| 正直、プレミアムセグメントのEVは新車で購入するとかなり痛い目を見ることになりそうだ |
現在のところ、EVの中古価格は下落に歯止めがかからない
さて、ポルシェは少し前にアップデートされたタイカンを発表したところですが、今回はアウディがタイカンの兄弟車であるe-tron GTのフェイスリフトを実施。
内容としては新しいスタイリング、改良されたインテリア、そしてより強力なパフォーマンスといったところに集約され、重要なのは一回の満充電あたりの航続距離が伸び、リアのエレクトリックモーターが軽量化されたこと。
ここでもう少し掘り下げた内容を見てみましょう。
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RS e-tron GT performanceはアウディの市販車市場「最強」を誇る
まず、今回発表されたのは「S e-tron GT(公式フォトでのシルバーの個体)」「RS e-tron GT(グレー)」「RS e-tron GT performance(グリーン)」の3モデル。
S e-tron GTとRS e-tron GTのフロントアクスルには永久磁石同期モーター (PSM)が使用され、これらはそれぞれ239馬力を発生し、RS e-tron GT performanceでは、さらに高い放電電流のために改良されたパルスインバーターを使用しています。
リアアクスルには新しく開発された永久磁石同期モーター(PSM)が採用され、これは3モデルとも同じサイズを持ち(従来型よりも10kg軽い)、その出力は最大で564馬力だとアナウンスされていますが、前後アクスルを合わせたシステム合計出力だとS e-tron GTでは679馬力、RS e-tron GTでは856馬力、RS e-tron GT performanceだとフロントモーターの出力が強化されるために925馬力を誇ります。
なお、この925馬力というのは(ポルシェ タイカン ターボGTの1,100馬力にはおよばずとも)アウディの市販車史上「もっともパワフルなクルマ」です。
加速性能だと、S e-tron GTは0から100km/hまでを3.4秒で加速し、RS e-tron GTは2.8秒、RS e-tron GT performanceはなんと2.5秒。
最高速はS e-tron GTだと245km/h、RS e-tron GT / RS e-tron GT performanceでは250km/hを誇ります(リミッター作動)。
出力と加速性能の向上に伴ってブレーキシステムも強化され、S e-tron GTにはスチール ディスクとブラック仕上げのブレーキキャリパー、RS両モデルにはタングステンカーバイド コーティング ブレーキディスクが標準として装備され、全モデルにてカーボン セラミック ディスクを(オプションにて)選択することが可能です。
その他サスペンションも大きく進化しており、基本設定だと2チャンバー テクノロジーを採用した新開発のエアサスペンションシステム(乗り心地とダイナミクスが向上している)、オプションではアクティブサスペンションシステムが用意されている、とのこと。
新しく設定された”ドライブセレクト・ダイナミック・ハンドリングシステム”により、ドライバーは車両の特性を変化させることができるとされ、選択できるプロファイルは3つ(コンフォート、ダイナミック、エフィシエント)から。
RS e-tron GTにはこれに「RS1」「RS2」が追加され、RS e-tron GT performanceでは「パフォーマンス」モードが追加されることについても言及されています。
進化したサスペンションは車体を加速、ステアリング、ブレーキング中に水平を保つことに貢献し、アウディいわく「これにより正確なステアリングレスポンスが得られ、ワインディングロードでの運転がさらに楽しくなる」。
オプションのアクティブサスペンションはさらに高度な機能を持っており、バンプを走行しているときでも車内に伝わる振動を排除することができるほか、コンフォートエントリー機能により、車高を最大で8センチ上げることも可能となります。
なお、バッテリーは新しい2層冷却プレートによって(33セルモジュールの)容量が12%増加し、冷却システムそのものもアップグレードされ、最大充電電力は50kW増加して320kWに。※密度が増加したことでバッテリーパック(97kWh)の重量は9kg軽量化されている
e-tron GTはわずか18分でバッテリーを10%から80%まで充電でき、10分の充電でも280kmの走行が可能な電力をチャージできるというので、EVとしての性能が大きく向上したと考えていいのかもしれません。
スタイリングだと、シングルフレームグリルの上にボディカラー同色ストリップが付くバンパーなど「微妙な」変更がなされており、さらにはエアカーテンも改良され「より効率的」に。
RS e-tron GTだとこう(RSモデルっぽく、ハニカムを模したセンターグリルが装着される)。
リアだとバーチカルフィンを装備する新しいディフューザーが装備され・・・。
こちらはRS e-tron GT(やはりハニカムモチーフ)。
ちなみにRS e-tron GTとRS e-tron GT Performanceとでは基本的に同様の意匠を持ちますが、後者では一部パーツがカーボンファイバーに変更されるなどの差別化が図られています。
S e-tron GTに装着されるのは新デザインの20インチ ホイール、そしてRS モデルには2つの新しいホイールが用意され、そのひとつは90年代のアヴス・コンセプトに敬意を表した21インチの「Avus ホイール」ということもアナウンスされています。
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新型アウディe-tron GTのインテリアはこう変わった
新型e-tron GTのインテリアに目を移すと、新デザインのステアリング ホイール、シート、新しいデジタル コンテンツなどが搭載されており、高級感を演出する木製トリムインレイの採用も一つのトピック(近年のスポーツカーやプレミアムカーではウッドがリバイバル採用される傾向が加速している)。
そのほか、はじめて”バナジウム”が選択できるようになったほか、RS e-tron GT Performanceでは外装のカーボンファイバーにマッチしたカーボン製インレイも選択できるとされていますが、オプションではステアリングホイールの12時位置にセンターマークを入れることが可能となっています(このセンターマークも最近の流行のひとつである)。
ちなみに「ボタンに触れるだけでガラスを不透明にできる」ポリマー分散液晶技術を採用した新しいパノラマサンルーフも導入されています。
シートなど内装のメイン素材として採用されているのはリサイクルポリエステルで作られる(スゥエード調の)ダイナミカ、そしてやはり再生素材のカスケード・ファブリック。
カーペットとフロアマットは、古いカーペットの切れ端や漁網、その他のリサイクル品から作られたリサイクルナイロン繊維であるエコニールが用いられるなど持続可能性が大きく向上しています。
テクノロジー面では、アウディのバーチャルコックピットが改良され、温度や充電電力などの関連するバッテリー情報が表示されるようになったほか、 RSモデルにはRS専用のコンテンツと情報が提供され、RS e-tron GT Performanceには、(初代RSモデルである)Audi RS 2アバントへのオマージュとして、「ホワイト」へと設定できるスピードメーターグラフィックが搭載されているのだそう。
こういった数々の変更や改良を見るに、新型e-tron GTは「見た目」こそ大きく変わっていないものの、その中身はモデルチェンジにも近い進化が見られ、やはり「EVは買い時が難しい」と思わされる今日このごろ。
そう考えると、メルセデス・ベンツEQSやポルシェ・タイカン、そしてこのアウディe-tron GTのようなプレミアムEVにつき、フェイスリフトモデルが発表されデリバリーが開始された後、フェイスリフト前のモデルを格安で入手するのがもっとも賢い買い方なのかもしれません(その時点では十分に中古価格が下がっているはずで、さすがにそこから売却しても大きな損失は出ないものと思われる)。
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参照:Audi