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| もう「充電の手間」に集中力を奪われない |
このシステムが普及すればまさに「充電の手間いらず」
スマートフォンがそうであったように、ぼくらの生活から「ケーブル」が消えることは日々の小さなストレスや手間の削減に繋がります。
これは、限りある集中力やエネルギーを本当に重要なタスクに注ぐ上で非常に重要なポイントで、そして今、その「ワイヤレス化」がついにEVにもやってくることとなり、ポルシェはまもなく内燃機関車やハイブリッド車と並行して提供される新型SUV「カイエン・エレクトリック」へと(オプションとして)画期的なワイヤレス充電(非接触充電)を導入することに。
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ポルシェ、新型カイエンEVに「ワイヤレス充電システム」を搭載。2026年より欧州で導入開始、まさにクルマを「置くだけで充電」
Image:Porsche | ポルシェ初の量産ワイヤレス充電、利便性を大幅に向上 | 文字通りの「置くだけ」充電が可能に ポルシェが次世代EVへの大きな一歩として、11kWワイヤレス充電システム「P ...
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意外とEVの充電は「気を使う」
なお、4年間EVに乗っていたぼくとしては、EVの充電について「ガソリンスタンドに行かなくても良い」という利便性を感じる一方、充電を計画的に行わなければ「電欠になる」ということを身を以て経験しており、EVオーナーにとって「EVの充電」とは、「ソケットを車両に挿す」以上のものであることを理解しているわけですね(走行するであろう距離から必要なバッテリー残量を計算し、いつ充電するかを考えねばならない)。
よって、今回ポルシェが提唱する「ガレージにクルマを停めるだけで自動的に充電が始まる未来」は画期的な”革命”だとも考えています。
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1.ポルシェ独自の「11kWワンボックスシステム」の構成
ポルシェが導入するワイヤレスチャージングシステムにつき、充電ケーブルやウォールボックスを操作する手間はもう必要なく、今回ポルシェが公式コンテンツとして「この技術は一体どのように機能するのか」という技術的な解説を公開しており、ここでその内容を見てみましょう。
参考までに、ポルシェは現在、この革新的な11kWワンボックスシステムによる非接触充電を提供する唯一の自動車メーカーで、システムは非常にシンプルに、たった2つのコンポーネントで構成されています。
1-1. 2つの主要コンポーネント
| コンポーネント | 設置場所 | 機能 |
| フロアプレート(送信機) | ガレージまたは駐車スペースの床 | 電力供給源。ACをDCへ変換し、85kHzのAC電力に変換する。 |
| レシーバーユニット(受信機) | カイエンの前輪車軸後方の車体下部 | フロアプレートからの磁場を受信し、充電電力に変換する。 |
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ポルシェの製品マネージャー、サイモン・シュルツェ氏は、「従来のソリューションはウォールボックスのような追加コンポーネントが必要だったが、新しいフロアプレートは電源に接続するだけで準備完了だ」と説明します。
これにより、設置も運用も極めて直感的かつ簡便になったというわけですね。
1-2. 最初のペアリングとセキュリティ
初めてエネルギー(電力)を転送する前には、車両とフロアプレート間で初期化(ペアリング)が必要です。
これは、スマートフォンの認証と似ており、パスワードなどのデータを交換しますが、この作業は一度きりで、主に電気の盗難などの不正利用から顧客を保護するためのもの(でないと誰にでも利用できてしまう)。
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2.誘導原理(インダクティブ・カップリング)とポルシェの技術的挑戦
ワイヤレス充電の基本原理は100年以上前から確立されているシンプルなもので、「インダクティブ・カップリング(誘導結合)」と呼ばれる技術をベースとしており、電流が流れる銅線コイル(送信側)の反対側に、もう一つのコイル(受信側)を配置することで磁場が発生し、それが受信側コイルに電圧を発生させる、というロジックを持っています。
2-1. EV向けの高効率化への挑戦
スマートフォンなどの低電力システムではこの原理の単純なスケールアップで済みますが、電気自動車に必要な高電力を安全かつ効率的、経済的に供給するには工夫が必要で、ポルシェのエンジニアが選んだのは「電力の流れを最短ステップに抑えるアプローチ」。
- 電力網からのAC電圧をフロアプレート内でDC電圧に変換。
- このDC電圧を、標準周波数(50/60Hz)ではなく、85kHz(85,000 Hz)という高周波数のAC電圧に再変換。
開発エンジニアのドミニク・シェラー氏によると、このアプローチにより、送電側と受電側のコイルが完全に一直線でなくても、十分なエネルギーを伝送できることが保証され、最大10センチメートル程度のズレであれば問題なく許容される、とのこと。
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「ケーブルを挿す」方式の充電であれば、ついつい面倒になって「短時間の駐車」だと充電を行わないケースもでてくるかもしれませんが、今回ポルシェが提供する「駐車するだけ」充電の場合、文字通り「そこに駐車すれば」充電が開始されるため、「いったん自宅に戻ってきた」際などでも効率的な充電が可能となってきます。
2-2. 驚異の充電効率と安全性
- 効率: フロアプレートとレシーバーユニットの間隔が12~18センチメートルあるにもかかわらず、充電効率は90パーセント以上を達成。これは、ケーブル接続されたウォールボックス使用時と同等のパフォーマンスです。
- 安全性: 高電流による損傷を防ぐため、フロアプレートには異物検出システムが、レシーバープレートには磁場を上部に拡散させないシールドプレートが組み込まれ、キーなどの金属や、近づいてきたペットや人などの「生物」を検知し、充電を直ちに停止させる高度な安全対策が施されています。
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3.:日々の生活における集中力を維持する「駐車ガイド」と「未来の自動化」
ワイヤレス充電は、充電時の手間の削減だけでなく駐車時の心理的負荷も軽減し、この技術によって充電という日常的なタスクからEVオーナーが解放され、結果として時間を節約しエネルギーを重要な活動に集中させることが可能となる「未来の利便性」そのもの。
さらには駐車と同時に自動的に充電が開始されるため、「ケーブルの挿し忘れ」による「充電できておらずクルマを出せない」といった事例もなくなりそうですね。
- 直感的な駐車ガイド: ドライバーが車両をフロアプレートに近づけるとサラウンドビュー駐車機能のPCMディスプレイにガイダンスが表示され、緑色の点(受信機の位置)が緑色の円(充電システムのコイル)の中に入れば、正確な位置に停車完了。これによって「ズレ」を防ぐことが可能に。
- 未来のビジョン: ポルシェは、この非接触充電と自動駐車を組み合わせることに取り組んでいるといい、将来、ドライバーはガレージ前に車両を停めてボタンを押すだけでクルマが自ら駐車し、充電を開始し、次の出動に備えて満充電で待機するという究極の自動化が実現する可能性も示されています(そうなると非常に便利)。
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