| 通常走行の範囲であれば、突如この破断によってコントロールを失うようなことはないものと思われる |
今のところ、対策パーツの手当には時間を要するもよう
さて、ポルシェがカレラGTにリコールを届け出。
カレラGTはポール・ウォーカーが事故死した際に乗っていたクルマとしてその名が大きく一般にも知られることになりますが、現在「もっともピュアでアナログなスーパーカー」としてその価値を大きく上げています。
当時のライバルであったエンツォフェラーリがセミオートマチック・トランスミッションを有していたのに対し、カレラGTでは6速マニュアル・トランスミッションのみという設定であり、搭載されるエンジンはダウンサイジングターボとは無縁の5.7リッター自然吸気V8。
ただしそのアナログさが(当時は)先進的ではないと評価されてしまい、そのために1500台の予定生産台数を消化できず、2003年に発売された後、3年を経過し1,270台を生産した時点で生産が打ち切られることとなっています。
カレラGTに出されたリコールはこんな内容
そこで今回ポルシェが届け出たリコールですが、1,270台のうち(いくばくは廃車になっているとは思う)489台が対象となっており、内容としては以下のとおりです。
該当するカレラGT車のフロントおよびリアアクスルのウィッシュボーンサスペンションコンポーネントを接続するボールジョイントが、ポルシェの定める耐用年数の期待値を満たしていないことが判明しました。使用されている材料(X46Cr13)は、耐用年数中に塩分と機械的ストレスにさらされた場合、粒界応力腐食に対する十分な抵抗力を発揮できない可能性があり、そのため、ボール接合部や、場合によってはウィッシュボーンに亀裂や破断が生じる可能性があります。
ポルシェはこの問題について、いきなり破断したりサスペンションアームが車体から外れることはないとしており(ボールが砕けたとしてもボルトが貫通しているはずだと思う)、まず問題が生じれば振動やノイズによってトラブルが発生したことに気づくとしています。
ただ、そういったトラブルは事前に知ることができるものではなく、よってポルシェは今回489台のカレラGTをすべて回収することとしたわけですね。
問題をポルシェが最初に認識したのは2019年8月
なお、ポルシェが最初にこの問題を認識したのは2019年8月だといい、(この部分とは無関係の)点検にて持ち込まれたカレラGTにて偶然「ボールジョイントに複数の亀裂」が入っていることを発見し、しかし今回のリコール実施にまで時間を要したのは「調査に必要な、当時カレラGTに使用されたものと同じパーツを調達することが困難であった」からだといい、しかしようやく原因が究明できたということになりそうです。
しかしながらリコールに際しても「部品調達の難しさ」が影響しているようで、リコールが二段階に分けて実施されることも公表されており、まず第1段階は「現状、安全に運転できるかどうかの検査」を行い、しかしトラブルもしくはその兆候が見られた場合は「新しいパーツが届き、修理が完了するまで運転を中止しなければならない」ようですね。
この「パーツが届くまで」にどれくらいの時間を要するのかは現段階で公表されておらず、しかし対象となるカレラGTを所有するオーナーには6月末までになんらかの通知が届けられる、と報じられています。
通常のクルマであれば(たとえそれがスポーツカーだとしても)、サスペンションアームやショックアブソーバーの取付部は「ブッシュ」を介して取り付けられ、これによって振動や衝撃を吸収することができるのですが、カレラGTのような「レーシングカーに準ずるスーパーカー」の場合はそういったブッシュなしにピロボールを用いてダイレクトに取り付けられており、これによってレーシングカーのような正確無比なハンドリングを実現できる反面、路面からの衝撃や応力を吸収することができずに今回のようなケースに至るのだと思われ、まさに諸刃の刃だと言えそうですね。
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参照:Autoblog