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これはポルシェも予想できなかっただろう・・・。あの911 GT1 Evoがランザンテによって洗練された「現代的なロードカー」として生まれ変わる

これはポルシェも予想できなかっただろう・・・。あの911 GT1 Evoがランザンテによって洗練された「現代的なクルマ」として生まれ変わる

| 公道を走るレーシングカー、「911 GT1 Evo」が再び蘇る |

さすがはレーシングカービルダーの「ランザンテ」

1990年代から2000年代初頭にかけ、GT1カテゴリーのレースに参戦するためには「ホモロゲーション(型式認定)」取得を目的として公道仕様モデルを少量生産する必要がありましたが、この規則によって「ル・マンを走るマシンとほぼ同等のクルマ」がわずか数人の幸運な顧客の手に渡るという出来事も生じています。

今回紹介する1997年型ポルシェ911 GT1 Evo(シャシー#117)もそれらのクルマのうちのひとつであり、しかしこの個体はただガレージに眠るだけのコレクターズアイテムではなく、「再び手が加えられ、より洗練されたストリート仕様」として生まれ変わった特別な存在です。

「第1章」:レースカーを公道仕様にした最初の変身

この作業を手がけたのは、マクラーレンF1 GTRのロードコンバージョンで知られる英国のランザンテ(Lanzante Limited)。

レースと公道の境界を”撤廃する”存在として、彼らの名前はモータースポーツ史に深く刻まれており、これまでにもマクラーレンF1のほか、アストンマーティン・ヴァルカン、マクラーレン・セナGTR、ランボルギーニ・セストエレメントなどのロードコンバージョンを手掛けたほか、マクラーレンP1「スパイダー」を製作したことも。

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このポルシェ911 GT1 Evoがランザンテのガレージに初めて入庫したのは2014年のことで、目的は「合法的に公道を走れるレーシングカー」をつくることであったといいます。

初回のコンバージョンでは、レース仕様そのままの構成を維持しながらもナンバー取得を実現し、シルバーの塗装にカーボンパーツがむき出しの姿は、まさに“レーシングカーのままの公道車”。

しかし、その後オーナーは「もう少し快適に乗れる仕様」を望み、再びランザンテへと戻されることになります(よほど乗り心地がハードであったのだろうと推測)。

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「第2章」:ヨッティングブルーに包まれた“成熟のGT1”

2度目のリファインで、GT1 Evoはポルシェ純正の「ヨッティングブルー」へと再塗装され、ホイールはシルバー仕上げとなったほか、露出していたカーボンファイバーも控えめにトリミングされ、より上品な印象へと変化しています。

さらには内装も大幅な変更を受け、レーシングシートの代わりにグレーレザーと千鳥格子(ハウンドトゥース / ペピータ)柄の快適なバケットシートが装着されたうえ、ロールケージにもレザー製パッドが追加され、ハーネスは以前のブルーから内装カラーにマッチしたブラックへ。

ドアハンドルやシフトノブにもロードカー仕様の部品が採用され、「レーサー」から「ジェントルマン・ドライバー」へと進化を遂げています。

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「GT1シャシー#117」の戦績と栄光

このGT1は、かつてカナダのBytzek Motorsportsによってレース活動を行っていた個体だそうで、全31戦中13勝を挙げ、1999〜2001年のカナディアンGTチャンピオンシップを3連覇するなど輝かしい戦績を誇る1台。

また、デイトナ24時間にも出場経験があり、まさに戦歴ある“本物のGT1”ということになりますが、レストア&公道仕様コンバージョン完了後、2015年にRMサザビーズのオークションに出品され、当時の落札額はなんと300万ドル超。

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ちなみにですが、(もともと公道走行が可能な、別の個体である)「911 GT1シュトラッセンバージョン」は2021年に1200万ドル超で取引されているため、この#117の価値も現在ではさらに高騰していると見られ、そういったクルマを「カスタムしてしまう」オーナーの心意気には脱帽です。


「GT1文化」の象徴としての存在

ポルシェ911 GT1は、フェラーリF40 LMやメルセデスCLK GTRと並び、90年代GTレース黄金期を象徴する存在。

その一方、このGT1 Evoのように「サーキットから公道へ」という逆転のアプローチを取った例は極めて珍しく、そしてランザンテがこのマシンに手を加えたことで、GT1の持つ“純粋なレーススピリット”を現代の道路で体験できる唯一無二の存在が誕生したということになりますが、同時にその価値が「計り知れない」存在へと昇華したのだとも考えられます。

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参照:lanzantelimited(Instagram)

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