｜ かねてよりポルシェの中国での販売は「苦しい」と報じられていたが ｜
この記事のポイント
- 異常事態：鄭州や貴陽のポルシェ・センターが突如閉鎖。展示車が消え、顧客の預託金やメンテナンス代が未返還に
- 利益99％減の衝撃：2025年第3四半期までの営業利益が4,000万ユーロ（前年比-99%）まで大暴落
- 中国EV勢の猛追：Xiaomi SU7やBYDなどの台頭により、ポルシェの「技術的優位性」が失われつつある
- 販売網の縮小：2026年末までに、中国国内の販売拠点を現在の約半分（80拠点）まで削減する計画
一夜にして「空」になったショールーム。現場で何が起きているのか？
かつては成功者の証だったポルシェがいま中国でかつてない苦境に立たされている、というニュース。
2025年12月も終わりに差し迫ったいま、河南省鄭州（Zhengzhou）と貴州省貴陽（Guiyang）のポルシェ販売店、そしてフォルクスワーゲンのディーラーから「クルマが一夜にして運び出され、スタッフが姿を消した」という衝撃的な事実が報じられています。
被害を訴えるオーナーたちは数十万円から数百万円単位のデポジット（予約金）や、前払いのメンテナンスパッケージを支払ったまま「連絡が取れない状態」に置かれているといい、この事態を受けてポルシェ・チャイナは12月25日に公式に謝罪し、警察と協力して調査を進めていると発表したとされているものの、現場の混乱は収まっていない、というのが現在の状況です。
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数字で見るポルシェの「崩壊」
ポルシェにとって最大の市場だった中国が、今や「最大の負債」へと変わりつつあり、「ポルシェの成長を牽引してきた」中国がいまや「ポルシェの足を引っ張る」存在に。
その理由は単に「売れなくなったから」で、売るために値引きを行わざるを得ず、そしてその値引き分をポルシェの中国法人が各ディーラーに対して「補填」していたことが報じられ、一時は「中国撤退」というウワサも流れています。
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中国市場の急減速と経営への打撃
| 項目 | 2021年（ピーク時） | 2025年（現在） | 変化率 |
| 中国国内販売台数 | 約 95,000 台 | 約 32,200 台 (1-9月) | -26% (前年比) |
| グローバル営業利益 | 約 50億〜 ユーロ規模 | 4,000 万ユーロ | -99% (前年比) |
| 販売拠点数（中国） | 約 150 拠点 | 80 拠点 (2026年末目標) | 約 50% 削減 |
営業利益が「99％減」という数字は、もはや一時的な不調ではなく、構造的な危機であることを示しており、この原因の多くが中国にあることも示されていますね。
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なぜ、ポルシェは選ばれなくなったのか？
ポルシェが中国で直面しているのは、単なる景気後退によるものだけではなく、そこには「消費者の価値観の劇的な変化」が存在します。
- 「ハイテク」への敗北：中国の富裕層は今、伝統的な「走りの質」よりも、巨大なディスプレイやAI、自動運転機能を重視しています。Xiaomi（シャオミ）のSU7やBYDの高級車に対し、ポルシェのインフォテインメントシステムは「時代遅れ」と映っているのが現実です。
- 高価格戦略の限界：ライバルが大幅な値下げ競争を繰り広げる中、ポルシェはブランドイメージを守るために「（表向きでは）値引きなし」を貫くことに。これが裏目に出て、合理的な判断を下すようになった消費者が次々と国産EVへと流れています。
- ディーラー網の崩壊：今回「夜逃げ」が報じられたのは「東安控股集団（Dong’an Holdings）」という大手ディーラーグループの店舗。販売不振による資金繰りの悪化が、ついに正規販売網の連鎖破綻を招き始めたのだと見られています。
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昨年、シャオミは中国のみで10万台のSU7を販売し、一方ポルシェは全世界でタイカンを21,000台販売したのみ。もはや消費者は「ポルシェを高く、時代遅れ」だと評価？
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高級車の定義が書き換わる2026年へ
ポルシェ・チャイナのCEO、潘励馳（Pan Liqi）氏は、現在の約150拠点から2026年末までに約80拠点まで販売網を絞り込む「縮小均衡」の戦略を明かしており、これは数で勝負するのではなく、効率とブランド価値を再定義しようという苦肉の策。
しかし現地で報じられる「展示車が消えたショールーム」の映像はブランドへの信頼を大きく損なったことは間違いなく、ドイツの伝統が中国のデジタル革命に飲み込まれようとしている今、ポルシェは再び「憧れの象徴」に戻ることができるのかどうかに期待がかかっています。
そして現在の状況は、「スポーツカーのメートル原器」と言われる911を抱え、ル・マン24時間レースでも最多優勝回数を誇るポルシェが、クルマの機能でもエースにおいてでもなく、主に「インフォテイメントシステム」の遅れによって敗北を喫するという状況が「まさに今の自動車業界」を示しているのかもしれません。
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そしてこの問題はポルシェ一社に留まらず、親会社であるフォルクスワーゲンも中国でのEV販売が2024年比で34%減少するなど「同様の苦境」にあることが報じられています。
欧州メーカーは、もはや「エンジン車時代の栄光」を捨て、ソフトウェア中心のクルマ作りへ根底からシフトしなければ、中国市場での生存は不可能なのかもしれません。
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参照：CarNewsChina
