ぼくのポルシェ981ボクスターですが、納車から1年が過ぎようとしているものの、乗るたびに「なんて素晴らしい車なんだ」と感心せざるを得ません。
ぼくは飽き性ですし、新しいもの好きなので、常に他のものに目を奪われがちなのですが、ボクスターは今でもぼくの心を惹きつけてやまないものがあります。
ボクスター登場以後もミニやBMW i3など魅力的な車が登場していますが、今のところ具体的に買い替えよう、という気は起きないのが現状です。
ぼくは飽き性な反面、気に入ったものは大切に長く使う習慣があり、身の回りには子供の頃から持っているもの、中学生の頃からずっと着ている服、大学生の頃に購入した時計など、かなり「物持ちが良い・製品に愛着を感じる」傾向があることも確かです。
なので車も「長く乗るか、早く売るか」どちらかという感じなのですが、ボクスターはこのままゆくと「長く乗る」可能性もあります。
購入してしばらくしても、そして毎日乗っているのに、ボクスターのように乗るたびに素晴らしさを実感できる車、というのはそう多くありません。
中身は普通でインターフェースだけを新しくした車ではこうはゆかないでしょうし、思ったように走らせることができない車もボクスターと同じように感じることは無いと思います。
ボクスターの素晴らしさはその身軽さ、そしてステアリングの応答性の良さ、足回りのしなやかさ、息の長い加速をもたらすエンジンとトランスミッションにあると思います。
ボクスターよりも加速の良い車はいくらでもありますが(一定速度までだと国産ファミリーカーの方が出足が良かったりする)、それでもボクスターのほうが感覚的に「訴えかける」ものがある、と感じています。
981世代になってからそれは顕著で、それはもはや「官能的」と言えるほどかもしれません。
ポルシェは、そのブランドネームがあまりに大きく、「スポーツ」というイメージが非常に強くなっています。
よって、ポルシェに乗ったことが無いと、ポルシェは非常にナーバスで扱いにくく、乗り心地が悪い車だと考えている人も多くいます。
ですが試乗などで乗ってみるとあまりに「(良い意味で)普通」であり、そこに拍子抜けしてします場合があるのですね。
ポルシェよりも(ちょっと乗った印象での)加速に優れる車もたくさんありますし、ポルシェよりも足回りが硬くクイックに思える車もたくさんあります。
ポルシェよりもエキゾーストノートの大きな車もたくさんありますし、ポルシェよりも内装がスポーティーな車もたくさんあります。
ポルシェはひとつのベンチマークであり、それはボクスターでもカレラでも同じです。
そしてベンチマークであるが故に、それをターゲットとした車もたくさん存在します。
それらはそのメーカー独自の手法でポルシェよりも魅力的な製品を作ろうと努力し、それぞれの方向性をアピールします。
そういった部分は「わかりやすく」、試乗などちょっとした部分でもそれがわかるようになっている場合がほとんどです(それが目的なので)。
しかしポルシェの場合、今更何かを強調する必要性も無く、試乗等の短時間の運転では、ポルシェらしさがわかならい場合がほとんどです。
ポルシェいわく、「スポーツカーとは日常性を備えていなくてはならない」とのことで、”普通さ”こそがポルシェのひとつの特徴でもあるのですね。
よってポルシェの良さというのはすぐにはわからないもので、自分のお金で買ってみて、自分のものとして走らせてみて、所有期間が長くなればなるほど「体感できる」ものなんだなあ、と改めて思います。
同じような類いの車としては、やはりぼくにとって所有期間が長い部類の「ミニクーパーS」「ランボルギーニ・ガヤルド」があります。
なお、車づくりにおいて「乗り味」をコントロールすることは非常に難しいものです。
国産メーカーだと、そのメーカーのどの車に乗っても乗り味が同じ、人がたくさん乗っていても、ガソリンが満タンでも空に近くても乗り味や挙動が同じ、というパターンが多いのですが(それはある意味凄いことだと思う)、ポルシェの場合は、エンジン以外はほとんど同じ部品を使っているはずのボクスターとボクスターS、またカレラとカレラSでも「全く違う」ほどのキャラクターを感じ取ることができます(スタンダードのパワーアップ版が”S”というわけではない)。
国産の場合はそれだけブッシュやその他の部品がその車「本来の」姿を隠してしまっているとも言えますが、その分乗り心地が良かったり、壊れにくかったり(安全マージンが大きい)という利点があり、そこは車作りの姿勢と、そのメーカーのターゲットによって異なるもので、善し悪しで判断できるものではない、と考えています。