| ただし見た目がアレだった |
ヤマハが1991年に製作したスーパーカー、OX99-11 V12が中古市場に。
正直、このクルマについては「そういえばこんなのもあったな」くらいの印象しかないのですが、これは1989年から8年間、116戦においてF1にエンジンサプライヤーとして参戦(ブラバム、ジョーダン、アロウズへと供給)していたヤマハが企画した「幻のクルマ」。
ヤマハ自身は「ロードゴーイングF1」としてこのクルマを市販しようと考え、まずはドイツの会社(どの会社なのかはわからない)にアプローチしています。
ヤマハといえどもクルマを作るのにかなり苦労をしたようだ
しかしその会社はこのOX99-11 V12に興味を示さず、そのため今度はイギリスのIADへと話を持ち込みます。
ここでようやく実現の可能性が見えてきたものの、計画を進行させる段階でヤマハとIADとの間に見解の相違が生じ、その後ヤマハは自社の「イプシロン・テクノロジー」部門にてこれを開発することに決定。
しかしその後バブル崩壊のあおりを受けて受注を獲得できず、1993年に計画は終焉を迎えることに。
なお、市販されたのは「ゼロ」、製作されたのはわずか3台のプロトタイプのみ。※1台はヤマハが所有しているっぽい
車体はカーボンモノコック、エンジンは3.5リッターV12(60バルブ!)で450馬力、レイアウトはミドシップ、サスペンションはインボード式。
つまりはF1と同じような構造を持ち、それに「ガワ」を被せただけという、まさに「公道を走るF1」。
OX99-11 V12のボディサイズは全長4400ミリ、全幅2000ミリ、全高1220ミリ、車体重量はわずか1150キロ(850キロという記載も見られるが、それは信じがたい)というスペックを持っています。
そしてデザインは”違いの分かる男”、レーシングカーデザイナーの由良拓也氏。
なおトランスミッションは6速マニュアルですが、エンジンの許容回転数はなんと10,000回転だったので、相当に運転が難しいクルマであることは想像に難くありません。
ちなみに車名の「OX99」というのはエンジン名をそのまま転用したもの。
ヤマハにおけるF1エンジンは「OX88」、そしてこの「OX99」とがあるようですね(ヤマハによる記載はこちら)
シートレイアウトは「バイクメーカーのヤマハらしく」前後に並ぶというタンデム配置で(しかし後ろは相当に狭い)、そのために全面投影面積は最小化、そして重心もセンターに集約できることに。
なお、この「センターシート」は後のマクラーレンF1にも採用されますが、そちらは後部座席がドライバーズシート左右にある「3座」です。
興味深いことに、ヤマハは後にマクラーレンF1の設計者であるゴードン・マレー氏と共同にて「スポーツライド・コンセプト」を発表。※このほかにも「シティカー」にてタッグを組んでいる
「センターシート」という関連性から推測するに、当時よりヤマハとゴードン・マレーとがなんらかの関係があった(アイデアを共有した)ようにも思われ、しかし事実は不明。
ただし現在でも両者につながりがある、というのはひとつの事実でもありますね。
なお、「このOX99-11 V12が売れなかった」理由としてはバブル崩壊が主な理由として挙げられていますが、ぼくとしては「ヤマハエンジンが勝てなかった(4ポイント獲得したのみ。F1史上”ワースト10エンジン”にも選ばれている」こと、「なんといってもOX99-11 V12のデザインがイケてないこと」が理由だろう、と考えています。
なお、「デザイン」については、その後のスポーツライド・コンセプト、CROSSHUBについても同様に「イケてない」と認識していて、なぜヤマハの4輪車デザインは(バイクはあんなに格好いいのに)イマイチなんだろうな、と思ったり。
ちなみにOX99-11 V12は当初「1億円」での販売が計画されていたといいますが、売れなかったことが幸いしてか希少価値が高く、今回の中古価格は1億3000万円ほど、と伝えられています(すでに販売ページが無くなってる)。