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ポルシェは50年も前にミドシップスポーツ「914」を発売している。当時「最強のミドシップ」と言われた914、そして現代の718までの流れを見てみよう

2019/07/07

| 914のデザインがもうちょっとイケてたら、その後の流れも変わったかも |

ポルシェのミッドシップカーといえば「ボクスター」と「ケイマン」ですが、実は50年も前にポルシェは「ミッドシップ」を市販しています。

そのミッドシップカーとは「914」。
1969年、つまりちょうど50年前に発売されたということで、ポルシェがこの914に焦点を当てたコンテンツを公開しており、ここで914そして現代の「ボクスター」「ケイマン」に至るまでの流れについても触れてみたいと思います。

914は「ワーゲンポルシェ」と呼ばれたことも

ポルシェ914は「フォルクスワーゲンとポルシェ」とで共同開発がなされたスポーツカー。
フォルクスワーゲンはビートルの販売低迷に悩み、ポルシェは低価格モデルを投入することで販売を拡大したいという「利害」が一致し、販売面においてもポルシェ、VWが「共同」で行うという異例のクルマです。

欧米ではエンブレムが「VW-PORSCHE」となっており、そのため「ワーゲンポルシェ」と呼ばれることもありますね。※ポルシェ自身はこれについて触れたがらない。黒歴史のようだ

エンジンはVW製の4気筒/80馬力、そしてポルシェ製の6気筒/110馬力が用意され、前者は914/4(カルマンにて製造)、後者は914/6(ポルシェにて製造)として販売されています。

ポルシェによると、914は「当時、世界最強のミドシップ・スポーツカーと呼ばれた」とのことで、GT部門を統括するアンドレアス・プロイニンガー氏によると「ドライバー至近の低い位置にマウントされた水平対向エンジンが奏でるビート」がミドシップ・ポルシェのキーファクターであるとし、同時に最大のセールスポイントである、とのこと。

914は非常にコンパクトなクルマで、911より全長が18cm短く、前高は9センチ低く設定され、しかし全幅は4センチ広く、ホイールベースは24センチもロング。
つまり低い重心を持ち、ワイドなトラックにて高い旋回性能を誇り、長いホイールベースを持つために安定性が高い、ということを意味します。

実際に914は非常に大きな成功を収め、914/4は7年で115,631台が販売され、914/6は3,338台が販売(この数字の乖離を見るに、やはり安価な4気筒モデルがよく売れ、6気筒モデルを買うなら911を選ぶ、といった傾向が見られる)

なお、ポルシェによる「ミドシップとリアエンジン」に関する逸話も下記のように紹介されています。

そもそもミドシップ・コンセプト自体は 1930 年代にはすでに存在しており、1934年にフェルディナント・ポルシェがアウトウニオン・レーシングカーのタイプ 22 でそれを実現すると、ポルシェでも 1948 年に 356 “ナンバー 1” にミドシップ・コンセプトを採用。しかし、4 気筒エンジンがリア・アクスル手前、そしてトランスミッションが後方に配置された元祖ミドシップ・モデルの 2 シーター・カブリオレボディでは収納スペースが十分に確保できなかったため、フェリー・ポルシェはクーペ・ボディとすることを決断。その開発過程においてリア・エンジン・レイアウトが採用されることとなり、果たして 2+2 のシート・レイアウトと広いラゲッジ・コンパートメントが実現し、初代ポルシェが誕生したのであった。

ポルシェ914にはこういったバリエーションもあった

そして914にはいくつかのバリエーションが存在し、210馬力にパワーアップされたクローズドボディの「916」が11台、レース仕様の914/6GTが12台生産されることに。

916は見ての通りマッスルなワイドボディを持ち、なかなかに魅力的ではありますが、あまりに生産コストがかかることから市販化は実現せず。

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こちらは914/6GT。
1970年のマラソン・デ・ラ・ルートに参戦して3位に入賞という経歴を誇ります。

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そしてわずか2台だけ製造されたのが「8気筒エンジン搭載の」914S。
これはポルシェ906から移植したエンジンを搭載し、260-300馬力を発生した、と言われます。
なお、外観は通常の914とほぼ同じであり、文字どおりの「羊の皮を被った狼」。

一台はプロトタイプで、もう一台はフェリー・ポルシェの60歳の誕生日に贈られた、という記録が残っています。

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ポルシェの「ミドシップ」の歴史は20年間空白だった

なお、ミドシップポルシェで忘れてはならないのが「550スパイダー」そして904。

550スパイダーはジェームズ・ディーンが事故死したクルマとしてあまりに有名ですね。
そして904(カレラGTS)は数々のモータースポーツで活躍し、917と並んで称されるレーシングカーですが、ホモロゲーション取得のために116台が市販されています。

914の生産は1976年に終了することになりますが、その後なんと20年間(1996年にボクスターが登場するまで)ポルシェはミドシップスポーツカーの生産から遠ざかることに。

その間ポルシェは924(これもフォルクスワーゲンと多くのパーツを共有)、928、944、964といったFR(トランスアクスルレイアウト採用)を生産することになるわけですね。

そして1996年にボクスターが登場し、その後登場した「第二の」ミドシップカーが「ケイマン(2005)」。

ケイマン発売の理由について、ポルシェはこのように述べています。

1990 年代のスポーツカー・マーケットでミドシップ・モデルに対するニーズが高まっていたことや、ボクスターが 911 との差別化に成功したことがケイマンの開発を後押しました。最適な重量配分と低い重心位置により、比類なき走行ダイナミクスを体験することができます。

ボクスターは「真のポルシェ」として認知されない期間も

こういった「914/4」の経緯があってか、1996年にボクスターが発売された際にも、一部の人はボクスターを「(914/4同様に)フォルクスワーゲンとの共同開発」だと思い込んだり(よってボクスターは本物のポルシェではないと認識)、「プアマンズポルシェ」というありがたくない呼び方をしたことも。※当時ぼくは986ボクスターSに乗っていたが、911オーナーからの風当たりは強かった

実際にポルシェオーナーの間でも「911とボクスターとの間には明確な溝」があり、両者が交わることはなかったという状況でしたが、その後ボクスターも代を重ね、ケイマンも登場し、カイエンやマカンといったラインナップが増えるにつけ、徐々にその評価も上がり、今やボクスター/ケイマンも「ポルシェファミリーの一員」として認知されることに。

なお、ボクスター/ケイマンは高いポテンシャルを持ちながらも、ブランド内ヒエラルキーの関係で、たとえハードコアモデルであっても「911のパフォーマンスを超えることが許されない」という状況が987世代まで続いています。

しかし981世代でようやく「ケイマンS」が「911カレラ(ベースグレード)」のラップタイムを超えるとポルシェが公式に認め、ケイマン/ボクスターの地位が向上したというのが今に至るまでの流れです。

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VIA:PORSCHE

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