそれとは異なりバルクヘッドやトンネルといった制約が少なく、ガソリン車ではできないようなチャレンジを行ってくることになりそうですね。
アウディは自動運転を備えたアーバンモビリティAI:meコンセプトを公開
そして同じフォルクスワーゲングループ傘下にあるアウディも新型コンセプトカーを発表すると予告していて、これは「AI:me」コンセプトと題されたもの(VWやアウディに限らず、エレクトリックコンセプトは読みづらいものが多い。世界中どこでも同一に読めるような名称が良いとは思うが)。
今回公開されたのはスケッチ、そして簡単な特徴のみで、このAI:meコンセプトはレベル4(完全自動運転を車両が行い、ドライバーは運転に関与しない、または存在しない)相当の自動運転機能を備え、かつスケッチから察するにコンパクトな「アーバンモビリティ」。
現在発売されているクルマ、これから出てくるクルマの多くは「レベル3(加速・操舵・制動を全て車両が行うが、緊急時や自動運転システムの限界時にはドライバーが操作を行う)」を備えるかどうかという次元ではあるものの、アウディは一気にこれを飛び越え、「それによってダッシュボード含むインテリアのデザインが大きく変わった(車体は小さくても室内を大きく取れる)」と述べています。
なお、一昨年あたりは猫も杓子も「自動運転」といった風潮があり、しかし昨年あたりから自動運転を全面に押し出すメーカーは減ったように思います。
おそらく「世の中がエレクトリックと自動運転ばかりでつまらない」といった印象を感じ始めたためで、新しさを示すための手段であった自動運転が、逆に陳腐化したからだと考えていますが、こと中国に関しては「自動運転」に対する関心がいまだ高いようで、フォルクスワーゲングループはここを中国における大きなチャンスだと捉えているのかもしれません。
加えて「インテリア」にフォーカスしているのも今回のRoomzz、AI:meの特徴であり、中国の自動車市場は「エレクトリック、自動運転、広く快適な室内」という、他の国とは異なる路線が要求されることになりそうですね。
そう考えると、中国人の考える理想の車は、まさに「マイバッハ・アルティメット・ラグジュアリー・コンセプト」なんだろうな、と思います。