| 将来的に思考によってクルマをコントロールできるようになると便利だが、雑念や直情が入るとむしろ危ないのかも |
もともとこのインターフェースは身体障害者の自律補助のために開発されたもの
さて、メルセデス・ベンツは2020年にラスベガスにて開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)にてコンセプトカー「Mercedes Vision AVTR(メルセデス・ヴィジョン・アバター)」を公開していますが、今回はミュンヘン・モーターショー(IAA)にその実車を持ち込み、来場者に対して「脳波でクルマをコントロールする」という体験を提供しています。
なお、このメルセデス・ヴィジョン・アバターは映画「アバター」に登場する惑星パンドラとその生態系をモチーフにしたコンセプトカー。
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使用するのはブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)
ヴィジョン・アバターのコントロールには「ブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)」を用いるそうですが、これはドライバーが自分の思考で車両のいくつかの機能をコントロールできるようにするもの。
実際にこのクルマをコントロールするには、脳波を読み取るヘッドギアを装着し、その後にコンセプトカーのダッシュボード上にあるライトを見て、それに集中するという1分程度のキャリブレーションテストを実行するそうです。
そしてBCIは、その脳波パターンとダッシュボード上の位置(例えば、自動駐車支援機能)を関連付け、2つの情報をリンクさせるといいますが、このプロセスはまさに劇中にて自身と「アバター(分身)」とを同期させたり、パンドラ星人と現地の生物とを「髪の毛や触覚経由で」リンクさせる方法にそっくりですね。
メルセデス・ベンツによると、このイベントでの体験では、車を充電するための駐車スペースを選択したり、インフォテインメントシステムと対話したり、システムに含まれる仮想世界で植物を育てたり、仮想世界の中で風を起こしたり(?)することができるといいますが、まだまだクルマを(脳波で)運転するところまでは行かないのかもしれません。
ただ、このBCIは、身体障害者の自立支援を目的に開発された技術だといい、測定した脳波を読み取り、タスクと関連付けることができるそうなので、今後は何らかの機械やクルマを動かせるようになるのでしょうね。
メルセデス・ベンツの販売部門責任者であるブリッタ・シーガー氏によると、「BCI技術は、将来的に運転の快適性をさらに高める可能性を秘めています。BCI技術は、音声や触覚とは完全に独立して動作します。これにより、車両との直感的なインタラクションに革新的な可能性が生まれます」とコメントしており、実用化されれば同氏のコメントの通り、大きな可能性が生まれることになりそうです。
メルセデス・ヴィジョン・アバターはこんなクルマ
このメルセデス・ヴィジョン・アバターは上述のとおり映画「アバター」にインスパイアされたクルマではありますが、環境に優しい未来的のテクノロジーとワイルドなデザインを融合させたことが特徴で、もちろん「ピュアエレクトリックカー」。
有害で高価な金属を使用しない”グラフェン”ベースの有機細胞化学を用いた110kWhのバッテリーパックを搭載し、わずか15分で充電でき、1回の充電で434マイル(700km)の走行が可能とされています(モーターは各輪に1つづつ内蔵される)。
カルーン(容易に入手可能な素材であるラタンから作られた木材)や、リサイクルされた衣類やペットボトルで作られたシートなど、持続可能な素材が多用されていることも特徴のひとつですが、視覚的なハイライトはリアにある33枚の「エラ」。
これは後ろ側にも前側にも横にも自由自在に開く構造を持っており、生物が呼吸するかのように動くことで「クルマそのものが生命体のように」見せる効果があります。