さて、アウディQ2に試乗。
かねてより気になっていたQ2ですが、ぼくと同じように気になっていた人も多いようで、発表されたばかりの週末は多くの人々がQ2を見に来ています。
日本でのグレード展開は三種類で、「Q2 1.0TFSI/Q2 1.0 TFSI Sport/Q2 1.4TFSI」。
駆動方式は全てFFとなっており、サスペンション形式やトランスミッションも全グレード通じて同じ。
一番ベーシックな「Q2 1.0TFSI」はヘッドライトがハロゲンになったりと装備が簡略化されている「価格訴求グレード」となり(2,999,000円)、そのほか二つのグレードでは装備は同一ながらも差異はエンジンのみ。
なおQ2 1.0 TFSI Sportの価格は3,640,000円、Q2 1.4TFSIの価格は4,050,000円。
現実的に購入となると、ベースグレードはのちに追加するオプションにかなりお金がかかり、であれば「真ん中のグレードを買うか」ということになりますが、しかしあと40万円出せば排気量が1.4リッターになると考えたりして、結局のところ最も高価なグレードを購入することになる(アウディの戦略にまんまとハマる)ケースが大半と思われます。
ちなみにカーナビゲーションはオプションで、「ナビゲーションパッケージ」を選ぶと追加で35万円必要。
そのほかリヤクロストラフィックアシスト、アクティブレーンアシストなどを含む「セーフティパッケージ(130,000円)」、バーチャルコクピット(50,000円。これはほかモデルに比べると安い)を装備する必要があり、なんだかんだで総額が結構膨らんでしまうことに。
それでも試乗してみると「納得のプライス」と感じたのですが、ここでその内容を見てみましょう。
まずは外観ですが、今までのアウディとは大きく異なるデザイン。
最新のデザイン言語を持っていると言ってよく、多角形をモチーフにした「ポリゴン(懐かしい)」と表現されるデザインが特徴。
今までにないような三角形、それらを組み合わせた六角形のデザインが随所に見られます。
ぼくが驚いたのはプレスラインの鋭さ。
トヨタC-HRはそのエッジの効いたデザインを再現するためにプレスラインを鋭角にすることにこだわり、その「尖り具合」はトヨタ車随一とされていますが、アウディQ2の尖り具合はそれをはるかに超えるほど。
プレスラインを尖らせるには鉄板を薄くするほか工作機械の精度を上げる必要がありますが、例えば薄い紙を折るのとダンボールを折るのとでは「折り目」の尖り具合が異なりますし、厚紙を手で折るのと鋭い定規を添えて折るのとでも「折り目」の尖り具合が変わルことになり、そう言った「尖り具合の差」ですね。
同時に「折り目のあるところから平面に」、またその逆の場面においては歪みが出ることが多いものの、Q2ではそれも非常に少なくなっており(もしくは皆無に近いと言って良い)、これはちょっとほかメーカーでは再現できないだろう、と思われる部分。
その尖りっぷりたるや(尖り具合で有名な)さしものランボルギーニも敵うまいというほどですが、とにかくプレスラインが尖っており、しかも「歪み」がないのがQ2の製造における品質の高さを物語ります(聞けばQ2はアフリカ等本国以外ではなく、ちゃんとインゴルシュタットで製造しているとのこと)。
ちなみにアウディはほかメーカーがそれを考えもしなかった頃からボディパネルの「チリ」にこだわっており、今やそれは品質を表す一つの(自動車業界における)基準にもなったと言えますが、そこでアウディが考えた次の「差別化」がこの「プレスライン」なのかもしれません(新型A5でも同様の印象を受ける)。
これは走行性能に影響はない「どうでもいい」部分ではあるものの、ショールームではなく路上で他の車と並んだ時にけっこう「差」として現れる部分でもあり、実際に多くのQ2が走る欧州において「他の車に混じって走るQ2がなぜか目立って見えた」のはこれが原因だったんだろうなあ、と今更ながらに思うところ。
そのほか気づいたところとしては、前後ランプ類の内部構造もやたらと込み入っており、灯火類はもちろんLEDですが(ベースグレード除く)、その発光方法も透過式となっていて高級感と上品さを兼ね備えたもの。
世代の差があるので仕方がありませんが、上位グレードよりもずっと造形が凝っており品質やデザインに優れるものを持っている、と思わせる部分ですね。
それはテールランピも同じで、光った時に「線」が見えるようにレンズ内に立体的なパーツが仕込まれています。
アウディはA7からこういったデザインを採用しているように思いますが、まさかQ2にもこういった構造を採用してくるとは、という感じですね(ちなみにリアウインカーはシーケンシャル)。
現在ランプ類に関してはメルセデス・ベンツが相当に力を入れており、同様に芸術品のようなランプを持っていますが、それに匹敵するもしくは上回るものをアウディは製品化しているようです。
内装においてもその質感の高さがよくわかり、全体的に凝縮感を感じるデザインとなっています。
内装自体はコンパクトですが(写真を撮る時間がなかった)操作系がステアリングホイールとセンターコンソールに集中しており、機能的な印象を受けるとともに質感の高さも感じます。
スイッチの多くにはメタル調の加飾が施されており(アウディ曰く「アルミルック・インテリア」)、こればBMWだと上位グレードでしかお目にかかれないもの。
試乗車のメーターはオプションのヴァーチャルコクピットが装着されており、ここにはおなじみグーグルアースのマップをやその他情報を表示することが可能(この液晶パネル自体はランボルギーニ・ウラカンと同じ)。
ステアリングホイールは径が小さくセンターパッドも非常にコンパクト。
スポーク部までレザーが巻かれた高級感のあるもので、シフトレバーも同様ですがレザーの品質もかなり高いものが使用されています(ポルシェ含むほかメーカーだとオプションでないとこの品質は望めない)。
手に触れる部分の質感に関してはアウディはピカイチで、ここはいつ、どのモデルに乗っても感心せざるを得ない部分ですね。
キーはもちろんスマートキーになっているのでそのままキーを適当なところへ置いてプッシュボタンを押してエンジンスタート。
振動は非常に小さく、音量もかなり抑えめ。
アウディは振動や音に関しては非常に神経質なメーカーですが、こう言ったエントリークラスにまでその思想が貫かれているのは素晴らしいと思います。
実際に走行してもノイズ、ハーシュネス、バイブレーションつまりNHVはかなり低いレベルに抑えられていて、これは「驚愕」と言っていいレベル。
ジャーマンスリーの中でもアウディはこの部分においてずば抜けており、メルセデス・ベンツが最近になってちょっと近づいたか(BMWはまだ程遠い)、というレベル。
ただ、これはそのメーカーが何を重視するかということの差で、アウディ以外のメーカーはこれを「さほど気にしていない」だけなのかもしれません。
なおアウディに近い考え方を持つメーカー(ブランド)はレクサスではないかと考えており、仕上げや品質も近いものがある、という印象を持っています。
さて様々な環境で走行してみますが、特に1リッターエンジンでも不満はなく、普通に乗るのであれば1.4リッターは不要かもしれない、と思ったほど。
足回りも非常に良くできており、その乗り心地の良さは特筆もの。
大きなうねりのある道路、ダブルレーンチェンジ、鋭い段差のある路面など「どのような」環境においても安定した姿勢を他の地、ドライバーがそれを意識する必要がないというセッティング。
柔らかいというのとはまた違う、しっとりしたしなやかさを感じさせる足回りですね(ボディの仕上げとは異なり、レクサスの足回りはアウディとは大きく差があると考えている)。
なおアウディはQ2においても「S」もしくは「RS」の設定を考えていると思いますが、ハイパワーなエンジンを搭載しても十分に耐えうるようにボディシェルが設計されているのは間違いなく、相当な剛性の高さも感じさせます。
内装も軋み音一つ立てないのは秀逸としか言いようがなく、これは以前にTT(8J)を所有していた頃にも驚かされた部分。
外部からの音の侵入も少なく、それが安心感をもたらしているのだと思いますが、とにかく安心、安全、安定という印象の車ですね。
ステアリングについては「プログレッシブステアリング」を採用しており、これはいわゆる可変レシオですが、ステアリングを切れば切るほどクイックなレシオになるもので、市街地の取り回しのしやすさと安定性両立させたもの(ポルシェの可変レシオに似ている)。
このおかげで採用回転半径は5.1メートル、と極端に小さくなっています。
ブレーキの効きも申し分なく、強く踏んでも姿勢を乱すことなくピッタリ停まる制動力を持っており、基本性能の高さを感じさせる部分。
なお最近の車らしく「ドライブモード」を備えますが、AMGでは上位モデルにしかない、そしてランボルギーニでも(アヴェンタドールだと)アヴェンタドールSにしかない「インディビデュアル」モードを備えており、これはステアリングのパワーアシスト、エンジン、シフトチェンジの特性を個別に設定可能。
反面気になったのはアイドリングストップの作動の速さと復帰時の振動。
作動(エンジンが止まる)が早いのは同じグループのポルシェと同じで、車が停止しようとしているとコンピューターが判断すると時速7キロ以下でエンジン停止。
つまり車が完全に停まらなくてもエンジンは止まるということですが、エンジンが止まると急に重ステになるので停止前にステアリングを切っている途中だとちょっと驚くことに。
復帰時の振動についてはそのまま「振動が大きい」ということですが、これらは「アイドリングストップをオフ」にしておけば良いだけなので特に問題とは言えなさそう。
総合的な印象ですが、Q2はVWアウディグループのマスメリットを遺憾なく発揮した車であり、バーチャルコクピットしかり、内装のレザーやスイッチ類の質感といい、「世界ナンバーワンの販売台数を誇る」フォルクスワーゲンを同じグループに持つからこそ(仕入れ時のコストダウンで)実現できた装備を多数持つ車だと言えそうです。
なおアウディは今後V8エンジンの開発をストップしポルシェが代わりにグループ全体のV8エンジンを設計すると報じられていますが、エンジン以外にもシャシーコントロールやサスペンション、もしかするとプラットフォームにまでポルシェの技術が入っているんじゃないかと感じるところも多数(ステアリングレシオ、スチールに関する技術など。ポルシェはスポーツカーメーカーとしてはアルミ製プラットフォームを使用せず”スチールの可能性”を追求。反面世界で最も早くアルミボディを取り入れたアウディは最近スチールを多用し始めている)。
ポルシェはポルシェで電装品や補記類などの仕入れコストが(VWアウディグループ加入によって)下がっているのではと考えていますが、アウディにおいてもポルシェの技術を車両に反映させているところが多いと考えており、いろいろあった吸収合併ではあるものの、「結果オーライ」だったのでは、と思います。
その意味でも他メーカーがこの品質や装備で作ると「かなり高額になってしまう」と思われる内容となっており、これが「Q2は割安」とぼくが考える所以。
VWアウディグループだからこそ実現できたのがQ2であり、この価格でこの車、そして品質が手に入るのであれば「安い買い物」である、と断言して良いでしょう。