| 一方、スバルは異常な強さを見せる |
さて、何かと対象的だと言われるマツダとスバル。
何が対照的かというと、マツダは競争の厳しいコンパクトカー市場に重きを置き、これまた競争が厳しいSUV市場も重視しています。
加えて「プレミアム」路線を追求していて、高価格化を推し進めていることでも知られます。
さらにはSKYACTIV-Xなど、自社による新技術の開発にも熱心で、トヨタの力を借りずにEV「MX-30」を発表していますね。
一方のスバルは、コンパクトカーやSUVという競争の厳しいカテゴリからは距離を取っていて、基本的には「ワゴン/4WD/水平対向エンジン」という独自路線を突き進むことに。
ハイブリッドやピュアEVなどエレクトリック化、そのほか自動運転など新技術についてもコストをかけず、「必要になれば他社から技術を買う」というスタンス。
ただしマツダとスバルに共通しているのはシェアが小さいということ、そして独自の価値を模索している、ということ。
ちなみにマツダ(北米)は「スバルをベンチマークとする」というコメントを発していますね。
マツダ各車はこんな販売推移をたどっている
そこでふと気になったのが、マツダとスバル各モデルの販売推移。
数字は日本自動車販売協会連合が公開しているデータから拾ってきたものですが、ベスト50までしか公開されていないので、発売中のモデルであっても50位以内に入っていないと数字を拾うことが出来ません。
それでも拾える部分で拾ってみたのが下記の表で、順に状況を見てゆきたいと思います。
まずはCX-3ですが、これはベスト50に入ったり入らなかったり。
平均すると1000台ちょっとという販売台数ですね。
2019年10月にはCX-30が発売されていますが、それ以降は一度もベスト50に入っておらず、つまりはCX-30に食われたということがわかります。
両者の価格差はボトムだと27万円くらいしか無く、しかしその装備を見ると「誰だってCX-30買うわ・・・」という内容でもあり、むしろCX-3が販売され続けているほうが謎。
そしてCX-5は「ずっと下がってきている」という印象ですが、2019年12月の赤いセルのところでマイナーチェンジが入っていて、AWD車のトラクション性能が改善され、その他遮音性能が向上したり、特別仕様車が追加されたり、新ボディカラーが追加されています。
その甲斐あってか翌月から販売が伸びており、マイナーチェンジの効果があった、と言えそう。
CX-8についても下降トレンドが続いていて、2019年10月(赤いセル)にマイナーチェンジが入るも、こちらはCX-5とは違ってその効果がなく、2020年2月だと「前年比で半分」となっています。
なお、CX-5は前年比で-25%くらい。
MAZDA3へのモデルチェンジは「成功」か
ついでアクセラとMAZDA3ですが、これは御存知の通りアクセラの後継がMAZDA3。
MAZDA3は先代モデルのアクセラに比較すると価格がぐっと上がり(ベースグレードで40万円、つまり20%以上高くなった)、マツダは無駄に、かつ身の程をわきまえずに高級路線に走ったと批判を受けることに。
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ただ、この表を見る限りでは、アクセラ時代よりも遥かに売れていて、2019年11月(赤いセル)に、さらに70万円くらい高価なSKYACTIV-Xエンジン搭載モデルを発売。
その翌月には販売を盛り返し、その後もアクセラよりは売れているため、モデルチェンジそのもの、SKYACTIV-Xエンジン追加は成功だったとも言えそうです(ただし息切れ感はある)。
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反面、MAZDA2は「失敗」?
そして次はデミオ→MAZDA2へのモデルチェンジ。
これの結果はアクセラ→MAZDA3へのモデルチェンジほど顕著ではなく、2020年2月のMAZDA2の販売台数は同時期のデミオ比で65%(コロナウイルスの影響も無いとは言えないが、それを考慮しても下がりすぎ)。
なお、同時期で比較するとMAZDA3はアクセラの1.26倍売れているので、MAZDA2のモデルチェンジは「失敗」だったかも。
なお、デミオ時代はそのボトム価格が139万円~、MAZDA3では157万円~。
この価格帯のクルマ、そしてMAZDA2の性格からして、嗜好性よりも価格が重視されるのだと思われ、このセグメントでの「値上げ」は消費者にそっぽを向かれる結果となったとも考えられます。
つまり、CX-30、MAZDA3の「プレミアム」は理解されたものの、MAZDA2ではそうはゆかなかった、ということなのかもしれません。
CX-5、CX-8の落ち込みについては、CX-30やMAZDA3等、新世代商品の出来があまりに良すぎるため、相対的に魅力が感じられなくなった可能性も。
そう考えると、CX-5やCX-8については、モデルチェンジによってその商品力を強化できれば、マツダにとって「おいしい」クルマとなりそうです。
スバルの「強さ」は異常
次はスバルの販売状況。
常にベスト50に入っているのはフォレスターとインプレッサ、そしてレヴォーグが出たり入ったり。
なおWRXは直近数ヶ月になってランキングに姿を見せていますが、これは2019年6月に施されたマイナーチェンジの効果かも(この表では除外している)。
この表を見ると、フォレスターは2019年6月にマイナーチェンジ(赤いセル)を行い、その後販売を伸ばしていて、その後はちょっと落ち着いたという印象。
2020年2月こそは前年比で販売を落としているものの、2020年1月は前年の販売を36%ほど上回っています。
そしてインプレッサも強い動きを見せていて、2019年10月のマイナーチェンジ(けっこう改良の幅が大きかった)以後販売急増。
外観の変更、LEDヘッドライトの一部グレードにおける標準化、アイサイト・ツーリングアシストの全車標準化、さらに内装ではインフォーメーションディスプレイや各部の質感向上などが図られ、これらにもかかわらず値上げ幅はベースモデルでわずか4万円。
スバルは上述の通り「やらないこと」を決めているために余分なコストを投じておらず、よってクルマへの価格転嫁も最小限に抑えていて、消費者にとっては「明朗会計」でわかりやすいメーカーだとも考えています(メーカーの方向性や、消費者にとってのメリットが明確、かつ価格納得性が高い)。
インプレッサにおいては、2020年2月は前年比微減なるも、2020年1月だと前年比で「倍以上」。
こうやって見ると、スバルは非常に少ない車種(プラットフォームも基本的にはSGPに統一)、少ないエンジン、少ないトランスミッションを用いて”わかりやすい方向性の”クルマを作っており、それが消費者によく理解されているために販売が極めて落ちにくい(外敵の影響を受けにくい)メーカーなのかもしれません。