| キア・スティンガーはデビュー時に相当な話題を呼んだクルマだが |
ヒュンダイ傘下にあるキアが「スティンガー」の2021年フェイスリフト(マイナーチェンジ)モデルを公開。
主な変更はヘッドライトとテールランプ程度となりますが、ヘッドライトだと新形状のLEDデイタイムランニングランプの装備にブラックハウジング、リアだと新しいLEDライトバーが目立つ部分です。
そのほかホイール(18インチと19インチ)デザインも変更され、テールパイプ形状が選べるようになるなど細かい変更が行われており、さらには「ダークパッケージ」なる、エンブレムやホイールなど各部をブラックに変更できるオプションも設定されています。※見たところ、グリルフレームやドアミラーがチタンカラーに変更されている
新型スティンガーのインテリアも小変更
こちらは2021年モデルのスティンガーのインテリア。
10.25インチサイズのインフォテイメントディスプレイが装着され、ダッシュボードやドアインナーパネルなどにコントラストステッチが施される等上質感が高められています。
加えてパネルは「アルミ」「カーボン」から選択でき、64色にカラーを変更できるアンビエントライトも追加に。
ざっと見ただけでも非常に魅力的な内外装を持っているように思えますね。
キア・スティンガーはこんなクルマ
キア・スティンガーは2017年に5月ソウル・モーターショーにて発表された「クーペ風セダン」で、当時はそのデザイン性の高さから大きな話題を呼んだ一台です。
キア(KIA)はそれまで価格の安いコンパクトカーに特化してきたブランドではあるものの、しかしそこから「先」へ進もうと考え、利益を取れるよう「プレミアムカー」として企画されたのが当のスティンガー。
ただ、コンパクトカーメーカーがいきなりプレミアムカーを作っても売れないのは目に見えていて(日本の自動車メーカーも失敗経験がいくつかある)、そこでキアが採用したのが「デザイン重視」戦略。
キアのデザイナー/CEOはアウディに在籍していたペーター・シュライヤー氏で、同氏はアウディTTのデザイナーとしても知られるだけあって、自身が手腕を振るう一方、ジウジアーロにデザインを委託するなど早い段階からデザインに心血を注いできたという経緯も。
参考までに、同氏はほかにもニュービートル、アウディA2を手がけ、コンセプトカーではアウディ・クワトロスパイダーコンセプトをデザインしたことで知られ、2007年にはピニンファリーナ、ジウジアーロに続く3人め(の自動車デザイナーとして)としてロイヤル・カレッジ・オブ・アートから名誉博士号を授与されており、自動車界では「最重要人物」に数えられる一人でもありますね。
キア・スティンガーには255馬力の2リッターターボもしくは365馬力の3.3リッターターボが搭載され、3.3リッターエンジン搭載モデルの0-100キロ加速は5.1秒、最高速度は時速269キロ。
トランスミッションは8AT、駆動輪は後輪が基本でオプションにて4WDを設定しています。
シャシーのチューンは以前にBWM(のM部門)に在籍し、現在はヒュンダイの「N部門」で指揮を執るアルバート・ビアーマンが担当しており、欧州で鍛え上げられた足回りを持つとされ、実際に相当なポテンシャルを持つことも明らかになっています(コーナリング時には”1G”を超える)。
全長は4831ミリ、全幅は1869ミリという「かなり大きな」体躯も迫力十分で、しかし価格は(アメリカだと)エントリーモデルで350万円くらい、上位モデルでも450万円くらいという安価な値付け。
そのほか電子的にハンドリングや足回りを統合制御する「ダイナミック・スタビリティ・ダンピング・コントロール(いわゆるドライブモード)」を備えた最初のキア車であるとしており、エマージェンシーブレーキ、レーンキーピングアシストなど安全性にも配慮されています。
日本でも多くのメディアが絶賛し、並行輸入車が入ってくるのでは、という話すら出てきたのも記憶に新しいところですね(実際に入ってきたかどうかはわからない)。
しかしそれでも売れない「キア・スティンガー」
こうやって見ると「いいところしかない」のがキア・スティンガー。
しかしながらデザインよし、走りよし、価格よしと3拍子揃っているにもかかわらず「売れてない」と報じられ、おそらくは現行モデル限りで消滅するというウワサ。
その理由は定かではありませんが、やはりコンパクトカーメーカーが作った高級車というものが受け入れられず、たとえばいかにコンパクトカー/軽自動車で実績や人気があろうとも、スズキやダイハツの作った「400万円の高級車」を買うかどうか、ということになるのかも(スズキは”キザシ”で失敗したが、それでもここまで高価ではなかった)。
さらにキアは長らく米国で「最低品質」だという評価を受けており(最近は改善した)、これもまた販売に暗い影を落としたのは間違いなさそう。
たしかにデザイン、走り、価格は魅力的ではあるものの、それはライバルを大きく引き離すほどではなく、スティンガーが持っているものはライバルにも備わっていて、逆に「ライバルになくて、スティンガーにしかないもの」が無かったというのも販売が不振に終わった理由なのだろうと考えています。
これまで韓国の自動車メーカーはプレミアムカーセグメントにおいて挑んでは破れていますが、このスティンガーも、いかに2021年モデルでアップデートを施したといえど、強豪ひしめくプレミアムカーセグメントにて存在をアピールするのは難しいのかもしれません。