| 株式公開の道も残されているものの、今回は本当にヤバそうだ |
米ブルームバーグによると、フォルクスワーゲンが、所有するランボルギーニブランドの売却を検討している、とのこと。
なお、過去にこの話は何度か出ているものの、どうやら今回は「かなり本気」のようで、ちょっとヤバイんじゃないかとも考えています。
売却の理由としては、今後エレクトリックへとシフトするにあたり多額の投資が必要になるため、その投資を「フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェに集中させるから」だとされていますが、それに加えてV12/V10エンジンにこだわり続けるランボルギーニはグループ全体のブランディング上「邪魔」だとVWが考えていることも売却を検討している原因なのかもしれません(たとえばブガッティは売却の話が出ていない)。
ランボルギーニはようやく安心できる場所を見つけたところだった
ランボルギーニはこれまでに7回オーナーが変わっているものの、現在のフォルクスワーゲングループに落ち着いた後は安定して成長を遂げており、とくにウルス発売後は「前年比の倍」という破竹の勢いで伸びています。
つまりランボルギーニは「儲かってない」わけではなく、逆に「非常に儲かって」いて、にも関わらずフォルクスワーゲンが「売却を検討している」ほかの理由としては「今のうちに売っておきたい」というものもあるのかもしれません。
今後やってくるであろうエレクトリック時代においてランボルギーニは強みを発揮できない可能性もあり、将来的には価値が下がる懸念をはらんでいて、そのために「売り急いでいる」のかも。
ランボルギーニの「株式公開」も選択肢の一つ
そして今回の報道では、フォルクスワーゲンは、ランボルギーニを「売却」する以外の選択肢として、株式公開(IPO)も考えている、とも報じられています。※これも今年のはじめにウワサとして報じられている
この株式公開はフェラーリが成功させた後、各スーパーカーメーカーが現実として捉え始めており、アストンマーティンが実際に株式を公開したほか、マクラーレンもこれに言及しています。
なお、ランボルギーニが株式を公開するとなると1兆2000億円程度の市場価値になると見られ、これはフェラーリが株式公開を行った際と同じ額。
そしてフェラーリはその後も株価を上げ続け、現在の時価総額は3兆3000億円ほど。
つまりは3倍になったということで、もしランボルギーニが今後も成長を続けることになるのであれば、フォルクスワーゲンはランボルギーニを上場させることでまずは1兆2000億円もの資金を手にすることになり(実際は銀行などにも株を割当てたりすることになり、すべての株式を売却するわけではないので、この限りではない)、その後も株価が上昇すれば、チョコチョコと株式を放出することでお金が継続的に入ってくるわけですね。
ただ、これは「ランボルギーニが成長する」という前提のものであり、フォルクスワーゲンは「ランボルギーニは今がピーク」と考えれば売却となるでしょうし、まだまだ伸びるとなれば株式公開を選択するかもしれません。
ただ、売却となっても、ランボルギーニほどの規模を持つ会社を購入できるところはそうそうなく、かつ大きなグループはどこも「エレクトリック」重視なのでランボルギーニには価値を見いださない可能性も(BMWが”M1”を開発したときのように、ランボルギーニ買収に興味を持つ可能性がないとは言えないが、BMWもはやりエレクトリック偏重ではある)。
ランボルギーニがフォルクスワーゲングループを離れるとどうなる?
そして気になるのが「ランボルギーニがフォルクスワーゲングループを離れた後」。
現在、ランボルギーニのクルマはアヴェンタドールを除き、ウラカン、ウルスともにアウディとのパーツ/コンポーネント共有率が高く、それによって研究開発費、製造にかかるコストを抑え、高い性能のクルマを(単独で開発するのに比較して)安く販売できている、ということに。
そのため、フォルクスワーゲングループの後ろ盾を失えば、研究開発、製造ともに大きな負担としてのしかかることになり、クルマの性能が他社に比較して優れないといった事態や、価格そのものが割高になるといったことも考えられます。
もちろん、フォルクスワーゲンから離れたとしても、何らかの契約によって技術やパーツの供給を受けることは可能ではあるものの、それでも現在のような自由度を失うことになり、「その後」のことを考えるとやはり不安ではありますね。
香港や中東の投資ファンドがランボルギーニを購入し、ランボルギーニを「単独で」存続させる可能性もないとは言えないものの、その場合もランボルギーニにとっての未来が明るいとは思えず、ランボルギーニが生き残るには、フォルクスワーゲングループ内にて「足並みを揃えてエレクトリック化」を行い、大きな利益を稼げるブランドへと進化し、加えてIPOにてフォルクスワーゲンにとっての「金のなる木」となる以外には無いのかもしれませんね。
VIA:Bloomberg