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| レクサスを超越したトヨタの「最上級ブランド」が目指すもの |
センチュリーは「究極の贅沢」を体現する存在、そしてブランドへ
トヨタは50年以上の歴史を持つ日本の最高級セダン「センチュリー」の名を冠した、”レクサスを超える「ウルトラ・プレミアム」な新ラグジュアリー・サブブランド”としての「センチュリー」を発表済み。
そしてこの新ブランドは世界の超高級車市場、特にロールス・ロイスのような伝統的な強豪をライバルとして見据えていることも明かされており、大きな期待が寄せられているというのが現状です。
そこで今回報じられているのが、このセンチュリーブランドが電動化の流れに逆行し「内燃機関(ガソリンエンジン)の搭載を堅持する」という明確な姿勢を示したという事実ですが、EVへの移行が叫ばれる現代において、なぜトヨタの最高級ブランドが「エンジン」にこだわるのかという理由、そしてセンチュリーブランドが内燃機関とともに「究極のショーファーカー体験」を実現しようとする異例の戦略、さらに搭載が予想されるパワートレイン探ってみようと思います。
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要約:センチュリーブランドの「ガソリンエンジン」にこだわる戦略
- EV化を拒否: 新ブランド「センチュリー」のニューモデルには「ガソリンエンジンを搭載する」ことがトヨタ幹部によって明かされる
- 狙うライバル: 目標はロールス・ロイスなどの超高級車ブランドであり、単なる移動手段ではない「品格と伝統」を重視する
- 有力パワートレイン: 搭載候補として、400馬力級の新型ハイブリッド4気筒、そして900馬力超が噂されるV8ハイブリッドが有力視されている
- 市場投入: 最初のモデルは今後2年以内に登場する予定
詳細:「ガソリンエンジンがある」ことへの譲れないこだわり
今回この頼もしい発言を行ったのはトヨタのパワートレイン担当社長である上原貴史氏。
同氏はオーストラリアのメディアに対し、センチュリーブランドにて展開される各モデルに内燃機関が搭載されることを明確に認め、具体的なエンジンの種類は未定であるとしつつも、「はい、ガソリンエンジンを搭載します」と断言することに。
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① なぜEVではないのか?:ショーファーカーとしての「品格」
センチュリーがロールス・ロイスをライバルとするということは、単なる技術的な新しさではなく、「伝統、信頼性、そして後席の静謐さ」といったショーファーカー(運転手がドライブするクルマ)としての絶対的な品格が要求されます。
- 信頼性の重視: センチュリーは「お迎えグルマ」として、出力や燃費よりも信頼性や安全性が重視されてきたという歴史を持ち、内燃機関、特にハイブリッドシステムとの組み合わせは、長距離移動や様々な環境下での揺るぎない安心感を提供
- 伝統への回帰: センチュリーブランドが50年以上の歴史を持つ高級セダンをルーツとしていることから、「エンジンが発する音や振動の制御」も含めた完成された乗り心地を、内燃機関(特に多気筒)で実現することにこだわっている可能性がある
なお、現在のセンチュリーシリーズにつき、数値は非公開ながらも「一定台数が中国へと出荷されている」という報道も見られ、そして中国の富裕層はEVを「安物」とみなしているとされるため、もしかするとトヨタはそういった中国市場の特性を考慮、あるいは今後どんどん出てくるであろう「中国製の今日高級EV」との競合を考慮して「内燃機関を貫く」こととしたのかもしれません。
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② 搭載が噂される「驚異の高性能ハイブリッド」
センチュリーブランドが内燃機関を採用するとしても、それは(環境規制を考慮すると)「古き良き」ガソリンエンジンではないことが明らかで、トヨタが誇る最新のハイブリッド技術と組み合わされることにより、ロールス・ロイスにも対抗し得る圧倒的なパワーと静粛性が期待されます。
ざっと(現時点で)センチュリーシリーズに搭載がなされるであろうハイブリッドパワーユニットは以下の通りではありますが、「センチュリー」というブランドの重み、そしてわざわざガソリンエンジンを選ぶということを考慮すると、「4気筒」はないのかもしれませんね(もちろん、トヨタも、メルセデスAMG C63の状況を把握しているはずである)。
| 候補エンジン | 構成 | 予想最高出力 | 搭載が予想される他モデル |
| 新型ハイブリッド4気筒 | 2.0Lターボ + バッテリーアシスト | 400馬力(最大600馬力も可能) | 新しい高性能モデル |
| V8ハイブリッド | V型8気筒 + ハイブリッドシステム | 900馬力超 | GR GTスーパーカー、レクサスLFRおよびハイパフォーマンスモデル、大型SUVなど |
参考までに、現行のセンチュリーセダンは、V8 5.0Lエンジンにハイブリッドシステム(THS II)を組み合わせており、センチュリーの「ショーファードリブン」としての要求(静かで滑らかな走行)に最も適した選択と見られているものの、このV8は(もし新しいセンチュリーに搭載されるならば)現在開発中とされる「新世代の」V8へと置き換えられる可能性が大きい、と見られています。
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③ 幻のV12復活の可能性
そして「限りなく可能性が低いながらもゼロではない」選択肢がV12。
1997年から2017年まで販売された2代目センチュリーセダンはV型12気筒エンジンを搭載しており、この伝説的なV12の復活も噂されていますが、現在のところ根拠に乏しい情報であり、現実的な選択肢ではないとも見られています。
しかし、この噂自体がセンチュリーというブランドに求められる「超一流のステータス」を象徴していることもまた事実であり、そしてトヨタがセンチュリーブランドを唯一無二の存在に仕立て上げたいのであれば、V12の搭載はもっともその実現を確実にする一つの方法なのかもしれません。
そして「トヨタがV12エンジンを復活させる」となれば、そのニュースは瞬く間に世界を駆け巡ることとなり、非常に大きな宣伝広告効果も期待できるため、採算度外視にてV12を搭載する可能性も排除できない、と考えられているわけですね(トヨタにはそれだけの財政的余裕があり、それを許容する雰囲気もある)。
さらに内燃機関を「贅沢の象徴」として採用するのであれば、やはり「究極の贅沢」であるV12をおいてほかはないだろう、とも考えられます。
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日本の高級車市場と世界への挑戦
センチュリーブランドの今後の展開
センチュリーブランドの最初のモデルは、今後2年以内に登場が予定されていると言われますが、これがリニューアルされるセダンなのか、あるいは最近発表されたハイライダータイプのセンチュリーなのかはまだ不明。
この新ブランドの設立は、販売台数よりもブランドの象徴性とジャパン・プライドを軸に据え、世界に通用する日本のラグジュアリーを再定義する試みであるとも捉えられており、よってトヨタとしては「あらゆる状況を考慮し、あらゆる技術を駆使し、さらには(販売によってもたらされる)直接の利益のみを考慮せず、トヨタという会社全体に波及効果を及ぼすべく」最高の製品として投入してくる可能性が高く、よって消費者のみならず、自動車業界各方面からも非常に高い注目を集めることとなっています。
結論:ガソリンエンジンは「伝統と品格」を守るための戦略的選択
トヨタがセンチュリーブランドでEV化を避けるのは、内燃機関の性能を重視したというよりも、内燃機関をもって「最高級の静粛性、信頼性、そして揺るぎない伝統」を後席の乗員に提供するための戦略的な選択(あるいは無駄こそが究極の贅沢という思想のあらわれか)。
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そしてロールス・ロイスが内燃機関とEVを並行して展開するように、センチュリーもEV時代の潮流を読みつつ「内燃機関でしか出せない究極の価値」を追求することにより、世界の超高級車市場で独自の地位を確立しようとしているのかもしれません。
つまるところ、センチュリーは「機能・性能」において究極を求めるというよりも、「ラグジュアリー」という感性おける究極を目指したクルマでもあり、そして「日本らしい上質さや購入さ」をこれまでのセンチュリー、そしてレクサスを通じて身につけてきたトヨタの集大成になるであろうことは想像に難くなく、日本の最高峰ブランドが内燃機関の進化を通じ、世界の富裕層に「本物の贅沢」を提示する日を楽しみに待ちたいと思います。
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参照:CarExpert
















