
| M3とM5との「後部ドアとリアフェンダー」はツライチではなく段差がある |
やはりBMWは「議論を呼ぶ」デザインが大好きである
BMWの現行M3およびM5は非常に高いドライビングパフォーマンスを持つ反面、デザイン面では賛否を呼んでいるのもまた事実。
「ジャンボキドニー」はもちろんのこと、特に物議を醸しているのがリアドアまわりの造形です。
ちょっと言葉では説明が難しいのですが、たとえばM3のリアフェンダーは「明確な段差」をもって盛り上がっていて、後部ドアとのデザイン的(ライン的)連続性がなく、誤解を恐れずに言えば「取ってつけたかのような」リアフェンダー。※画像ではわかりにくいが、肉眼だと相当な違和感がある
Image:BMW
■「レーシングカーのように見せるためのデザイン」
多くのファンが「フェンダーの膨らみに合っていない」と感じるリアドア(とリアフェンダー)形状を、BMWはなぜそのままにしているのか。
BMW M部門のトップ、フランク・ファン・ミール(Frank van Meel)氏によれば、それは単なるコスト削減や設計上の妥協ではなく、「Mカーらしさ」を強調するための意図的なデザインだということがインタビューによって明らかになっています。
妙ちょっとこのリアフェンダーについて説明しておくと、現行のG80型M3だと、通常モデルに比べてリアフェンダーが大きく張り出しているのですが・・・。
その一方で、リアドアは標準の3シリーズと共通のままで、フェンダーとの境目に段差が生まれています。
これは一見すると「コストダウン」のようにも感じられ、「3シリーズと同じドアを使用するからこういった不整合が生じるのであって、せっかくのM3なんだから専用のドアを使用してきっちりツラを合わせてよ・・・」と考えてしまうわけですね。
ただ、この不均衡とも思える造形について、ファン・ミール氏はこう語っています。
「M3の魅力のひとつは、“リアアーチを引き出している”ところにあります。デザイナーからは『専用ドアを作りたい』という声もありましたが、私は“ノー”と言いました。お客様も、私自身もそれを望まないのです。」
その理由は、レーシングカーのような“力強さと緊張感”を生む造*にあるといい・・・。
「もし車体が25mmワイドになり、ドアとの間に明確な差があると、それがレーシングカーのような雰囲気を生み出します。それがM3をクールに見せる要素なんです。滑らかさよりも“パワーが見えること”が大事なのです。」
そう言われると、たしかにこの「不自然な段差」は、レーシングカーによく見られる「ベース車両に貼り付けた」オーバーフェンダーのようにも見えますね。※実際のところ、ぼくがはじめて現行型M3を見た時に注意を惹かれたのがこのリアフェンダーとドアとの不整合であった
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■M4にはない“M3らしさ”
ただ、興味深いのは、M3と同じプラットフォームを使うM4クーペでは、この段差が存在しないこと。
2ドアであるM4は、リアフェンダーをボディ全体に自然に溶け込ませたデザインを採用しており、より一体感のある仕上がりとなっているわけですね。
それでもBMWは、4ドアセダン/ツーリングのMモデルにおいては、あえて“違和感”を残すことを選んでおり、これは、Mブランドの核である「ロードカーとレーシングカーの中間」という哲学を視覚的に表現したものだといえるのかもしれません。
そしてこういった演出を考慮するならば、「M3のほうがM4よりもマニアック」であると考えることもでき、ぼくがもしM3あるいはM4を購入する機会があれば(たぶんないと思うけど)M3のほうを選びたい、とも考えています。
参考までにですが、こういった「違和感の演出」はフェラーリにも見られ、たとえばローマと12チリンドリの「ドアとリアフェンダーとの関係性」も同様です。
ドアは「平面(二次曲面)」、そしてスマートに前後に伸びるものの・・・。
リアフェンダーは「球状(三次曲面)」に盛り上がってドアとは全く異なる質感を演出していますが、これはもちろん「後輪の生み出す、ほとばしるパワー」を演出したものだと捉えています。
12チリンドリだとドアとフェンダーとの”落差”を強調するかのように、ドアには直線を用いたプレスラインが入っていて、これもなかなか写真では表現できずに恐縮ですが、最近のクルマはこういった「画像では伝わりにくい」表現を持つものが増えており、これは「デザインや製造技術が進歩し、いままで表現できなかったことが実現可能になった」ためだとも捉えています。※よって、実車を見るまではその外観の評価を行うことは難しい
■次期M3は“ノイエクラッセ(Neue Klasse)”デザインへ
現行M3のデザインが好みでないファンにとっては朗報もあり、次世代モデルとされる「G84型M3」は、2027年末から2028年初頭に登場予定だとされ、これはBMWの新世代デザイン哲学「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」を採用すると報じられています。
Image:BMW
この新デザイン言語では、エアロダイナミクスやプロポーションの最適化が重視され、従来の「筋肉質」な造形から一歩進んだ未来的かつ先進的なスタイルになる可能性があり、現行M3の「野性味あふれる」デザインから「洗練された」スタイリングとなるのかも。
それでも、Mブランドが大切にしてきた“走りの力感を見せるデザイン”という根幹はおそらく変わることはなく、そして次期M3にも盛り込まれるであろう「演出」にも期待したいと思います。
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