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BMWは「i8後継」ハイブリッドスポーツとして「i16」計画を進めていた。95%まで完成するもコロナ禍の影響にてリソースが限られてしまい、XMへと市販化を譲り消滅することに

BMW-i16
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| たしかに当時、「スポーツカーを発売する」という選択を行うことは難しかっただろう |

しかし長期的にブランド価値を向上させることを考えるならば、やはりスポーツカーを投入したほうが良かったのかも

さて、BMWは「久々の」「史上2台目の」M専売モデルとしてXMを発売していますが、期待されていたM専売モデルがスポーツカーではなくSUVであったことに違和感を覚えた人も多いかと思います。

BMWは「SUVを選んだこと」につき、「BMWには、AMGやRSに対抗できるハイパフォーマンスSUVが存在せず、それらへの対抗が急務であった」と(XM発表時に)述べていますが、今回はまた別の側面から「なぜスポーツカーではなくSUVがMモデルとして選ばれたのか」が語られることに。

BMWはi8の後継モデルを検討していた

今回「秘話」が明かされたのは書籍「BMW By Design」およびその著者であるスティーブ・サクスティ氏に対するインタビューからで、同氏によると「i8の後継として”i16”が検討され、ほぼ完成に近づいていたが、土壇場でプロジェクトが中止された」。

BMW i8が登場したとき、そのスタイリングやコンセプトは高く評価されたものの、一部では「そのスタイリングを支えるだけのパワーが足りなかった」という意見が聞かれ、そこでBMWが考えたのが「560馬力を誇る後継モデル、i16」。

BMWのデザイナーが「i8の後継モデルとなるはずだった」コンセプト、I16を公開。「コロナによって世界が変わってしまい、同時に我々の歴史も変わりました」
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スタイリングやハイブリッドパワートレーンを進化させ、スーパーカーにふさわしい性能、そして「ビジョンMネクスト」コンセプトに近いデザインが与えられたクルマです。

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Image:BMW

「ビジョンMネクスト、あのオレンジ色の車を覚えているかもしれません。しかし、私たちが知らなかったこと、そして本で公開してうれしかったことは、実際に生産に向けて95%完成していたということです。それがi16プロジェクトです。」

「BMW By Design」著者 スティーブ・サクスティ

このi16はデザイン的に「クラスA」と呼ばれるサーフェス仕上げを持っており、すべての面が「成熟していた」と説明され、表面下にはかなりの技術的な進化が反映されるとともに、ボディおよびエンジニアリング面においてもかなりの手が加えられていた、とのこと。

「このクルマのアイデアは、i8の基本を受け継いで、例えばウィンドウ形状がi8由来で、しかし新しいドアスキンが使われるなど”進化”を映し出しています。そして、i8の中身をそのままに、エンジンを三気筒ではなく、四気筒に変更していました。」

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Image:BMW

コロナウイルスが全てを変えてしまう

スティーブ・サクスティ氏によると、BMWはコロナウイルスのパンデミックによるロックダウン時に”M部門のリソースに関する決断”を下さなければならなかったと述べており、具体的には「i16を作るか、XMを作るか」という二者択一。

結果として実際に市場に出たのはXMであり、i16は姿を現すことはなく、しかし当時の状況や市場を考慮するならば、BMWが間違った選択をしたと断じることはできず、というのも消費者はクーペよりもSUVあるいはSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)を購入したがる傾向があったから。

実際、XMは発売当初は好調なセールスを記録しており、ただしその後は大きく落ち込むこととなっていて、現時点では「後継モデルはない」とも言われていますが、おそらくXMはこのまま忘れ去られてしまい、何年か後に「XM」と耳にしても、それがどんなクルマであったのかを思い出すことは難しいかもしれません。

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一方、仮にi16を市場に投入していたならば、XM同様に「トータルでは」さほど数が出なかったかもしれませんが、もしかすると人々の記憶に(M1やi8同様に)残ることとなり、「M」のブランドバリューを高めていた可能性もあり、ここが「なんとも難しいところ」でもありますね。

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