7世代目となる新型BMW5シリーズ(G30)に試乗。
グレードは「523d」、つまりディーゼルモデルですね。
日本だとBMWとディーゼルとのイメージ的結びつきはあまり強くないようには思いますが、欧州ではBMWにおけるディーゼル比率は70%に達する、とのこと。
試乗車のスペックは下記の通り(試乗車のグレードはLuxury)。
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼル 1,995cc
最高出力:190馬力
トランスミッション:8速AT
価格:698-766万円
サイズは全長、全幅とも拡大していますが、全高についてはほぼ前モデルと同じ。
これは先にモデルチェンジを迎えた7シリーズと同様で、ヘッドライトやテールランプが横長になり「ワイド感」を強調しているのも同様。
新型5シリーズのテーマは「ビジネスアスリート」ですが、まさに筋肉質のビジネスマンを連想させる外観でもあります。
現行世代のBMWは上品でいてダイナミックなルックスを持っていると思いますが、最新の5シリーズではそれがさらに進化しているという印象。
なお、かなり直線的、かつ明確なプレスラインが設けられているのも特徴で、そのためボディカラーはメタリック、しかも濃い色の方が似合うのかもしれません。
実際のところボディカラーは22色用意されていますが、その中でソリッドは「ブラック」「アルピンホワイト」の2色のみ(アルピンホワイトが無くなると暴動が起こりそう)。
他は全てメタリックカラーになりますが、かなり濃いめのメタリックが多いようですね。
ぼくはBMWにはもともと深いブルーがよく似合うと考えていますが、久々にブルーの似合うBMWが出てきたなあ、と考えています。
新型5シリーズについて、装備としてはドライビング・アシスト・プラス、パーキング・アシスト・プラスなど安全装備やドライバーズエイドが充実しているほか、4輪操舵システム、インテグレイテッド・アクティブ・ステアリングも。
いずれも最新世代のものとなっており、7シリーズよりもさらに進んだロジックを持つデバイスもありますね(自動運転など)。
さて実際の試乗ですが、車に乗り込んでドアを閉めると外界の音がシャットアウトされ、いかにも機密性の高そうな雰囲気に。
実際に隣に座る営業さんと話をするときも、ショールームにいるときよりも小さな声で話さないと「声が大きすぎる」と感じるくらい。
それはエンジンを始動させて実際に走り出した時も同様で、ディーゼルというのが信じられないほど車内は静か(ただし外からエンジン音を聞く限りでは結構”ディーゼルっぽい”音を出しており、ということは室内が非常に高い遮音性を持っていると思われる)。
回転数が上がるとややインジェクターの音が聞こえはしますが、相当に静かな車内と言って良いでしょう。
ぼくが特に気に入ったのはその静粛性はもちろん、それに見あったしなやかな足回り。
BMWというとスポーティーさを強調したためにやや硬め、特に初期のあたりがキツいサスペンションというイメージがありますが、この5シリーズではしなやかで快適そのもの。
ライバルであるアウディやメルセデス・ベンツよりも柔らかく、レクサスに近い、という印象です。
それでいてボディの剛性感を感じさせるしっかりしたセッティングで、カーブでもほぼロールせずにすっと曲がります。
これには4輪操舵も貢献していると思われ、ほぼ5メートルに迫ろうという全長にもかかわらず、狭い交差点であってもちょっとステアリングホイールを切るだけで思ったように曲がりますね。
ステアリングホイールというとセンター付近にかなり余裕を持たせており、普段センターがシビアな車に乗り慣れているぼくとしては「これで大丈夫か」と思ったほどですが、実際に新型5シリーズを運転してみると「曖昧」な印象はなく、センターは緩いのにステアリングを切り始めるとしっかり曲がるのには驚き。
おそらくセンターの余裕については「車の性格」を考えたもので、ドライバーに無用な神経質さを感じさせないためのものと思われます。
アクセル操作に対して忠実な反応を示すのも好印象で、アクセルを踏むとディーゼルならではのトルクにモノを言わせてぐっと加速。
ディーゼルだからといってスポーツ性を損なっているわけでもなく、ドライブモードを「スポーツ」に入れるとレスポンスが一気にシャープになり、大排気量自然吸気エンジンのようなフィーリングになりますが、この辺りドライブモードをかなり早い段階から取り入れていたBMWが「1日の長」を発揮している部分かもしれません。
とにかく「車体が軽い」というのが第一印象で、それはアクセル、ハンドリング両方に言えること。
現代ではエンジンやサスペンション、ステアリングなど様々な部分が「電子制御化」されていますが、それによるメリットを最大限に引き出しているようでもありますね。
なお加速やハンドリングについてはエフィシエント・ライトウエイト・コンセプトによって大幅に軽量化された(最大で140キロ)車体重量も大きく関係していると思われますが、今回の新しい5シリーズに関しては「3シリーズの軽快さ」と「7シリーズの安定性、快適性」を併せ持った車、とも評することができると思います。
室内に関してもこれまでの5シリーズに比べて質感やデザインが向上しており、スポーティーかつ上品なイメージ。
「ドライバーを中心にデザインされた」とのことですが、センターコンソールはドライバー側に傾けられ、スイッチ類も7シリーズ同様に金属調の加飾つき。
室内においてぼくが強調しておきたいのは「シート」。
BMWは元来シートに使用するレザーが硬く(これまでもクッションも大柄なドイツ人に合わせているのか硬め)、イマイチ座りが悪いことが多いのですが、5シリーズのシートは体がシートに沈み込み、その上でしっかりサポートしてくれるという印象。
正直なところ「非常に優れているシート」と言って良いでしょうね。
総合的に考えると、新型5シリーズはBMWがこれまで力を入れてきた電子制御、軽量化技術の「集大成」とも言える車であり、それらが高い次元でバランスした車と考えられます。
ゆっくり運転すると上位の7シリーズに匹敵する快適性をもたらし、一度エンジンに鞭を入れると3シリーズ並みの俊敏性を発揮するという印象ですが、アクセル(エンジン)、ステアリング、サスペンションの統合制御がとにかく素晴らしい一台ですね。
これまでのBMWというとちょっとモッサリした印象があり、かつて掲げていたスローガン「駆け抜ける歓び」もよく「ぶち抜かれる歓び」と揶揄されたものですが、この新型5シリーズは正真正銘「駆け抜ける歓び」を持っている、と断言できます。