| マツダは「ブランドのDNA保持のため」なんとしてもロータリースポーツを発売したいと考えているようだ |
そしてその夢はおそらく実現に向けて近づいている
さて、マツダが大量にロータリーエンジンに関する特許を出願していることが明らかに。
特許庁によると「特願2021-192163」「特願2021-191944」「特願2021-191943」「特願2021-190157」の4つで、いずれも6月5日〜7日の間に公開されています。
内容としてはいずれも「ロータリーエンジンの燃費性能を向上させる」というところに集約されており、つまりはユーロ7含む厳しい環境規制に対応するためのものだとも考えられ、かつ「2ローター」構造が示されているため、「1ローター」形式のレンジエクステンダーではなく、車輪を駆動するための「動力源」としてのエンジンだとも考えられます(ただし2ローター自然吸気ではトルクが足りないと思われるので、ターボもしくはスーパーチャージャーの装着、あるいはハイブリッドシステムとの併用となる可能性が高そうだが、今回の特許はローターの数を限定していない)。
マツダはなんとしてでも「ロータリースポーツ」を実現?
マツダは世界で唯一ロータリーエンジン(ヴァンケルエンジン)の実用化に成功した会社ですが、そのためロータリーエンジンにかける情熱は想像を絶するものがあり、(RX-8の発売終了とともに)いったんはその灯火が消えたものの、最近になって「レンジエクステンダー」つまり発電機として復活を遂げています。
ロータリエンジンは「ピストンとシリンダーを持つ」エンジンとは全く異なる構造を持ち、低回転時のトルクが薄い、環境性能が高くない、劣化が大きいという課題があるものの、振動が少ない、軽量コンパクトといったメリットがあり、よって動力源として使用する場合は車体を軽量に、そして重心を低く作ることが可能となるわけですね。
そして上述の「レンジエクステンダー」としての使用にも非常に適した特性を持ち、「軽量コンパクト、振動が少ない」ことから場所を取らず、そして静かなEVにはうってつけの内燃機関だとも考えられます。
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しかしながら現代では「環境性能が高くない(つまり燃費が良くない)」ということは非常に大きな問題となり、この課題を解決できないがためにマツダは「ロータリーエンジン搭載スポーツカー」の発売ができないわけですが、今回の特許はその問題解決に踏み込んだものであり、「ロータリースポーツの可能性」「そもそもマツダが(動力源としての)ロータリーエンジンを諦めていない」ということを示すもので、「ロータリーはマツダブランドの伝統として不可欠であり、マツダはそれを存続させたいと考えている」というこれまでのマツダのコメントを裏付けるものと考えていいかもしれません。
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マツダのロータリーエンジンに関する特許はこうなっている
今回の特許は非常に複雑な構造を示しており、つまりマツダはここまでしないと課題を解決できなかったということがわかりますが、大雑把にいうとローターの外周面には、長さ、幅、深さが異なる凹状のカットアウト(各特許で異なるカットアウトデザインが紹介されている)が設けられ、ローターが吸気口や燃料噴射口を通過し、スパークプラグが点火するまでの間にできる燃焼室の大きさと形状を、これらの切り込みによって変化させるというもの。
ひいては、燃焼室の形状が爆発の量に影響するため、点火タイミングのコントロールも不可欠であり、マツダは、"進角点火や点火遅れの期間を短くすることが可能で、燃焼重心を進めることで熱効率を向上させる "ことを可能にしている、とも説明しています。
ローターに設けられたこの凹部の形状は、単に炎の成長を促進するだけでなく、爆発を制御し、ローターが排気フェーズに旋回する前に完全燃焼させ、不完全燃焼に伴って余分な熱や騒音が発生するのを防ぐことが可能となりますが、これはロータリーエンジン固有の「点火ストロークの上死点(TDC)に達したときに曲面が効果的に燃焼室を狭めてしまう」という課題を、曲面の凹みで緩和している(凹みのぶんだけ燃焼室を広げる)と受け取ることが可能です。
これによって混合気の流動性が保たれ、より効率的に燃焼し(不完全燃料を防ぎ)、ガス漏れを低減することができるわけですが、ここが「燃費向上に繋がり」より排ガスをクリーンにするということに寄与するのだと思われます。
マツダはそのほかにもエンジンに関する特許を出願
このほか、マツダは「通常の」エンジンに関する特許も出願しており、6月16日には「エンジンの中負荷運転での熱効率改善要求と高負荷運転でのノッキング抑制要求との両立を図る」という特許も公開されています。
現在マツダはトヨタと深い関係にあり、そのため電動化技術についてはトヨタに頼ることができる(自社で研究開発しなくてもいい)という状況にありますが、そのぶん内燃機関に対する姿勢を強化し、それによってトヨタとの「役割分担」を行うのかもしれませんね。
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