| 実際のところはどうなのかわからないが、安価な製品を提供する企業には常にこの問題がつきまとう |
特に中国のメーカー、サプライヤーにはこの問題がたびたび指摘されている
さて、現在「記録づくし」の成長を遂げ、数年内には自動車業界を支配してしまうんじゃないかという勢いのBYD。
その快進撃のベースにあるのは「価格の安さ」であることは間違いなく、しかし今回あたらしく人権団体が提出したレポートによると「BYDのクルマが安価な理由の裏に、人権侵害が隠されている」。
簡単に言うと「バッテリーを製造する原料の一つであるコバルト採掘のため、児童を強制的に労働させている可能性がある」というもので、中国の自動車メーカー、そしてサプライヤーにおいては過去に何度か指摘されてきた内容と類似したものとなっています。
BYDのバッテリー製造段階では労働者が虐待を受けている可能性も
今回の調査結果を発表したのはアムネスティ・インターナショナル、そしてその題名は「Recharge for Rights」。
ここでは13の自動車メーカーに関する「鉱物供給チェーンにおける人権リスクへの対応方法」について評価しており、BYDはコバルトの出所を開示しなかったことが問題視され、90点中わずか11点で”最低”という評価を受けています。
EVに使用されるバッテリーにはリチウム、ニッケル、コバルトなどの鉱物が大量に必要で、多くの人々がリチウムの採掘による環境破壊については認識していますが、アムネスティ・インターナショナルによれば、コバルト採掘業界では、特にコンゴ民主共和国のような国々で働く子どもたちなどを中心とし、労働者が虐待を受けるリスクが高いとのこと。
上述のとおりBYDは鉱物を供給する精錬所や鉱山の名前を公表しなかったため評価を下げられ、しかしジーリー、ヒョンデ、三菱、GMも同様に透明性に欠けていたと指摘され、それとは対照的に評価が高かったブランドはメルセデス・ベンツ、そしてテスラ(意外とテスラは”ちゃんと”している)。
今年夏にヨーロッパで発効した「企業持続可能性デューデリジェンス指令」によると、EVのクレジット(政府が課す排出規制に関する証明のようなもの)を受け取るためには、各自動車メーカーがバッテリーに使われる鉱物の出所を証明する必要があり、これにより透明性が改善されつつあるそうですが、逆に供給チェーンの福祉に関する規制を無視すると、企業には高額な罰金や市場アクセス制限が課せられることになり、しかしそれでも情報を開示しない企業には何らかの理由があると考えてよく、「開示拒否」に際して評価を下げられるのも無理はないのかもしれません。
アムネスティ・インターナショナルのアニェス・カラマール氏は「電気自動車への移行が加速する中で、競争が激化し、巨額の利益が生まれていますが、アムネスティ・インターナショナルはすべての自動車メーカーに対して、国際的な人権基準に沿った人権デューデリジェンスを強化するよう求めています」と語り、さらに「遅れを取っている企業は、”人権”が単なる耳ざわりな言葉でないことを証明するために、もっと速く、もっと強く努力する必要があります。これからは、電気自動車が人権侵害の遺産を残さないように、業界は公平なエネルギー未来を実現するために前進すべき時です」ともコメント。
こういった問題は以前から多くの自動車メーカー、さらにはSHEINのようなファストファッションブランドにおいても指摘がなされてきましたが、ここ数年の商業界においては「世界規模での価格競争」が巻き起こっており、それに対処すべく各企業とも「なんとか価格を下げようと努力を行う」ものの、一部企業においては”競争に勝ち残るため、不正をはたらく”例が出てくるのかもしれません。
参考までに、今回の調査における順位を記しておくと以下のとおり(数値は100点満点中の評点であり、トップであっても51点となっているので、かなり厳しい評価である。
なお、自動車メーカー自信が「その気がなかった」としても、安価に供給できるサプライヤーを求めたり、既存サプライヤーに値切り交渉を行うと、そのサプライヤーが「(受注獲得のため)強制労働によって」パーツを製造する可能性も考えられ、知らず知らずのうちに人権侵害に加担してしまっている、という現状もありそうですね。
アムネスティによる自動車メーカー別「人権への配慮」ランキング
- メルセデス・ベンツ・・・51
- テスラ・・・49
- ステランティス・・・42
- フォルクスワーゲン・・・41
- BMW・・・41
- フォード・・・41
- GM・・・32
- ルノー・・・27
- 日産・・・22
- ジーリー・・・22
- ヒョンデ・・・21
- 三菱・・・13
- BYD・・・11
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