| EVは燃えてしまうと検証ができず、かつこれから何年、何十年先に「何が起きるか」わからない |
ある意味では自動車メーカーも「未来に爆発するかもしれない」爆弾を抱えていると言っていい
さて、ポルシェが「特定モデルのタイカンを繰り返し過充電すると、バッテリー モジュールの劣化につながる可能性があり、ひいては高電圧バッテリー システムが火災を引き起こす可能性がある」として米国で205台のタイカンにリコールを届け出。
なお、この問題は実際に「ユーザーのタイカンに火災が発生した」ことから明るみに出ることとなっており、しかしまだポルシェは根本的な原因を特定できていない、とも発表しています。
参考までに、日本でもポルシェ・タイカンのバッテリーに関するリコールが届け出られているものの、今回のリコールとはやや内容が異なるようですね。
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火災が発生したのはいずれも「充電開始直後」
ただし原因を特定できずとも、いくつかの事実が判明しており、まずは発生した複数の火災のいずれもが「充電直後に発生したこと」。
最初にこの問題が起きたのは2021年だそうで、そこからポルシェは調査を開始し、問題が発生していないバッテリーパック含めて検証を行うことになりますが、2023年にはさらに2件の問題が生じていて、継続した調査で導き出されたのは「過充電を繰り返すと、場合によってはバッテリーセルが損傷し、最終的にはショートにつながる可能性があるのではないか」という推論です(燃えてしまった車両はなんとも検証のしようがないのがEVのトラブル究明における難しいところでもある)。
上述のとおりポルシェはまだ正確な原因を突き止めていないものの、実際に走行する車両からリアルタイムでバッテリー性能をモニタリングしつつ、機械学習を利用してこの問題の影響を受ける可能性のあるタイカンを抽出しており、それが今回のリコール対象であるということになりますが、今後の調査結果次第ではさらにリコール対象が拡大するのかもしれません。
ポルシェは、2月9日からオーナーに対しメールで連絡する予定と報告しており、車両を回収した後にバッテリーを検査し、そこで「危険な可能性」が見つかったバッテリーモジュールは無料で取り外して交換されることになるほか、すでに「実費で」モジュールを交換するために料金を支払ったオーナーについては払い戻しを受けることができるのだそう。
ポルシェ・タイカンのオーナーが「発火の兆候や条件」を知ることはかなわない
なお、この「発火」については事前になんら兆候がなく、かつ警告灯による通知もないとされるので、オーナーとしては「なんとも対策し難い」ということになり、そしてポルシェにとっても原因がわからないだけに根本的な対策ができないという状況なのだと思われます。
そしてこれはEV全般に言えることではありますが、開発や検証を行った期間や走行距離に比べて「発売したのちにEVが走る距離、これから過ごす時間のほうがずっと長い」という事実があり(ガソリン車であれば、新しいコンポーネントであろうとも使用している基礎技術に歴史がある)、よってこれからどういった問題が発生するかわからないという「未知の領域」に突入することになるため、自動車メーカーにとっても潜在的なリスクを内包していると考えていいのかもしれません。
参考までに、現時点で問題があるとされているタイカンは以下の通り。
- 2021年 ポルシェ タイカン ターボ クロス ツーリスモ
- 2021-22年 ポルシェ タイカン ターボ
- 2021-22年 ポルシェ タイカン ターボ S
- 2021-22年 ポルシェ タイカン 4 クロスツーリスモ
- 2021-22年 ポルシェ タイカン 4S
- 2021-22年 ポルシェ タイカン 4S クロスツーリスモ
- 2022年 ポルシェ タイカン GTS
- 2022年 ポルシェ タイカン GTS スポーツツーリスモ
- 2022年 ポルシェ タイカン ターボ S クロスツーリスモ
- 2021-23年 ポルシェ タイカン