
| まさかこの短期間ですべての状況が逆転しようとは |
そしてこの状況を再び「ひっくり返す」ことは難しいであろう
さて、とにかく欧州の自動車メーカーが現在頭を悩ませているのが「中国での販売状況」。
簡単に言えば「中国ではいぜんクルマが売れ続けているものの、その販売の主役は中国車にシフトしてしまい、欧州の自動車メーカーのクルマが売れなくなった」という状況です。
これはプジョーやシトロエンといった普及価格帯のブランド、そしてメルセデス・ベンツやBMW、アウディなどのプレミアムカーブランドにとってもすべからく同じ状況となっていて、要は中国市場自体が根本的に「これまでとは異なるクルマを求めるようになり、市場の嗜好がシフトして欧州のクルマが時代遅れになった」と捉えることができるのかもしれません。
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現在、欧州の自動車メーカーの「中国市場への対応」はそれぞれ異なる
こういった中国市場の変化に対し、自動車メーカー各社はそれぞれ独自の対応を行っていて、「撤退」を決める自動車メーカーもあれば「徹底抗戦」を決めるメーカーも。
たとえばメルセデス・ベンツは中国市場で「戦う」意思を示していることでも知られますが、2024年には7%減の683,600台の販売にとどまり、さらに2025年第1四半期には中国向け出荷台数が10%減の152,800台となったにもかかわらず、同社は中国市場に対しては「楽観的」。
その理由として、中国において100万元(約2000万円)以上の価格帯で最も売れたブランドとなったことが影響しているとされ(このセグメントは競合が少ないのでメルセデス・ベンツの独壇場のようなものではあるが)、さらにこれよりも低い価格帯だと年後半に予定している新型CLAの投入が起爆剤になることを期待している、とも報じられています。
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ただしそれでも状況としては(客観的に見て)期待できるものとは言い難く、後部座席の広さを重視する傾向があるという中国市場に対応すべく、Aクラス、Cクラス、Eクラスに対して設定した中国市場向けのロングホイールベース版も現地での活性剤になっているとはいえない状況で、「ローカライズが報われていない」という現状もあるわけですね。
BMWもやはり中国市場では「シェアを失うばかり」
そしてこの状況はBMWグループでも同様で、BMWとMINIの合計販売台数は13.4%減の715,200台となり、2025年1〜3月期はさらに悪化して17.2%減の155,195台へ。
BMWの主力ブランドは中国を除くすべての地域で成長したものの、依然として同社最大の市場である中国市場での「凹み」は大きな痛手ということになりそうです。
参考までに、BMWも中国市場向けにロングホイールベース仕様のセダンやX1、X3、X5のSUV版を展開しており、さらに中国は同社が(シリーズベースの電動セダンである)i3を販売している唯一の国ではありますが、BMWが中国市場に注力しているにもかかわらず、中国市場は「それに応えてくれていない」ようですね。
アウディは新ブランド「AUDI」で巻き返しを図るが
アウディはまだ2025年第1四半期の販売実績を公表しておらず、しかし芳しくない内容である可能性は非常に高く、というのも2024年、アウディの中国および香港での販売台数は10.9%減の649,900台となったためで、しかしアウディは昨年に「中国向け」ブランドを立ち上げたということもあり、今年のどこかの段階でこの効果が現れるのかもしれません。
なお、こういった事情を招いているのは「中国市場ではEVが好まれる」ということ、そしてEVというカテゴリにおいては中国の自動車メーカーに明らかなアドバンテージがあって「欧州の自動車メーカーは、中国の自動車メーカーを追う立場になってしまっていること」。
Image:AUDI
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そしてこのアドバンテージは「バッテリーの調達」「生産コスト」という非常に大きな要素によって構築されていて、西側の自動車メーカーが(中国の自動車メーカーに)追いつくことがますます困難になっています(欧州の自動車メーカーは人員削減などのコスト圧縮で対抗を試みているが、根本的な解決策にはなりそうにない)。
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